No.2016-046 2017年1月11日 http://www.jri.co.jp 米国シェールオイル生産と原油価格の行方 ~ 原油価格が50ドル台半ばを上回れば、増産加速で上値抑制圧力に ~ (1)米国では、2016年春先の原油価格の底入れを受け、16年6月以降、石油掘削設備(リグ)稼働数が 増勢に転化(図表1)。こうしたなか、原油生産量(アラスカおよびメキシコ湾を除くベース、同生 産量の約7割がシェールオイル)も足許で増産に転じつつある状況(図表2)。 (2)ただし、米国の主なシェールオイル生産地域のリグ稼働数をみると、恵まれた地質構造を有し、生 産コストが相対的に低いとされるパーミアン地域で大きく持ち直している一方、他の生産地域の持ち 直しは限定的(図表3)。今後のシェールオイルの増産ペースをみるうえでは、原油価格の上昇とと もに、リグ稼働数の回復がこれらの地域にも波及していくかが焦点に。 (3)シェールオイルの主要生産地域のひとつであるナイオブララを管内に有するカンザスシティ連銀の 調査によると、エネルギー企業の採算水準は、技術革新による生産性の向上やコスト削減などを反映 して、2016年入り以降、50ドル台前半まで低下(図表4)。このため、原油価格が50ドル台半ばを上 回る水準まで持ち直せば、パーミアン地域以外でのシェールオイル生産にも弾みがつく可能性。 (4)以上を踏まえ先行きを展望すると、OPEC加盟国やロシアなどによる減産が着実に進めば、原油 価格は現行水準(50ドル台前半)から上振れると期待される一方、同時にシェールオイルの増産を促 す公算が大。米国での供給余力が大きいだけに、原油価格の上昇ペースは緩やかにとどまる見通し。 (図表2)米国の原油生産量(除くアラスカ・メキシコ湾) (図表1)原油価格と米国の石油リグ稼働数 (基) 石油リグ稼働数(左目盛) 2,000 (ドル/バレル) WTI原油先物価格(3ヵ月先行、右目盛) 120 1,800 (万バレル/日) 800 EIA見通し (2017年1月時点) 750 1,600 100 1,400 700 1,200 80 1,000 800 60 600 40 550 20 500 2013 600 400 650 EIA見通し (2016年1月時点) 200 0 2013 14 15 16 17 (年/週) (資料)Bloomberg L.P.、Baker Hughes パーミアン 600 イーグルフォード 15 (ドル/バレル) バッケン 400 ナイオブララ 80 79 70 62 18 (年/月) 60 60 300 17 採算水準(レンジ) 採算水準(平均) WTI原油先物価格実績(月中平均) 100 90 500 16 (図表4)エネルギー企業の採算水準 (カンザスシティ連銀調べ) (図表3)主なシェールオイル生産地域の石油リグ稼働数 (基) 14 (資料)EIA "Short-Term Energy Outlook" 51 53 16年 3月 9月 50 200 40 100 30 2014年 9月 0 2013 14 15 16 17 (年/週) (資料)Baker Hughes、EIAを基に日本総研作成 (注)Baker Hughesが公表する石油リグ稼働数を、EIAの"Drilling Productivity Report"における地域分類で再集計したもの。 15年 3月 9月 17年 1月 (調査年月) (資料)Bloomberg L.P.、 Federal Reserve Bank of Kansas City "Energy Survey" (注)カンザスシティ連銀管内に拠点または本社があるエネル ギー企業を対象としたアンケート調査の結果。 【ご照会先】調査部 副主任研究員 藤山光雄(03-6833-2453、[email protected])
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