老化指標 - Arterial Stiffness

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老化指標
小原克彦(国立病院機構愛媛医療センター神経内科医長)
老年医学領域のみならず循環器の領域においても、フ
認知症の進展に伴いさらに歩行速度が低下することが報
レイルが注目されている。本来は高齢者の病態を反映す
告されている。cognitive frailty という病態も提唱されて
る概念であるため、当然のことながら高齢期に増加する
いる。当然のことながら、全身の老化度は互いに関連し
動脈硬化を始めとするさまざまな疾患と関連することは
ており、血管老化と脳の老化が、全身老化度の指標とし
容易に想像できる。
てのフレイルに関連するということではないだろうか。
フレイルの定義は大きく分けて、2 種類存在する。ひと
それでは、全身の老化度の指標として最も有用なのは、
つは Rockwood らの障害加算モデルであり、障害度や疾
何であろうか。当然のことであるが、実年齢(暦年齢)が
患数を合計してフレイル度を判定する。もうひとつは、
最大の要因である。少なくとも physical には、10 年前の
Fried らによる生物学的症候群モデルである。weakness、
自分にはかなわないのである。では同年代間ではどうか。
slowness、shrinking、exhaustion、low activity の 5 項
さまざまなパラメーターを加えたフレイル度は情報量が
目のうち 3 つ以上を有する場合をフレイル、1 つまたは 2
多いが、評価が大変である。Thomas Sydenham の言葉
つの場合をプレフレイルと判断する。臨床的には、歩行
のように、血管年齢が全身老化を反映しているのかもし
速度の低下、握力の低下、予期せぬ体重減少、強い疲労感、
れない。『見た目年齢』が重要な要因であることを示す成
活動性の低下で評価される。このうち、歩行速度の低下
績もある。握力こそ重要だという成積が、最近の Lancet
と握力の低下はサルコペニアの判定基準にも用いられて
に報告されている。筆者自身は、動脈スティフネスが優
いる。サルコペニアと動脈硬化との関係を調べたわれわ
れた全身老化指標であると考えているが、エビデンスは
れ の 成 績 で は、 動 脈 硬 化 指 標 の う ち 頸 動 脈 肥 厚 よ り
限られている。フレイルを予防するための介入法として
baPWV で表される動脈スティフネスとの関連性がより強
は、栄養や運動を含む生活習慣、そして生活習慣病の予
く認められた。
防と治療ということになる。これらの効果は、baPWV を
フレイルと認知機能との関係も数多く報告されている。
始めとした動脈硬化指標で確認することができる。これ
歩行速度の低下が認知機能低下や認知機能障害あるいは
なら日常臨床的にも対応することが可能である。
アルツハイマー病をはじめとした認知症と関連しており、
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