No.2015-039 2016年3月3日 http://www.jri.co.jp 拡大する中国のシャドーバンキング (1)中国では、代表的なシャドーバンキングである委託融資が再び増加(図表1)。銀行理財 商品、委託融資、信託融資の3つを合わせた狭義のシャドーバンキングの残高は2015年末 に49兆元(約850兆円)に拡大(図表2)。 (2)この背景には、以下の3点が指摘可能。 ① 金融緩和に伴う財テクの拡大(過剰流動性、図表3、4)。国有企業などでは、実業が行 き詰るなか、社債や銀行融資を通じて低利で資金を調達し、高利率で不動産開発企業、イ ンフラプロジェクトや中小民間企業に貸し付け。他方、固定資産投資が一段と減速するな ど、実物投資に資金が回らず、中国国内でも“脱実向虚”との指摘が。 ② 実質的な預金金利の上限規制。2015年10月の預金金利の上限撤廃の告知後、当局から預金 金利引き上げを止められた金融機関も。個人向けの金融商品開発が遅れ、高利回りの銀行 理財商品に資金が流入し続けている状況。 ③ 政府のシャドーバンキング規制の微調整。景気減速下、不良債権が急増し、銀行に貸し渋 りの動きも。当局は貸し渋りや貸し剥がしに対して警戒感を強めており、シャドーバンキ ング規制が運用面で甘くなっている可能性も。 (3)シャドーバンキングの拡大は、短期的には景気を下支えするものの、企業の財テク拡大や 家計の過度なリスク選好という側面が強いだけに、中国経済の不安定さを高める動きと認 識。 (億元) 5,000 1 2 (図表2)シャドーバンキングの規模(ストック) (図表1)委託融資(フロー) 信託業の資産管理規模(c) 4,000 (兆元) 50 委託融資(b) 40 (a+b+c)の対GDP比(右目盛) 72.6% 49兆元 (%) 80 銀行理財業務(a) 70 60 3,000 50 30 40 2,000 20 1,000 30 20 10 10 0 0 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) (資料)国家統計局、銀行業監督管理委員会、信託業協会、 Windを基に日本総研作成 0 2010 11 12 13 14 15 (資料)中国人民銀行 16 (年/月) (図表3)政策金利と預金準備率 貸出基準金利(1年物) 預金基準金利(1年物) 預金準備率(大手金融機関、右目盛) (%) 7 (図表4)M2と名目GDP (%) 22 21 6 (兆元) 140 (%) 210 M2 名目GDP 120 200 M2/名目GDP(右目盛) 100 190 80 180 60 170 40 160 20 150 20 5 19 4 18 3 17 2 16 1 2010 15 11 12 (資料)中国人民銀行 13 14 15 16 (年/月) 0 140 2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (資料)中国人民銀行、国家統計局 【ご照会先】調査部 副主任研究員 関辰一 ([email protected] , 03-6833-6157) 15 (年) 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 17 16 15 14 13
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