先行き不安の自己実現

Market Flash
先行き不安の自己実現
2016年4月1日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~新規失業保険申請件数:労働市場は堅調~
・新規失業保険申請件数は27.6万件と前週から1.1万件増加したものの、4週移動平均は26.3万件と景気後退
後の最低値付近に位置しており、労働市場における量的改善の堅調な回復を裏付けている。
・3月ユーロ圏消費者物価指数は前年比▲0.1%と2ヶ月連続で前年比マイナスを記録。食料・アルコール・
タバコ(+0.6%→+0.7%)の上昇幅が拡大した一方、エネルギー物価(▲8.1%→▲8.7%)の下落幅が
拡大。他方、コア物価は+1.0%と2月から0.2%上昇加速。サービス物価(+0.9%→+1.3%)がコア財
(0.7%→+0.5%)の減速を補ってなお余りある加速を示した。なお、例年この時期はイースター休暇に
絡んだカレンダー要因が統計を撹乱する傾向がある。3月データは一部そうしたノイズが混入している可
能性が指摘できるため、基調判断には4月データの入手を待つ必要がある。
新規失業保険申請件数
(千件)
(前年比、%)
4
ユーロ圏CPI
400
3
370
2
340
コア
1
310
0
280
250
12
13
14
15
総合
-1
16
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
14
15
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反落。前日までの株価上昇に対する反動が意識されるなか、ISM、雇用統計を控えて利
益確定売り優勢。欧州株も同様に利益確定売りが優勢となった。WTI原油は38.34㌦(+0.02㌦)で引け。
29日のイエレン議長のハト派発言を受けたドル安が支えになっている。
・前日のG10 通貨はNOK、DKKが強く反対にCAD、AUDが弱かった。JPYとEURは共に方向感に欠く展開となり、
USDの強さもまちまち。USD/JPYは112半ばで一進一退、EUR/USDは一時1.14を付けた後に反落。
・前日の米10年金利は1.769%(▲5.4bp)で引け。当初は前日比横ばい圏で推移していたが、原油と株価が
上げ幅を失うと金利低下に転じた。他方、欧州債は小動き。ドイツ10年金利が0.153%(▲0.3bp)で引け
たほか、イタリア(1.221%、+0.7bp)、スペイン(1.437%、+0.9bp)、ポルトガル(2.943%、+
0.3bp)が小幅に金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは僅かにワイドニング。
【国内株式市場・経済指標・注目点】
・日本株は日銀短観の結果を嫌気して急落。中国PMIの改善が下支えとなるも買戻しの動きは鈍い。
・日銀短観(3月調査)によると大企業製造業の業況判断DIは+6と市場予想(+8)を下回った。前回
12月調査から6ptの悪化で、2013年6月調査以来の低水準。内需・外需共に精彩を欠くところに円高の逆
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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風が吹いたことで企業の収益環境が悪化したとみられる。先行き判断DIは+3とマイナス圏さえ視野に
入る水準に落ち込んだ。円高・株安が企業マインド悪化に繋がったとみられるほか、原油安による製造コ
スト削減も限界的効果が逓減しており、マインド改善につながりにくい。短観発表後の日本株下落が象徴
するように金融市場の不安が自己実現するリスクが高まっており、こうした傾向が続くようだと先行き判
断DIのマイナス圏突入が濃厚となる。日銀短観はその知名度の高さゆえ、一般事業会社の注目度も高い。
そのため、DIが悪化するとそのこと自体が景気の下押し材料となる。
・なお、今回の短観では金融機関の業況悪化が目を引いた。業況判断DIは+12と前回調査から13pt悪化し
て、先行き判断DIも+10と下を向いた。マイナス金利導入による運用難が影響した可能性が濃厚。一方、
企業金融に目を向けると、貸出態度判断DIは+23(全規模・全産業)と前回調査から2pt改善、借入金
利水準判断DIも▲26(全規模・全産業、マイナス幅が大きいほど低金利で調達可能)と前回調査の▲7
から大きく低下しており、マイナス金利のプラスの側面が一部にみられている。
大企業製造業 業況判断DI
40
大企業・全産業先行き判断DI・TOPIX
50
(%)
TOPIX(右)
100
30
40
20
30
60
10
20
40
0
10
20
-10
0
0
-20
-10
-30
-20
-40
-30
-60
-50
-40
-80
-60
-50
-100
05 05 06 06 07 07 08 08 09 09 10 10 11 11 12 12 13 13 14 14 15 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 直近分は先行き
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
-0.030
1.769
1.415
0.153
0.486
1.221
1.437
(円)
16800
16700
16600
16500
16400
16300
前日比
-338.52
-31.57
-81.10
-28.27
-59.36
112.25
1.1378
(㌦)
17800
-0.32
-0.00
%
%
%
%
%
%
%
38.34 ㌦
1234.20 ㌦
-0.001
-0.054
-0.019
-0.003
0.001
0.007
0.009
-20
業況判断DI
-40
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 TOPIX:前々年比
<主要株価指数>
終値
16420.15
17,685.09
9,965.51
6,174.90
4,385.06
80
%
%
%
%
%
%
%
日経平均株価 10:37 現在
NYダウ平均株価
17700
17600
113.0
USD/JPY
112.5
0.02 ㌦
7.30 ㌦
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
112.0
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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