この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 英文原著論文紹介 ⑱ 検査法 Associations of brachial-ankle pulse wave velocity and carotid atherosclerotic lesions with silent cerebral lesions. Matsumoto M, Inoue K, Moriki A. Hypertens Res. 2007; 30: 767-73. PMID: 18037768. 動脈硬化指標(baPWV)および頸動脈の硬化性病変と、 無症候性脳虚血性病変との関連 松本正俊(自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門・附属病院 総合診療部講師) 井上和男/森木章人 背 景 年齢、性別、高血圧治療歴、収縮期血圧などで調整 ラクナ梗塞や脳動脈の狭窄といった無症候性脳虚 した多変量解析においては、baPWV値はこれらいず 血性病変は、MRIやMRAによる脳ドックの普及で近 れの疾患とも有意な関連をもたなかった(表3)。一 年多くみつかるようになってきた。これら無症候性 方、頸動脈プラークの存在はこの多変量解析におい 脳虚血性病変は動脈硬化によって生じると考えられ ても、無症候性脳梗塞と関連しており(オッズ比 ているが、動脈硬化の程度を非浸襲的に測定できる 2.69:95%CI 1.59-4.56)、さらにIMTの肥厚は無症候 baPWV、頸動脈プラーク、そして頸動脈内膜中膜複 性脳梗塞と脳動脈狭窄の双方と有意な関連を示した 合体厚(IMT)といった指標との関連については不 (オッズ比2.40:95%CI 1.02-5.65、オッズ比9.70:95% 明である。 目 的 CI 1.48-63.71) 。 考 察 baPWVと頸動脈超音波検査の所見が無症候性脳虚 同じ動脈硬化の指標とはいっても、baPWVは動脈 血性病変と関連しているかを、横断研究によって調 壁の硬度を反映するのに対し、頸動脈プラークや べる。 IMT肥厚は動脈壁の形態的異常を捉えたものである。 対 象 人間ドックおよび脳ドックを受診した476名の無症 候者(男性57.4%、平均年齢51.5歳)。 方 法 全例に対してbaPWVの測定(form PWV/ABI:オ ムロンコーリン)、Bモードによる頸動脈超音波検査、 頭部MRI、そして頭部MRAを施行した。 結 果 161名(33.8%)が頸動脈プラークを、33名(6.9%) がIMTの肥厚を、99名(20.8%)が無症候性脳梗塞を、 そして7名(1.5%)が脳動脈の狭窄病変を有していた。 単変量解析では、無症候性脳梗塞群のほうが対照群 よりも有意に高いbaPWV値を示した(1,493.2 vs. 1,400.9cm/sec、p<0.01)(表1)。同様に、脳動脈狭 窄群のほうが対照群よりも高いbaPWV値を示した 98 (1,664.4 vs. 1,416.4cm/sec、p=0.01) (表2)。しかし、 またbaPWVは全身動脈を代表する数値であるのに対 し、頸動脈病変は脳循環系に限局した異常である。 こういった差異が、baPWVと頸動脈エコーの無症候 性脳虚血性病変との関連の差となって今回の結果に 現れていることが推測される。 結 論 頸動脈プラークとIMTの肥厚は無症候性脳梗塞の リスク評価に有用であるかもしれない。さらにIMT の肥厚は無症候性脳動脈狭窄病変の予測にも役立つ かもしれない。 この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 英文原著論文紹介 ⑱ 表1 無症候性脳梗塞群と対照群との比較(単変量解析) 梗塞(+) (n=99) 年齢(歳) 梗塞(−) (n=377) 57.6±8.9 男性[n(%)] 49.9±6.6 57(57.6) BMI(kg/m2) 脂質異常症の既往[n(%)] 糖尿病の既往[n(%)] <0.01 1.00 216(57.3) 23.7±3.4 高血圧治療中[n(%)] p* 23.8±3.3 0.86 23(23.2) 37(9.8) <0.01 7(7.1) 29(7.7) 0.52 12(3.2) 0.27 収縮期血圧(mmHg) 130.9±17.3 5(5.1) 126±17.1 0.01 拡張期血圧(mmHg) 80.5±12.6 77.8±12.7 baPWV(cm/sec) 1,493.2±295.7 0.06 1,400.9±252.8 <0.01 頸動脈プラーク[n(%)] 61(61.6) 100(26.5) <0.01 IMT肥厚[n(%)] 16(16.2) 17(4.5) <0.01 3(3) 4(1.1) 無症候性脳動脈狭窄[n(%)] 0.16 *:Fisher's exact testあるいはStudent's t test。データは平均値±標準偏差、あるいは数(%)で表示。 表2 無症候性脳動脈狭窄群と対照群との比較(単変量解析) 狭窄(+) (n=7) 年齢(歳) 狭窄(−) (n=469) 52.6±7.2 男性[n(%)] 5(71.4) BMI(kg/m2) 24.5±3.1 高血圧治療中[n(%)] 脂質異常症の既往[n(%)] 糖尿病の既往[n(%)] p* 51.5±7.8 0.72 268(57.1) 0.70 23.8±3.3 0.54 2(28.6) 58(12.4) 0.22 0(0) 36(7.7) 0.58 1(14.3) 16(3.4) 0.23 収縮期血圧(mmHg) 142.6±16.6 126.8±17.2 0.02 拡張期血圧(mmHg) 83.6±12.4 78.2±12.7 0.27 baPWV(cm/sec) 1,664.4±463.1 1,416.4±259.7 頸動脈プラーク[n(%)] 2(28.6) 159(33.9) IMT肥厚[n(%)] 3(42.9) 30(6.4) 無症候性脳梗塞[n(%)] 3(42.9) 96(20.5) 0.01 1.00 <0.01 0.16 *:Fisher's exact testあるいはStudent's t test。データは平均値±標準偏差、あるいは数(%)で表示。 表3 無症候性脳梗塞と無症候性脳動脈狭窄に関連する因子(多変量解析) 無症候性脳梗塞 オッズ比 95%CI 年齢(1歳) 1.12 1.08-1.17 男性 0.66 高血圧治療中 2.22 収縮期血圧(10mmHg) 無症候性脳動脈狭窄 p* オッズ比 95%CI p* <0.01 0.94 0.83-1.07 0.11 0.38-1.13 0.13 1.10 0.18-6.57 0.92 1.11-4.43 0.02 2.64 0.44-15.80 0.29 1.04 0.86-1.26 0.67 1.14 0.70-1.84 0.60 baPWV(100cm/sec) 0.93 0.82-1.05 0.25 1.28 0.90-1.81 0.17 頸動脈プラーク 2.69 1.59-4.56 <0.01 0.38 0.05-2.75 0.34 IMT肥厚 2.40 1.02-5.65 0.04 9.70 1.48-63.71 0.02 *:Logistic regression analysis。 99
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