微分積分学II 第2回目レポート課題解答例

微分積分学 II 第 2 回目レポート課題 解答例
2015 年 10 月 19 日 出題
2-1
(1)
∂f
(x, y) = 2x cos y,
∂x
∂f
(x, y) = −(x2 + 1) sin y
∂y
(2)
∂f
(x, y) = yexy ,
∂x
∂f
(x, y) = xexy
∂y
2-2
(1) 原点での値が f (0, 0) であることから,定義より以下を得る.
∂f
f (h, 0) − f (0, 0)
0−0
(0, 0) = lim
=
=0
h→0
∂x
h
h
∂f
f (0, k) − f (0, 0)
0−0
(0, 0) = lim
=
=0
k→0
∂y
k
k
(2) 原点以外での偏導関数は次のように得られる.
∂f
2y
4x2 y
2y(x2 − y 2 )
(x, y) = 2
−
=
−
∂x
x + y2
(x2 + y 2 )2
(x2 + y 2 )2
2
∂f
2x
4xy
2x(x2 − y 2 )
(x, y) = 2
−
=
∂y
x + y2
(x2 + y 2 )2
(x2 + y 2 )2
例えば,x 軸に沿って正の方向から原点に近付く点列 {(xn , 0)}n∈N ⊂ R2 , を考える.つまり,xn > 0
∀n ∈ N かつ xn → 0 (n → ∞) である.このとき,
∂f
(xn , 0) = 0 → 0 (n → ∞),
∂x
∂f
2
(xn , 0) =
→ ∞ (n → ∞)
∂y
xn
となり,∂f /∂x は 0 に収束するが ∂f /∂y は発散する.一方,y 軸に沿って正の方向から原点に近
付く点列を考えれば,先ほどとは逆に ∂f /∂x は発散するが ∂f /∂y は 0 に収束する.これより,
∂f /∂x, ∂f /∂y はともにすべての近づき方に共通する収束値を持たない.つまり,原点において極
限は存在しない.
(3) 上記の結果より,f は全ての点で偏微分可能であるが,偏導関数は原点で連続とならない.つ
まり,全微分可能性の十分条件は満たさない.ただし必要条件ではないため,上記の結果だけでは
全微分可能性を否定することはできない.
2-3
(1) 点 (1, 1) を通り,原点と点 (h, k) ∈ R2 を結ぶ直線に平行な直線は φ(t) = 1 + ht, ψ(t) = 1 + kt
と媒介変数表示ができる.よって,
d
∂f
∂f
(f (φ(t), ψ(t))) =
(φ(t), ψ(t))h +
(φ(t), ψ(t))k
dt
∂x
∂y
!
"
!
"
= 6(1 + ht) + (1 + kt) h + (1 + ht) + 6(1 + kt) k
1
より,点 (1, 1) における方向微分係数
#
#
d
(f (φ(t), ψ(t)))##
= 7(h + k)
dt
t=0
(∗)
を得る.これを最大にする方向を見つけるため,c = 7(h + k) とおく.これは,h-k 平面上の傾き
−1 の直線の方程式とみなせ,c は k 軸と交わる際の k の値を 7 倍したものと解釈できる.一方,
(h, k) は単位円上の点であるため,h2 + k 2 = 1 を満たす.よって,単位円上を通過するような傾
き −1 の直線のうち,k 軸との交点が最大もしくは最小となるものを見つければよい.図 1 より,
√
√
√
√
最大は (h, k) = (1/ 2, 1/ 2) の方向であり,最小は (h, k) = (−1/ 2, −1/ 2) の方向となる.な
お,最大値と最小値は符号が異なるだけで,絶対値は等しい.
maximum
minimum
図 1: 最大・最小を与える直線
この結果の幾何学的意味についてもう少し説明しておく.関数 f のグラフとその等高線を図 2 に示
す.グラフからは分かりづらいが,等高線を見ると,グラフの各断面は軸が 45◦ 傾いた楕円であるこ
とが分かる.問題 2-3 の結果から言えることは,点 (1, 1) において関数 f は,点 (1, 1) を通る等高線
√
√
に垂直な方向に値が最も変化することである.一方,等高線に接する方向 (h, k) = (±1/ 2, ∓1/ 2)
(復号同順)については,方向微分係数の式 (∗) に代入すると方向微分係数は 0 となることが分か
る.これは等高線の意味を考えると直観的に明らかである.
2
max
1
min
0
2
-1
1
-2
-1
0
0
1
-2
-1
-2
2 -2
図 2: 関数 f のグラフとその等高線
2
-1
0
1
2