傷寒論

傷寒・金匱方剤解説 76 けー11
方剤名
傷寒論・金匱要略条文
音順
けー11
生薬構成 および製法・服用方法
読み および解訳・その他
桂枝(辛温)4g・甘草(甘平)2g
上の 2 味を水 120mlを以って煮て、40mlに煮詰め、滓を去り頓服する。
弁太陽病脈証併治中第六第 34 条(傷寒論)
桂枝甘草湯
しゃしゅ
おお
つかさど
」
「発汗多きに過ぎ其の人叉 手して自ら心を冒う。心下悸し按ずることを得んと欲する者は桂枝甘草湯之を 主 る。
解訳 汗のかかせ方が多過ぎたために、胸苦しくなって、病人が手を組んで自然に胸の上にあてて、動悸がして、やたらにさすっても
らいたい様なものには、桂枝甘草湯が主治する。
多量の発汗は、陰液が汗となって失われ、表が大変虚してしまい、それに伴って心陽までも失って心陽不足になり、心下の動
悸を起こす。そのために病人は、胸苦しくて、手を胸に当ててさすりたくなる。また元来冷え症で、顔色が青白い陽虚タイプ
の人が発汗し過ぎると、心陽虚となり、ぐったり疲れて胸満、短気、胸苦しい症状が現われ易くなる。この様な場合には桂枝
甘草湯を用いて、心陽を回復させて、心悸を鎮めるとよい。
桂枝甘草湯の桂枝は、表の虚を補い、動悸を鎮める。甘草は、脾胃の気を補って緩和し、桂枝の働きを助ける。
「方剤決定のコツ」の注釈
発汗し過ぎたために表の陽気が虚してしまい、表虚に乗じて表熱が侵入し、胸中(心下)に熱がこもって心下悸を起こした
のであるから、桂枝と甘草で、表の虚を治して、こもれる熱を発散して治す。
参考 多量の発汗は、陰液が汗となって失うと共に、心陽までも失って、心陽不足になり心下の動悸を起こすが、それ以上発汗を繰
り返すと、腎陽までも不足してきて、腎が開竅している耳を障害し、つんぼになってしまう事もある。
桂枝甘草湯証と桂枝乾姜湯証との相違
桂枝甘草湯証の場合は、動悸が強く、冷えは少ない。
甘草乾姜湯証の場合は、動悸がやや少なく、冷えが強く現われる。
桂枝甘草湯証
新古方薬囊によれば「発汗剤などを服して、汗を取ることが多過ぎたため、病人が手を組み合わせて胸の辺りの上に乗せ、自分
で胸の動悸を止めようとする者、つまり激しい動悸を生じたる者に用いる。
」と記されている。