Market Flash 投資家は何を織り込んでるのか 2016年2月9日(火) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】~フランス:予想外に成長加速~ ・1月フランスBDFビジネスセンチメント指数は101と市場予想(99)に反して12月(100)から改善。年 初からの金融市場の混乱、新興国経済に対する不安をよそに堅調な結果となった。テロの影響が沈静化し つつあることが一因か。仏中銀は1Qの成長率見通しを前期比+0.4%とした。 115 仏 BdFビジネスセンチメント 110 105 100 95 90 85 10 11 12 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 14 15 16 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は大幅続落。NYダウは177㌦安で引けたが、一時は400㌦超の下落に見舞われた。天然ガス 開発大手に対する資金繰り懸念がエネルギー株急落を招くと、同部門へのエクスポジャーが不良債権化す るとの懸念から金融株の売りが誘発された。金融株に関しては、ここもと俄かに浮上している利下げ・マ イナス金利観測も重石になっている。日銀のマイナス金利導入以降、FED高官のインタビューでは記者 から導入の可能性について質問が相次いでいる。欧州株も大幅下落。 ・前日のG10 通貨はJPYが最強でそれにマイナス金利通貨(CHF、EUR、DKK)が続いた。反対にプラス金利通 貨(GBP、NOK、CAD)は総じて軟調で典型的なリスクオフ。USD/JPYは115前半まで下げ足を強めた。 ・前日の米10年金利は1.748%(▲8.7bp)で引け。原油安・欧米株安で金利低下。欧州債市場はコア堅調、 GIPS軟調。独10年金利が0.218%(▲7.8bp)で引けたほか、イタリア(1.678%、+12.3bp)、スペイン (1.752%、+11.0bp)は大幅に金利上昇。対独スプレッドは大幅にワイドニング。 【国内株式市場・経済指標・注目点】 ・日本株はUSD/JPY急落、欧米株安に追随して大幅下落。 ・昨日発表の1月景気ウォッチャー指数は現状が46.6と12月から2.1pt悪化。家計(47.7→45.6)、企業 (48.9→45.9)、雇用(55.1→54.8)が軒並み低下した。一方、先行きは49.5へと好転して6ヶ月ぶりの 水準を回復。家計(47.2→48.8)、企業(48.2→49.2)が大きく改善して雇用(55.2→54.4)の軟化を補 った。調査期間は1月25日から月末。コメントでは、気温低下による季節モノの販売復活を好感する声や、 春節の観光需要に期待する声が目立った反面、株価下落が消費の逆風になっているとの指摘があった。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 景気ウォッチャー調査 65 60 先行き 55 50 45 40 現状 35 30 25 10 11 12 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 14 15 16 ・ここへ来て、投資家を恐怖に晒しているのは中国不安、原油安も去ることながら米経済に対する不安だ。 こうした局面は何度も経験しているが、今回の対象は「減速」ではなく「後退」なので根が深い。米経済 に対する見方は、11-12月雇用統計NFPが異常なほど強かったため、数週間前まではその不安は封じ込め られていた。しかしながら、予想どおりとはいえ、GDP(4Q)が僅か前期比年率+0.7%に落ち込み、 1月雇用統計でNFPが減速したことによって、強気派をサポートするデータがなくなり、不安が表面化 してしまった印象だ。米指標に目を向けると、シンボリックなISM製造業指数が悪化基調にあるほか、 設備投資の先行指標である耐久財受注が不振を極めるなど、企業部門の苦境を示すデータが相次いでいる。 気掛かりなのは雇用に対する不安だ。企業業績の不振が長引くと当然のことながら企業は雇用に慎重な姿 勢を強める。そうしたなかで注目される新規失業保険申請件数は減少基調が完全に一服しており、最近は 増加基調にある。現時点では、それが労働市場軟化の始まりなのか、単に過去数ヶ月の反動なのか、判然 としないが、何れにせよ昨年央と比較して労働市場の量的改善ペースが緩んでいることは確かだ。ここか ら失業保険申請件数が30万件を突破するような事態となれば、景気後退懸念が一気に高まるが、反対に25 万件に向けて減少基調を辿るなら悲観論が修正されるだろう。筆者は①暖冬による12月までの雇用増に対 する反動②クリスマス商戦の前倒し実施とそれに伴う臨時雇用者の解雇が最近の失業保険申請件数を押し 上げているとみており、そうした特殊要因が剥落すれば投資家を安心させる領域に戻ると判断している。 ISM製造業景況指数 千 65 (10億㌦) 80 60 75 55 70 50 65 45 60 40 55 35 50 コア資本財受注 45 30 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 新規失業保険申請件数 (千件) (前年比、%) 雇用者数・新規失業保険申請件数 6 400 (前年比、%) -50 4 370 16 失業保険(右) -10 2 NFP 340 0 310 -2 -30 10 30 280 -4 250 50 R² = 0.64 70 -6 12 13 14 15 80 85 90 95 00 05 10 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比 16 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均 90 15 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 <主要株価指数> 日経平均※ NYダウ DAX(独) FTSE100(英) CAC40(仏) <外国為替>※ USD/JPY EUR/USD <長期金利>※ 日本 米国 英国 ドイツ フランス イタリア スペイン <商品> NY原油 NY金 終値 16333.35 16,027.05 8,979.36 5,689.36 4,066.31 115.26 1.1205 0.008 1.748 1.412 0.218 0.593 1.678 1.752 (円) 17100 17000 16900 16800 16700 16600 16500 16400 16300 16200 前日比 -670.95 -177.92 -306.87 -158.70 -134.36 -0.59 0.00 % % % % % % % 29.69 ㌦ 1197.90 ㌦ -0.037 -0.087 -0.147 -0.078 -0.040 0.123 0.110 % % % % % % % -1.20 ㌦ 40.10 ㌦ ※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。 (㌦) 16300 16200 16100 16000 15900 15800 15700 日経平均株価 10:39 現在 NYダウ平均株価 USD/JPY 118.5 117.5 116.5 115.5 114.5 (出所)Bloomberg 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
© Copyright 2025 ExpyDoc