日本株の独立 ~米国離れが鮮明に~ 藤代 宏一

Market Flash
日本株の独立
~米国離れが鮮明に~
2015年4月9日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~FOMC議事録:無風通過~
・3月FOMC議事録は新味に乏しい内容。3月雇用統計発表前の議論のため評価は難しいが、数人の参加者が
6月の利上げを主張していたことが明らかになった一方、2人の参加者が2016年の利上げ開始を主張。そ
の他では、既往のUSD高が純輸出減少を通じて成長率を下押しする可能性について言及された。市場はやや
タカ派な議事録として受け止めたようだが、トレンド変化には繋がらないだろう。
・2月独製造業受注は前月比▲0.9%と市場予想(+1.5%)に反して減少したが、前月分は大幅に上方修正
(▲3.9%→▲2.6%)された。国内向けが前月比フラットだったのに対して海外向けが▲1.6%と弱かった。
元来、振れの大きい統計で過去分の修正も大きいため基調が把握しづらいが、PMI新規受注が3月に
53.3まで伸びを高めていることを踏まえると、今回の弱さにはやや違和感が残る。製造業生産が下振れリ
スクに晒されていることに変わりはないが、受注統計が示したほど実際の製造業生産は減速しないだろう。
・2月ユーロ圏小売売上高は前月比▲0.2%、前年比+3.0%となり、前月比では5ヶ月ぶりに減少。もっと
もこれは1月の反動減によるところが大きく、均してみれば好調な推移となっている。3ヶ月前比年率で
は+6.8%と統計開始以来最高のモメンタム、6ヶ月前比年率では+2.2%と2007年4月以来の強さを記録
しており、消費者信頼感の著しい改善と整合的な動きとなっている。
(%)
60
40
独 製造業受注・PMI新規受注
PMI新規受注
(右)
0
70
3
-5
-10
60
20
消費者信頼感
-15
0
-20
ユーロ圏消費者信頼感・小売売上高 (前年比、%)
4
40
-2
-30
-40
-60
-1
-25
製造業受注
-35
30
-3
小売売上高(右)
-40
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 製造業受注は3ヶ月前比年率
1
0
-20
50
2
-4
-5
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 小売売上高は3ヶ月平均
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅反発。原油価格急落が重石となるも全体としては堅調。他方、欧州株は反落。
・前日のG10通貨はAUD、NZDの強さが目立った一方、EURが軟調。USDとJPYの強さは中位程度。USD/JPYは木
内委員のTapering提案を受けて小幅低下したものの、その後は切り返し102を回復。
・米10年金利は+2.0bpの1.905%。FOMC議事録に対する反応は限定的。他方、欧州債市場はコア国中心に堅
調。独10年金利は▲2.3bp、0.163%と既往最低を更新。
【国内株式市場・経済指標他】~景気ウォッチャー:要割引~
・日本株は米株高、USD/JPY上昇を受けて高寄り後、もみ合い。
・昨日発表の3月景気ウォッチャー調査は「現状」が52.2と前月(50.1)から改善したほか、「先行き」も
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
53.4と前月から0.2pt改善し、それぞれ消費増税後の最高付近に位置した。雇用所得環境の改善というベー
スに既往のガソリン安・株高という追い風が加わったことで
マインドが改善した模様だが、統計のクセには若干の注意が
65
必要。3月調査は次年度への期待が込められてしまうためか、
60
強めにでる傾向があるからだ。2000年の統計開始以来3月調
55
先行き
50
査で現状指数が改善しなかったのは東日本大震災に見舞われ
45
た2011年のみ。参考系列として公表されている季節調整値は
40
48.0と前月から2.7pt悪化している。季節調整の不完全さと実
35
際にマインドが改善したことを併せて考えると、ヘッドライ
景気ウォッチャー調査
現状
30
25
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
ンの改善は要割引だ。
13
14
15
【注目点】
・ここ2ヶ月の間に発表された米指標は総じて軟調。3月雇用統計を筆頭にISM製造業、耐久財受注、消
費統計、鉱工業生産が軒並み市場予想を下振れるなど壊滅状態。それを映じて、市場予想との乖離を指数
化した米エコノミックサプライズ指数は一時、債務上限問題に苦しんだ2011年8月と同水準まで落ち込だ。
本来、ハイベータ日本株はそうした局面で米国株をアンダーパフォームしつつ大幅下落する傾向がある。
しかしながら、今次局面では米指標が軒並み軟化するのを尻目に日本株は底堅さを保っており、TS倍率
(TOPIX/S&P500)とエコノミックサプライズ指数の乖離が鮮明にな
っている。その一因として考えられるのが、日米株におけるエネル
ギーセクターのウェイトの差。米国株はエネルギーセクターのウェ
イトが日本よりも高いため、原油価格下落の“負の影響”が大きな
インパクトをもたらすのに対して日本株は原油価格下落が好感され
る銘柄が数多く存在する。これが日本株の好パフォーマンス(対米
国株)に繋がっている可能性があろう。原油価格下落の影響が一巡
するまで日本株のアウトパフォームが続くのではないか。米国から
日本への所得移転と換言することもできる。
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
120.32
1.0762
0.371
1.905
1.579
0.163
0.445
1.248
1.196
(円)
20000
前日比
108.68
27.09
-87.66
-24.36
-14.33
50.42 ㌦
1203.10 ㌦
0.007
0.020
-0.004
-0.023
-0.022
0.007
0.017
TS倍率(右)
60
40
0
0.65
-20
-40
0.6
-60
サプライズ指数
-80
13/05
0.55
13/09
14/01
日経平均株価
14/05
14/09
15/01
9:50 現在
19800
19700
(㌦)
18000
%
%
%
%
%
%
%
NYダウ平均株価
17900
17800
120.5
USD/JPY
120.0
-3.56 ㌦
-7.50 ㌦
119.5
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
119.0
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
0.75
0.7
20
19900
0.19
-0.00
%
%
%
%
%
%
%
0.8
80
(備考)Bloombergにより作成
<主要株価指数>
終値
19898.49
17,902.51
12,035.86
6,937.41
5,136.86
エコノミックサプライズ指数
100