序・目次

統計学
徳島大学名誉教授・理学博士
伊東由文著
序
本書は拙著「数理統計学」の表現のあいまいさを改めて書き直し
をしたものである
統計学は 様々な実験科学や実証科学において 一つの集団から採
取した標本を用いて その集団の統計的情報についての正しさや有
意性などについての統計学的判断を行うための数学理論である 本
書において 統計学についての基本概念の理解と 実験や調査にお
けるデータ処理の基礎理論について考察する
統計学の基本事項として 確率と確率変数の概念 確率変数の分
布と期待値について概説し 様々な確率分布の例について考察する
更に 様々な標本分布 推定と仮説検定を中心に統計学の基礎理論
について考察する
本書においては 確率変数
関数
の確率分布
が
の分布
によって定められるルベーグ・スティルチェス測度空間
であるという説明を行っている所が数多くある さらに 確率変数
の期待値がルベーグ・スティルチェス積分を用いて計算でき
るという説明がある
確率と確率変数の一般論の考察においては完全加法的確率空間を
用いているから 理論的にはルベーグ・スティルチェス測度空間と
ルベーグ・スティルチェス積分の概念を用いることは避けられない
ことである
初めて統計学を学ぶ人は このような測度論・積分論の立場から
の説明をスキップして先に進んでもらいたい
大事なことは 確率分布
う事実である
が確率空間になっているとい
さらに 本書において実際の応用に現れる確率変数の期待値の計
算においては 離散変数に対して一般に無限級数の和の計算を用い
連続変数に対してリーマン積分あるいはウエイト付きのリーマン積
分の計算を用いることに限定していることを注意する
なぜならば 考えている被積分関数が連続関数や不連続点の少な
い関数であるとき その関数の積分がルベーグ積分やルベーグ・ス
ティルチェス積分であると考えていたとしても それらの積分はリー
マン積分あるいはリーマン・スティルチェス積分と一致することが
わかっているから そのような関数の積分はリーマン積分と考えて
よいからである
本書において現れる極限 無限級数の和あるいは積分については
証明を明記していなくても それらが存在するものを考察の対象に
している
本書において 確率変数の確率分布の表現によって 自然統計物
理学における確率分布の表現に最適の形を見出すことができた
ここで 本書において用いる数の概念の定義は 拙著「算術の公
理」の定義を用いることを付言する これに関しては 伊東
を
参照していただきたい
は自然数全体の集合
は有理数全体の集合
は実数全体の集合
は整数全体の集合
は複素数全体の集合
を表す
さらに 大学の教育課程において
年次における 年コースの講
義で学習する線形代数学と微分積分学の知識を前提としている
健康で文化的な普通の生活ができることを感謝して
年 月 日
伊東由文
目 次
序
目 次
第 章 確率と確率変数
確率の定義
条件付き確率と独立事象
確率変数
第 章 確率変数の分布と期待値
離散変数の場合
連続変数の場合
積率 積率母関数と特性関数
変数の変換
第 章 確率変数と確率分布の例
離散変数の例
連続変数の例
第 章 次元確率変数と 次元確率分布の例
次元確率変数と 次元確率分布
変数の変換
期待値
次元正規分布
第 章 次元確率変数と
次元確率変数と
次元確率分布の例
次元確率分布
変数の変換
期待値
次元正規分布
第 章 標本分布
母集団と標本
標本平均値の分布
標本分散の分布
分布の性質
分布
分布
分布
コクランの定理
第 章 推 定
点推定と区間推定
不偏推定量
一致推定量
有効推定量
最尤推定量
母平均値の区間推定
母分散の区間推定
母平均値の差の区間推定
項分布の母数の区間推定
項分布の母数の区間推定
第 章 検 定
仮説の検定
平均値に関する検定
平均値の差の検定
分散に関する検定
項分布の母数に関する検定
項分布の母数に関する検定
適合度の検定
独立性の検定
相関係数の検定
尤度比検定法
第 章 分散分析法
因子の場合
因子の場合 乱塊法
ラテン方格法
交互作用のある場合
付 録 統計数値表
文 献
索 引