Market Flash 中銀依存度が低下 2016年3月25日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】~コア資本財受注:ISM新規受注は上向きだが~ ・2月米耐久財受注は前月比▲2.8%と市場予想に概ね一致したものの、前月分は下方修正された(+4.7% →+4.2%)。予想されたとおり民間航空機(▲27.0%)が落ち込んだ一方、自動車(+1.2%)が増加。 除く輸送用機器ベースでは▲1.0%と弱く、前月分も下方修正された(+1.7%→+1.2%)。最重要項目の コア資本財受注は前月比▲1.8%と市場予想(▲0.5%)を下回り、前月分も下方修正された(+3.4%→+ 3.1%)。3ヶ月前比年率では▲9.8%へと減速し、前年比では13ヶ月連続のマイナス。先行指標のISM 新規受注は2ヶ月連続で50を上回っているものの、設備投資の回復シナリオが描きにくい状態が続いてい る。設備投資の一致指標であるコア資本財出荷は前月比▲1.1%と2ヶ月連続で減少した。 ・新規失業保険申請件数は26.5万件と市場予想に概ね一致して前週(25.9万件)から僅かに増加。4週移動 平均は26.0万件と景気後退後の最低を維持。企業収益の圧迫が雇用に波及するとの懸念は今のところ杞憂 に終わっている。 (3ヶ月前比年率、%)コア資本財受注 新規失業保険申請件数 (千件) 40 30 400 20 370 10 0 340 -10 310 -20 280 -30 250 -40 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均 12 16 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均 ・3月米サービス業PMI(Markit)は51.0と2月から1.3pt改善。総合PMIは51.1へと2月から1.1pt改 善。リセッション懸念を喚起した2月データと比較すると、幾分好転の兆しがみられる。 65 (PMI) 65 米 PMI 米 総合PMI・GDP (前期比年率、%) 7.5 総合PMI 60 サービス業 55 50 60 5 55 2.5 50 0 製造業 実質GDP(右) 45 45 10 11 12 (備考)Markitにより作成 13 14 15 -2.5 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Markit,Thomson Reuters GDPは移動平均でスムージング 16 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は横ばい。イースター休暇を控え動意に乏しい展開。他方、欧州株は総じて軟調。WTI原 油は39.46㌦(▲0.33㌦)で引け。原油相場は朝方に下落していたものの、稼動リグ数が372と前週から15 基減少したことを受けて下落幅縮小。 ・前日のG10 通貨はGBPが最強でそれにUSDが続き、反対にJPYが最弱でそれにSEKが続いた。もっともイース ター休暇を控えて動意に乏しく、主要通貨は全般的に動意に乏しかった。USD/JPYは112後半へ水準を切り 上げ、EUR/USDは1.11半ばまで水準を切り下げた。 ・前日の米10年金利は1.900%(+2.1bp)で引け。株式市場と同様に動意に乏しかったが、原油価格が当初 の下落を埋めるのに合わせて金利上昇。他方、欧州債市場はコア堅調、周縁国まちまち。ドイツ10年金利 が0.180%(▲1.4bp)で引けた一方、イタリア(1.302%、+0.7bp)、スペイン(1.524%、▲0.6bp)が まちまち、ポルトガル(2.963%、+3.5bp)は金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはワイドニン グ。 【国内株式市場・経済指標】 ・日本株は欧米市場の連休を控えて動意に乏しい展開となっている。 ・2月コアCPIは前年比±0.0%と市場予想に一致して1月から変わらず。食料品(+1.9%)の上昇をエ ネルギー(▲16.0%)の下落が打ち消す構図に変化はみられない。他方、コアコアCPI(除く食料・エ ネルギー)は+0.8%へと0.1%pt加速。また、日銀が重視する新型コア(除く生鮮食品・エネルギー、当 社試算)は前年比+1.1%と8ヶ月連続で1%超の伸びを確保。2%には届かないにせよ「物価の基調は改 善している」との日銀の見解をサポートする数字だろう。 CPI (前年比、%) 3 日銀新型コア (除く生鮮・エネルギー) 2 1 0 -1 コアCPI コアコアCPI(除く生鮮) (除く食エネ) -2 -3 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考Thomson Reutersにより作成 消費税の影響は2%として除去 【注目点】 ・4月(27・28日)の金融政策決定会合では金融政策の現状維持が決定されよう。一部で予想されている追 加緩和は見込まれない。上述のとおり、新型コアCPIがまずまずの伸びを確保しており、円高・株安も 一服しつつあるため、市場を刺激する理由に乏しい。最近の円高(特に前年比でみた場合)や原油価格の低 迷を受けて、4月の展望レポートで物価目標の達成時期が再び後ろ倒しされる可能性はあるものの、マイ ナス金利の評判が予想外に悪く、その拡大が難しいという事情もあって、様子見姿勢を貫くと予想される。 なお、3月会合では、最重要項目である予想物価上昇率の判断を「やや長い目でみれば全体として上昇し ているとみられるが、このところ弱含んでいる」と下方修正して2%目標未達の布石が打たれている。 ・筆者は引き続き7月(マイナス金利拡大)と11月(マイナス金利拡大+長国・ETF買増)の追加緩和を 予想しているが、世界的な「金融政策限界論」の浮上を受けて中銀依存度が低下している現状を踏まえる と、追加緩和なしの可能性が高まっていると判断される。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 <主要株価指数> 日経平均※ NYダウ DAX(独) FTSE100(英) CAC40(仏) <外国為替>※ USD/JPY EUR/USD <長期金利>※ 日本 米国 英国 ドイツ フランス イタリア スペイン <商品> NY原油 NY金 終値 16927.07 17,515.73 9,851.35 6,106.48 4,329.68 (円) 17100 前日比 34.74 13.14 -171.58 -92.63 -94.30 113.19 1.1157 日経平均株価 11:15 現在 17000 16900 16800 (㌦) 17600 0.29 -0.00 NYダウ平均株価 17500 -0.087 1.900 1.453 0.180 0.537 1.302 1.524 % % % % % % % 39.46 ㌦ 1221.60 ㌦ -0.003 0.021 0.004 -0.014 -0.010 0.007 -0.006 % % % % % % % -0.33 ㌦ -2.40 ㌦ ※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。 17400 17300 113.5 USD/JPY 113.0 112.5 112.0 (出所)Bloomberg 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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