傷寒・金匱方剤解説 144 しー33 方剤名 傷寒論・金匱要略条文 音順 しー33 小半夏湯 生薬構成 および製法・服用方法 読み および解訳・その他 半夏(辛平)10g・生姜(辛温)8g 上の 2 味を水 280mlを以って煮て 60mlとなして滓を去り 2 回の分けて温服する。 痰飮咳嗽病脈証併治第十二第 29 条(金匱要略) もと げ かえ つかさど 」 「嘔家本渇せり渇する者解せんと欲すと為す。今反って渇せざるは心下に支飲有るが故也。小半夏湯之を 主 る。 解訳 嘔家とは、日頃から吐き癖のある人で、これは水飲が胃に停滞することが多い。吐いて水飲が無くなり、水飲が少なくなると渇 を生じる(即ち胃の冷えが取れて来たということである) 。もし渇が生じて来ないのは、心下(みぞおち)に水飲の停滞(支飲) があるからで、まだ解せようとしていない。その場合には、小半夏湯が主治する。 小半夏湯は、生姜が胃腸を助け、半夏と共に濁水を捌く。 小半夏湯の場合は、熱なく、唯胸中苦しく、或いは心中(胸中)が苦しくして嘔し、冷や汗などが出るものによく効くので、 熱を伴うものは、柴胡剤などを選択すべきである。 「方剤決定のコツ」の注釈 支飲は、胸中や胃中(みぞおち)に水飲(水気)があるものを言い、胃中(みぞおち)に水飲がある場合は、嘔吐が生じ、 胸中に水飲がある場合は、咳が込み上げて来て、顏や全身に腫みを生じて、息苦しく臥することが出来ない症状が生じる。 小半夏湯証 新古方薬囊によれば「訳も無く急に嘔吐を發止し、止まらない者に宜し。この場合併せて熱が發する者は小柴胡湯を考ふべし。熱 は無く唯胸中が苦しくして嘔し、冷や汗など出づるものには、本方のゆく所多し。 」と記されている。 黄疸病脈証併治第十五第 22 条(金匱要略) べ えつ つかさど 」 「黄疸病、小便の色変わらず自利せんと欲し、腹満して喘するは熱を除く可からず。熱除けば必ず噦せる者は小半夏湯之を 主 る。 解訳 黄疸病は、内熱から来る場合が多いが、例外もあって、小便の色は平常と変わりなく、小便がよく出るのは裏熱の証では無く、 そして腹が張ってゼイゼイ言うのも内熱から生じることが多いが、この場合は内熱から生じているのでは無く、内寒より来てい るから熱を取ってはならない。下しをかけて熱を取ってしまうと、必ずシャックリをする様になってしまう。シャックリの出る ものは、小半夏湯が主治する。 「方剤決定のコツ」の注釈 この黄疸は、表が虚して、裏に寒と水とがあって、そのために表裏の間に熱を持ち黄を発するのであるから、裏の寒と水、 即ち飲を去れば、噦も、黄疸も共に癒ゆるのである。 嘔吐噦下痢病脈証併治第十七第 14 条(金匱要略) くだ つかさど 」 「諸の嘔吐、穀下るを得ざる者は小半夏湯之を 主 る。 解訳 いろいろの病から発する嘔吐(胃が冷えることにより生じる)のために、食べ物が胃に収まらない者は、小半夏湯が主治する。 「方剤決定のコツ」の注釈 小半夏湯の半夏・生姜の二味は、胃の冷えと水によって生じる嘔とか、吐とか、悸とかを治す薬方の原方になることが多い と考えられる。 半夏で肺気を補って滞水の流れをよくし、生姜の辛温で胃を温め水を逐い、胃気の働きを強め、表を実しさせて、心下の 支飲を除くのである。 黄芩加半夏生姜湯は、熱が裏に入って嘔を発するのであるが、胃の内と外が通ぜず、胃の外が熱し、胃の中が冷ゆることに よって胃中の気が上逆して嘔を発する、故に半夏・生姜を加えて胃中を温め、逆気を降して嘔を治す。 半夏・生姜の二味は小半夏湯である。黄芩加半夏生姜湯は穀下る者で、小半夏湯は穀下るを得ざる者である。
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