Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
貸出態度が緩み 資金繰りも楽になる
マイナス金利深掘りの可能性やや高まる
2016年10月3日(月)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・8月米名目個人消費支出は前月比±0.0%と、上方修正された7月(+0.3%→+0.4%)から横ばいに留ま
り、市場予想(+0.1%)を下回った。食料・エネルギーが横ばいとなるなか、耐久財が▲1.3%と大幅に
減少し、その他項目の伸びを帳消しに。実質ベースでは▲0.1%と7ヶ月ぶりに減少したが、それでも3ヶ
月前比年率では+3.8%と堅調に伸びており、2Qと概ね同等のモメンタムを維持している。他方、名目個
人所得は+0.2%と順調に拡大。前年比では賃金が4%程度の伸びで安定する下、全体の伸びが3%強に保
たれている。
・9月ミシガン大学消費者信頼感指数は91.2と、速報値及び8月実績から2.4pt上方修正された。8月との比
較では現況(107.0→104.2)が高水準から軟化した一方、より重要な期待(78.7→82.7)が2ヶ月連続で
改善して直近12ヶ月の平均である81.1を上回った。
(前年比、%)
10
名目個人消費・所得
120
8
所得
6
現況
110
4
100
2
90
0
80
消費
-2
総合
70
-4
期待
60
-6
50
-8
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
ミシガン大学消費者信頼感指数
13
14
15
10
11
12
13
(備考Thomson Reutersにより作成
16
14
15
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反発。ドイツ大手銀行に課せられる制裁金が減額されるとの報道を手掛かりに同社株が反
発すると相場全体に買い安心感が広がった。欧州株はまちまちも独DAXは1%強のラリー。WTI原油は
48.24㌦(+0.41㌦)で引け。
・前日のG10 通貨はリスク選好に傾斜するなかCHF、JPYが弱く、反対にNOK、NZD、AUDが強かった。USD/JPY
は101半ばに水準を切り上げ、9月21日の総括検証後の上限付近へ戻した。
・前日の米10年金利は1.594%(+3.5bp)で引け。株高で逃避需要が後退したほか、PCEデフレータが前年比
+1.7%へと伸びを高めたことからFEDの追加利上げが意識され金利上昇。実際、市場が織り込む年内利上
げ確立は52.7%から59.3%に上昇した。欧州債市場(10年)はまちまち。ドイツ(▲0.119%、▲0.2bp)、
イタリア(1.188%、▲2.3bp)、スペイン(0.880%、▲3.7bp)が金利低下となった一方、ポルトガル
(3.330%、+2.2bp)は金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は米株高に追随して高寄り後、もみ合い(10:30)。日銀短観にサプライズ感はなく、相場全体に
与える影響は小さかった。
<短観#貸出態度#金融機関収益#マイナス金利>
・日銀短観(9月調査)によると業況判断DIは大企業製造業の「最近」が+6(6月調査+6)、「先行
き」が+6、大企業非製造業の「最近」が+18(6月調査+19)、「先行き」が+16となった。他方、中
堅企業、中小企業の業況判断DIは「最近」が製造業、非製造業において6月調査対比で改善。その結果、
全規模全産業では「最近」が+5と6月調査対比で1pt改善した。USD/JPYの下落傾向に歯止めがかかり製
造業の業況悪化が一服する下、非製造業が高水準を維持し、全規模全産業のDIは13四半期連続のプラス
を記録。因みにこれは1990年代前半以降で最長である。
・物価の基調を把握するために日銀が重視する需給ギャップ関連項目は、雇用人員判断、生産・営業用設備
判断がともに需給ギャップ縮小を示唆する方向に動き、デフレ脱却の確度を高めた。雇用人員判断DIは
あらゆる産業・規模で不足感が強まり、最近の求人関連指標と同様に空前の人手不足感を浮き彫りにした。
生産・営業用設備判断も大半の産業・規模で不足感(過剰感解消)が強まり、全規模全産業DIは再び0
へと低下。設備投資計画を見る限り、企業は大規模新規投資に消極的である反面、維持・更新、省力化投
資には比較的前向きと判断され、緩慢ながらも着実な設備投資増加が見込まれる。
20
日銀短観 雇用・設備DI
業況判断DI(全規模全産業)
30
設備判断DI
20
10
10
0
過剰
0
-10
-10
-20
-20
雇用判断DI
-30
-30
-40
-40
-50
-50
不足
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 全規模全産業 直近分は先行き
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 直近分は先行き
・マイナス金利深掘りの有無を予想する上で重要な企業金融の項目は小幅ながら改善。金融機関の貸出態度
判断が+25と6月調査対比で2pt改善したほか、資金繰り判断も+15と6月調査対比で1pt改善。借入金
利水準判断は▲20と6月調査対比で借入コスト増を示す方向に動いたが、それでも異例の低水準にある
(何れも全規模全産業)。日銀はマイナス金利深掘りが金融機関の収益圧迫を通じて貸出態度の厳格化に
繋がることを懸念していたが、目下のところそうした懸念が現実のものになっている証左は得られていな
い。寧ろ今回の結果はマイナス金利の効果を正当化したい日銀にとって朗報だろう。筆者はマイナス金利
深掘りシナリオに懐疑的だが、企業金融関連のデータが資金需要者に支援的な方向に推移すれば、マイナ
ス金利深掘りの可能性が高まることは否定しない。12月調査の日銀短観も然り、資金繰り・貸出態度関連
のデータに注意を払う必要があろう。
日銀短観
企業金融関連
50
40
30
貸出態度
20
10
資金繰り
0
-10
-20
-30
借入金利水準
-40
90
95
00
05
10
15
(備考)Thomson Reutersにより作成
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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