わざわざ「さらに金利を引き下げる」と書いた 藤代 宏一

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わざわざ「さらに金利を引き下げる」と書いた
2016年2月1日(月)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~GDP:ヘッドラインは減速も消費はまずまず~
・米GDP(4Q)は前期比年率+0.7%と市場予想(+0.8%)に概ね一致。個人消費(+3.0%→+2.2%)
がやや減速したほか、設備投資(+3.7%→+0.4%)が急減速。純輸出(寄与度▲0.5%)も2四半期連続
でマイナス寄与と冴えない。住宅投資は+8.2%と高い伸びが続いたものの、全体を補うには力不足。もっ
とも、在庫(寄与度▲0.5%)は2四半期連続のマイナス寄与で在庫調整の進展を窺わせるほか、消費は予
想対比でヘッドラインほど弱い印象はなかった。
・1月ミシガン大学消費者信頼感指数は92.0と速報値から1.3pt下方修正された。
・シカゴPMIは55.6と12月(42.9)から急反発。
・1月ユーロ圏CPIは前年比+0.4%と市場予想に一致。ベースエフェクトによってエネルギー物価(▲
5.8%→▲5.3%)の下落幅が縮小したほか、コア財(+0.5%→+0.7%)、コアサービス(+1.1%→+
1.2%)が加速、コア物価は+1.0%と上昇率が加速。
(寄与度、%)
米 GDP寄与度
(前年比、%)
5
5
ユーロ圏CPI
4
3
3
1
コア
2
-1
1
-3
-5
2010
設備投資
住宅投資
政府支出
在庫
純輸出
個人消費
2011
2012
2013
2014
0
総合
-1
08
09
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
2015
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。日銀が予想外にマイナス金利を導入すると日本株を中心にアジア株が上昇。欧州株
がその流れを引き継ぐと米株現物もラリー。WTI原油は小幅ながら4日続伸して33.62㌦(+0.4㌦)で
引けた。OPECとロシアの協調減産を巡る期待が意識されている模様。
・前日のG10 通貨はJPYが最弱で、それにDKK、EUR、CHF、SEKといったマイナス金利通貨が続いた。その反
面CAD、NZD、AUDなど資源国通貨が堅調。日銀マイナス金利によってUSD/JPYは一時122を窺う場面もあった。
・前日の米10年金利は1.921%(▲5.8bp)で引け。日銀の追加緩和を受けたJGBラリーに追随した後、米
雇用コスト指数が前年比+2.0%と伸び悩むのを確認すると一段と金利低下。欧州債市場も総じて堅調。独
10年金利が0.325%(▲7.9bp)で引けたほか、イタリア(1.415%、▲9.9bp)、スペイン(1.512%、▲
11.0bp)も金利低下。対独スプレッドはタイトニング。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【国内株式市場・経済指標・注目点】
・日本株は日銀の追加緩和に対する初期反応が継続するなか、買い優勢。
・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の声明文(次項に貼付)で注目すべきは、(1)の「金利」:
マイナス金利の導入(賛成5反対4)という部分に『金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマ
イナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる』と追加緩和の可能性を明記した点
だ。日銀が「緩和手段の出尽くし感」が市場で広がることを懸念していたのは容易に想像が付くが、それ
を払拭するため、わざわざ声明文に明記したのは黒田日銀らしい演出と言える。マイナス金利導入で先行
したECB、スイス中銀、スウェーデン・リクスバンクに追随する意図があるとみられ、今後、追加緩和
の必要性(主に円高)が生じた場合はマイナス金利拡大をするとのコミットだろう。
・ただ、従来の量的・質的金融緩和に相当する部分、すなわち国債購入、ETF購入が据え置かれるとは限
らない。長期国債の買い入れについては、それが「限界に近づいている」との見方が多い一方で、「まだ
まだ買える」との見方が根強いのも事実。当然のことながら日銀は後者の立場を貫いており、黒田総裁の
発言もこれまでのところ全くぶれていない。今回の緩和措置発表後、市場関係者の間で「国債・ETFの
増額が限界にきてる」との見方が強まったように感じられるが、筆者はその見方に賛同しない。次回以降
の追加緩和がマイナス金利のみとは限らないということだ。
<主要株価指数>
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
終値
17833.33
16,466.30
9,798.11
6,083.79
4,417.02
121.24
1.0847
0.066
1.921
1.560
0.325
0.636
1.415
1.512
(円)
18000
17900
17800
17700
17600
17500
17400
前日比
315.03
396.66
158.52
152.01
94.86
(㌦)
16500
16400
16300
16200
16100
16000
0.10
0.00
%
%
%
%
%
%
%
33.62 ㌦
1116.40 ㌦
-0.034
-0.058
-0.110
-0.079
-0.098
-0.099
-0.110
%
%
%
%
%
%
%
0.40 ㌦
0.00 ㌦
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
123.0
122.0
121.0
120.0
119.0
118.0
117.0
日経平均株価 12:30 現在
NYダウ平均株価
USD/JPY
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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(備考)日銀HPより転載
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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