Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
強い雇用・強い設備投資が自然
2015年4月17日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~米指標:まちまち~
・3月住宅着工件数は前月比+2.0%、92.6万件と市場予想(+15.9%、104.0万件)を下回った。主力の戸
建て(+4.4%)が反発した反面、集合住宅(▲2.5%)が2ヶ月連続減少。前月分は僅かに上方修正され
たものの、2ヶ月連続で100万件の大台を下回っており、3ヶ月平均は明確に下方屈折している。ただし、
許可件数との乖離拡大は悪天候の影響が残存した可能性を示唆しており、着工件数は弱さが誇張されてい
る可能性がある。実際2014年1-3月期にも同様の現象が発生した経緯を踏まえると、基調判別は翌月のデ
ータを待つ必要があろう。同時に発表された許可件数は▲5.7%、106.7万件と4ヶ月ぶりに減少したが、
こちらは均してみれば増加基調にあり、NAHB住宅市場指数の改善とも整合的だ。
・新規失業保険申請件数は29.2万件と前週から1.3万件増加したものの、引き続き30万件割れを維持。4週移
動平均は28.3万件と前週から横ばいに留まり15年ぶり低水準に位置している。イースター休暇に絡んだ季
節調整の難しさにより統計が歪められている可能性があるとはいえ、目下のレベルは雇用統計NFPの25
万人増に相当する強さだ。労働市場に対する楽観的な見方を維持すべきだろう。
・4月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は+7.5と前月(+6.0)から改善、市場予想(+5.0)を上回っ
た。ISM換算でも51.2と前月(48.4)から改善。内訳は出荷(▲7.8→▲1.8)、雇用(+3.5→+11.5)
が改善した一方、新規受注(+3.9→+0.7)が低水準から鈍化。出荷遅延(▲13.4→+0.5)は解消し、在
庫(▲2.3→+1.5)は積み上げられた。その他では週平均労働時間(▲11.4→+3.4)の上昇が一見すると
ポジティブだが、NY連銀調査のそれとは真逆の動きで判断が難しい。全体としてみればメッセージ性に
乏しく解釈に窮する結果だ。なお、フィリー連銀指数とNY連銀指数をISM換算した上で合成した指数
は51.5と前月から1.5pt改善。ISM指数の6ヶ月ぶり改善を示唆している点は素直にポジティブだ。
(千件)
1100
1000
住宅着工(許可)件数
60
許可
55
900
ISM指数vs連銀指数
ISM指数
50
800
45
着工
700
40
600
35
500
08
09
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均
フィリー・NY平均
14
07
08
09
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
15
13
14
15
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は横ばい。米企業決算は予想対比好調も欧州株安が重石になった。DAXは2%近く下落。
・前日のG10通貨はUSDが全面安。USDは3日連続で最弱。USD/JPYは119を割れ、EUR/USDは1.08を回復。その
他では豪雇用統計を受けたAUD(+1.6%)の強さが目立った。
・米10年金利は+0.4bpの1.892%。米指標とFED高官の発言を受けて上下したものの、一日を通してみれ
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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ば横ばい。他方、欧州債市場ではブンズラリー継続。10年金利は遂に10.1%を割れた。マイナス金利は時
間の問題か。
【国内株式市場・経済指標他】~実質輸出は反発が見込まれる~
・日本株は米株が横ばいでUSD/JPYも一進一退となるなか、利益確定売りが優勢。
・来週は貿易統計に注目。実質輸出(日銀算出ベース)は1月に急増(+5.3%)した後、2月に急減(▲
8.7%)。中国の春節・米国の港湾ストがノイズとなり基調が把握しにくくなっているが、当社は3月に+
3.2%の反発を見込んでおり、それが実現するとプラス基調が維持される。
【注目点】
・来週、最大の注目点は3月米耐久財受注、とりわけ設備投資の先行指標として有用なコア資本財受注。コ
ア資本財受注は、目下のところ6ヶ月連続で前月比マイナスを記録するなど驚くほど軟調だ。同項目のモ
メンタムを3ヶ月前比年率でみると、2月時点のそれは▲7.8%と、昨年8月の+17.0%から急減しており、
投資家の設備投資加速期待をものの見事に裏切っている。過去半年程度、企業は雇用を積極化する一方で
設備投資を抑制してきた。「強い雇用」が楽観論を物語るのに対して「弱い設備投資」が真逆のメッセー
ジを発するという歪な姿だ。実際、昨年4Qの単位労働費用が前期比年率+4.1%も増加したのに対して労
働生産性は▲2.1%と非常に弱かった。設備投資の停滞が効率化を阻害した結果、成長の足かせになったと
いうことになる。このように雇用と設備投資の関係が短期的に崩れることはあるが、やや長い目でみれば
企業は、雇用と設備投資を同時に加速させるのが通常の姿だ。であれば、今後は企業が雇用削減でもしな
い限り設備投資が加速すると考えるのが自然だろう。コンセンサスは3月に+0.3%の反発を見込んでおり、
(3ヶ月前比年率、%)コア資本財受注
千
40
30
(10億㌦)
75
70
NFP・コア資本財受注
(億人)
1.41
コア資本財受注
20
1.39
65
10
0
60
-10
55
-20
1.37
1.35
1.33
NFP(右)
50
-30
1.31
45
-40
07
08
09
10
11
(備考)Thomson Reutersにより作成
12
13
14
太線:3ヶ月平均
<主要株価指数>
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
終値
19693.56
18,105.77
11,998.86
7,060.45
5,224.49
0.315
1.890
1.607
0.085
0.352
1.379
1.351
(円)
19900
前日比
-192.21
-6.84
-232.48
-36.33
-29.86
118.98
1.0772
56.71 ㌦
1198.00 ㌦
-0.014
0.002
0.047
-0.022
-0.001
0.116
0.087
12
13
14
15
日経平均株価 13:07 現在
19800
19700
19600
(㌦)
18200
-0.03
0.00
%
%
%
%
%
%
%
1.29
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
15
十万
それが満たされれば投資家の疑念はある程度払拭される見込みだ。
%
%
%
%
%
%
%
0.32 ㌦
-3.50 ㌦
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
NYダウ平均株価
18100
18000
120.0
USD/JPY
119.5
119.0
118.5
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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