傷寒・金匱方剤解説 79 けー14 音順 けー14 方剤名 傷寒論・金匱要略条文 生薬構成 および製法・服用方法 読み および解訳・その他 桂枝去芍薬湯 桂枝湯 - 芍薬 桂枝(辛温)3g・甘草(甘平)2g・生姜(辛温)3g・大棗(甘平)4g 上の 4 味を水 280mlを以って煮て 120mlとなし、滓を去り1日 3 回に分けて温服する。 桂枝去芍薬加附子湯 桂枝湯 - 芍薬 + 附子 桂枝(辛温)3g・甘草(甘平)2g・生姜(辛温)3g・大棗(甘平)4g。炮附子(辛温)0.2g 上の 5 味を水 280mlを以って煮て 120mlとなし、滓を去り1日3回に分けて温服する。 弁太陽病脈証併治上第五第 23 条(傷寒論) 「太陽病之を下したる後、脈促胸満の者は桂枝去芍薬湯之を主る。若し微に悪寒する者は芍薬を去りたる方中に附子を加えたる湯之を主る。 」 桂枝去芍薬湯 桂枝去芍薬加附子湯 (桂枝附子湯の組成と同じである が桂枝と附子の量が少ない。 ) くだ つかさど も かすか 下したる、 主 る、若し、 微 に、 解訳 太陽病であるのに下してしまった。そのために脈が促になって、胸中が満ち詰まって苦しむものには、桂枝去芍薬湯が主治する。 もし微かに悪寒のするものには、桂枝去芍薬湯から芍薬を去り、附子を加えた桂枝去芍薬加附子湯が主治する。 脈の促とは、脈の打ち方が早くて、数を飛ばすことで、1234 といかず、1235 と飛んで打つものをいう。 この方は、下したために、表の熱が胸に入って、胸中に異常を生じたものである。この証に微かに悪寒が加わったものが、 桂枝去芍薬加附子湯であって、微悪寒とあるが、相当ひどい悪寒のこともある。 太陽中風の表証は、陽気を補って発汗すれば治るし、表証があっても裏寒があれば、先に裏を補って温めてから発散すれば治 る。太陽中風はこの様な発汗法を行い、決して下してはならないのに誤治により下してしまったために、陽気が不足して胃腸 を冷やし、陽気の産生が低下して陽気不足が生じ、このために上焦(胸)の陽気も不足するために、表邪(表熱)が胸中に内 陥して、胸中での陽気の産生を阻害するので、胸満(胸が張る)を訴えるようになる。生体はこれ以上の陽気不足(陽虚)に ならない様に、心が早く陽気を循らそうとして脈は数脈(脈促)になる。脈が急迫で、按じて軟であれば、邪気は胸(陽位) にあって、裏(陰位)に深入りしていない。陽気は誤下のために不足しているが、未だ余力があって、邪気と抗争中の段階で ある。この様な場合、桂枝去芍薬湯がよい。この証に微かに悪寒が加わった場合は、陽気不足が亢じた太陽少陰合病であるの で、附子を加えて桂枝去芍薬加附子湯として、陽気を補い、温喣作用を高めるとよい。 参考 桂枝湯から芍薬を除くのは、芍薬の収斂作用で胸中に邪を閉じ込めてしまう恐れがあるからである。 桂枝去芍薬湯は、脈が早くて時に不整になる場合で、胸が張ったり、痛んだりする病症があれば何病にでも使える。夜になる と胸が痛いという時にも使える。勿論風邪などで熱病をこじらせて脈が促である時にも使う。 「方剤決定のコツ」の注釈 桂枝去芍薬湯証は、病が表にあるのに、之を下したために胃腸が虚してしまって表熱が肺に入って胸満を起こし、その熱 が血液にも影響を及ぼしたもので、桂枝・甘草で胸満と脈促を来たしている肺にこもった熱を発散し、脾胃の虚を大棗・ 生姜で強めて治す。 「脈促」は、内陥した陽気は再び表に引き戻すことが出来る程度の内陥であることを意味する。 「胸満」は内陥した陽 気が表より出ようとして起きる証である。もし下す時期が早すぎると、熱が胸に入って結ぼれて結胸を起こしたり、胃 に入って胃実となり陽明病になったりする。 桂枝去芍薬湯証 新古方薬囊によれば「太陽病を下したるが爲、脈が促となり胸中が満ち詰まって苦しむ者。 太陽病とは、大抵風邪の初期、又は熱病の初めで脉がとっとと浮いて早く打ち、頭痛や背痛などがあって悪寒する者の事。悪 寒とは寒気の事。脉の促とは脉の打ち方が早く、時々数を飛ばすこと、即ち 1234 と行かずに 123 5 と飛ばす事のあるもの、 本方は胸の張るのと脉の促なのとを目標として用いるべし。脈の早いか遅いか、止まるか止まらないか位は患者自身、又は近 親の者にても容易に判るものなり。 」と記されている。 桂枝去芍薬加附子湯証 新古方薬囊によれば「胸の中張りたる感深くありて、而も悪寒著しく、衣を重ねてもゾクゾクとする者、脉は早くして時々飛ばし 藪を抜いて打つ脉なり。 」と記されている。
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