数学解析 問 No.3 年 組 番 (2015 年 4 月 27 日出題) 氏名 a > b > 0 を満たす a, b に対して、 a1 = a, b1 = b, √ a + bn an+1 = n , bn+1 = an bn 2 (n = 1, 2, · · · ) で数列 {an }n∈N , {bn }n∈N を定めたとき、以下の問に答えよ。 (1) {an }n∈N , {bn }n∈N はともに単調な数列であることを示せ。 (2) すべての自然数 n に対して、an+1 − bn+1 ≤ (an − bn )/2 であることを示せ。 (3) {an }n∈N , {bn }n∈N はともに収束し、極限は一致することを示せ。 (ヒント: a1 > a2 > · · · > an > an+1 > · · · > bn+1 > bn > · · · > b2 > b1 が成り立つ。) 問 3 解説 この問題のテーマは「上に有界な単調増加数列は収束する」(系として「下に有界 な単調減少数列は収束する」) という定理である。 (1) まず (∀n ∈ N) an > bn > 0 が成り立つことを示す。仮定 a > b > 0 から a1 > b1 > 0 が得 られるので、n = 1 のとき成り立つ。n = k のとき成り立つと仮定すると、 (√ √ )2 ak − bk ak + bk √ ak+1 − bk+1 = − ak bk = > 0. 2 2 ゆえに n = k + 1 のときも成り立つ。数学的帰納法によって、任意の自然数 n に対して an > bn > 0. このことを用いると bn − an an + bn − an = < 0, 2 2 ( √ √ ) √ √ an − bn > 0 bn+1 − bn = an bn − bn = bn an+1 − an = であるから、{an } は単調減少、{bn } は単調増加である。 (2) an > bn > 0 であるから、 (an+1 − bn+1 )− √ √ (√ √ ) an − bn an + bn √ an − bn = − an bn − = bn − an bn = bn bn − an < 0. 2 2 2 ゆえに an+1 − bn+1 < an − bn . 2 (3) 任意の n ∈ N に対して、a1 ≥ an > bn ≥ b1 であるから、{an } は下に有界 (∵ b1 が下界)、 {bn } は上に有界 (∵ a1 が上界) である。 そのことと (1) の結果から、{an } と {bn } は収束する: (∃a, b ∈ R) lim an = a, lim bn = b. n→∞ n→∞ a1 − b1 . 2n−1 ここから 2 つのやり方にわかれる。 一方、(2) の結果から an − bn ≤ (挟み撃ちの原理を用いる) an > bn から、0 < an − bn ≤ a1 − b1 . 挟み撃ちの原理により、an − bn → 0 (n → ∞). 2n−1 「大きさが 0 に収束する数列で抑えられるならば、0 に収束する」を用いる an > bn から |an − bn | ≤ (n → ∞). a1 − b1 . n → ∞ のとき右辺は 0 に収束するので、an −bn → 0 2n−1 ゆえに a − b = 0. ゆえに {an }, {bn } は共通の極限に収束する。 an + bn でn→∞ 2 a+b とすれば、a = が得られるので、a = b. 問題を作ったときは、収束が十分速いことを示 2 したかったから、(2) を入れたような覚えがあるけれど、(ここから後は細かい話) 上の不等式 で示せるのはいわゆる線形収束で、本当は 2 次の収束をする (もの凄く速い) のだから、切れ 味が悪い評価だった。 反省 極限が共通であることを証明するだけなら、(2) は不要だった。an+1 = 上で使った命題を証明しておく。 命題 0.1 [大きさが 0 に収束する数列で抑えられるならば、0 に収束する] 2 つの実数列 {an }, {bn } が、(i) (∀n ∈ N) |an | ≤ bn , (ii) lim bn = 0 を満たすならば、 lim an = 0. n→∞ n→∞ 証明 最初に (i) より bn ≥ 0 であることを注意しておく。 ε を任意の正数とする。(ii) より、(∃N ∈ N) (∀n ∈ N: n ≥ N ) |bn − 0| < ε. ゆえに bn < ε. このとき |an − 0| = |an | ≤ bn < ε. ゆえに lim an = 0. n→∞ この命題は、{an } がベクトル列でも成立し、非常にしばしば用いられるので、重要である。 (挟み撃ちの原理は有名だけれど、1 次元の場合でしか成り立たない。一方、命題 0.1 は名前も ついていないけれど、実はとても頻繁に使われる。)
© Copyright 2024 ExpyDoc