ていれきたいそうしゃはいとう 葶藶大棗瀉肺湯

傷寒・金匱方剤解説 189 てー3
音順
てー3
方剤名
傷寒論・金匱要略条文
生薬構成 および製法・服用方法
読み および解訳・その他
葶藶(辛寒)を熬りて黄色くなる程度にし搗いて粉としたるもの 2gを取る・大棗(甘平)4g
先ず水 120mlを以って大棗を煮て 80mlを取り、大棗を去りてから葶藶を内れ、煮て 40mlとなし頓服す。
肺痿肺癰咳嗽上気病脈証併治第七第 11 条(金匱要略)
葶藶大棗瀉肺湯
つかさ
」
「肺癰喘して臥するを得ざるは、葶藶大棗瀉肺湯之を 主 どる。
解訳 肺癰の病で、ゼイゼイして苦しく横になることが出来ない者に、葶藶大棗瀉肺湯が主治する。
水滞は、脾胃気虚、および脾胃陽虚により生じることが多いが、肺気虚による宣散粛降の機能失調によっても生じる。
葶藶大棗瀉肺湯証の場合、この肺気虚による肺の水湿と、外邪を感受して生じた肺熱(気管支炎による炎症性の熱)を伴う。
故に葶藶大棗瀉肺湯は、肺熱があり、肺に水湿や水様の膿が滞っているために、喘鳴(ゼイゼイ言う)があって、横になると
苦しく、肩で息をして、顏がむくんでいる場合が多く、心下が固くなっている。また右寸口の脈が沈んで強くなっている。こ
の様な場合に用いる。
葶藶大棗瀉肺湯の葶藶は肺に入り、肺熱を冷まし、水気を通利して癰膿を瀉す。大棗は脾胃の損傷を防ぐ。
「方剤決定のコツ」の注釈
肺癰とは、肺中に熱を持ち、そのために咳が多く出て、その時に胸中が痛み、膿の如き濃い痰を吐き、身体に熱があるもの
をいう。
葶藶大棗瀉肺湯証
肺の陰気が虚して胸に熱を持ったために、水や、水様の膿が滞った場合に用いる。いつも喘鳴があって、横臥すると苦しく、肩
で息をし、顏がむくんでいる場合が多い、心下が硬くなっていることもある。
葶藶大棗瀉肺湯証
新古方薬囊によれば「肺癰にて、ゼエゼエして臥すること出来ず、物に倚りかかって息をついているが如き者、肺癰とは、咳多く
出で、胸中痛み、膿痰を多く出だし、身体に熱ある者を言ふ。又は支飲と言って、胸中、胃中に水氣がある爲、顏や或は全身に
むくみを生じ、息苦しくして臥することが出来ず、胸中又は心下苦しく、咳が出て熱の無い者、又は今説明した所の肺癰にて顏
及び全身がむくみ、息苦しく鼻詰まりて物の臭ひも判らず、胸がはちきれる程に張りたる感じがあり、ゼイゼイして咳込み其の
状態が甚だ急なる者。すべて胸より上へ張り上げて息苦しいのが目の付け所なり。
」と記されている。
肺痿肺癰咳嗽上気病脈証併治第七第 21 条(金匱要略)
せいてい
い
はくそく
つかさど
「肺癰にて胸満脹し、一身面目浮腫し、鼻塞して清 涕を出だし、香臭酸辛を聞かず、咳逆上気して喘鳴迫 塞するは、葶藶大棗瀉肺湯之を 主
どる。
」
解訳 肺癰の病で、胸が一杯になって張り、全身がむくみ、このむくみは顏や目までに及んでいる、そして鼻が詰まって、清涕(澄ん
だ冷たい水鼻汁)が出て、香り、臭気、酸っぱいものなど物の臭気が判らず、咳が込み上げて来て顏が赤くなり、ゼイゼイとし
て呼吸が苦しい者には、葶藶大棗瀉肺湯がこれを主治する。
葶藶大棗瀉肺湯を服用する前に、小青龍湯を 1 剤 1 服して、それから服用するとよい。
痰飮咳嗽病脈証併治第十二第 28 条(金匱要略)
「支飲息するを得ざるは葶藶大棗瀉肺湯之を主る。
」
解訳 支飲のために胸が一杯に張って、呼吸をすることが出来ないものに、葶藶大棗瀉肺湯が主治する。
葶藶の薬味・薬能は、味辛寒で、肺中または胸中に滞りたる水を去る、故に喘息、咳嗽、呼吸困難などを治す働きがあるの
で、肺に熱を持って、気の滞りを生じたる者によいと思われる。