Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
米企業が減益なら円高もいたしかたない
2016年4月11日(月)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~英生産:モメンタム悪化~
・2月英鉱工業生産指数は前月比▲0.3%と市場予想(+0.1%)に反して減産。エネルギーが+2.4%の増産
となった反面、製造業が▲1.1%の大幅減産。製造業生産のトレンドは昨年後半から下方屈折、3ヶ月前比
年率では▲2.7%にモメンタムが鈍化している。速報性に優れたPMIは3月も芳しくない状態が続いてお
り、生産活動の停滞を示唆している。
(%)
15
英 鉱工業生産指数
10
65
英製造業 PMI
製造業生産
60
5
0
55
-5
-10
50
鉱工業
-15
45
-20
40
-25
07
08
09
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成。3ヶ月前比年率
15
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
16
14
15
16
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅反発。原油在庫の減少を手掛かりに原油先物が急伸すると、エネルギー関連銘柄に買
いが入った。もっとも投資家センチメントは引き続き神経質で上値は限定的。欧州株も全面高。WTI原
油は39.72㌦(+2.46㌦)で引けた。ベーカー・ヒューズ公表の稼動リグ数減少が追い風となった。
・前日のG10 通貨はUSDが全面安。USD/JPYは日本政府による口先介入もあって日本時間に109を回復した後、
欧州時間入り後からほぼ一貫して下落、108割れを窺う展開となった。原油価格上昇を受けて資源国通貨が
全般的に買われるなか、欧州通貨も堅調でEUR/USDは1.14を突破。ダドリー・NY連銀総裁は、物価や経済
見通しの下振れリスクを指摘したうえで「金融政策の正常化は慎重で緩やかなアプローチが適切だ」とし
てハト派姿勢を強調。なお、歴代FRB議長(ボルカー、グリーンスパン、バーナンキ、イエレン)が一
堂に会する討論会が注目されたが、イエレン議長が目先の金融政策に言及することはなかった。
・前日の米10年金利は1.717%(+2.8bp)で引け。週前半のラリーの反動が意識されるなか、原油価格上昇
に歩調を合わせて米債は売り優勢。欧州債市場はコア国横ばい、周縁国堅調。ドイツ10年金利が0.095%
(+0.6bp)で引けた一方、イタリア(1.311%、▲7.8bp)、スペイン(1.520%、▲8.4p)、ポルトガル
(3.348%、▲7.1bp)が金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
【国内株式市場・経済指標】
・日本株は欧米株高に追随できず安寄り。USD/JPY下落が嫌気され、業績不安が台頭。
・8日発表の景気ウォッチャー調査によると現況指数は45.4と市場予想に概ね一致して2月から0.8pt改善。
他方、先行きDIは46.7と2月から1.5pt軟化して市場予想(48.3)を大幅に下回った。最近の株価下落、
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
2017年4月の消費増税、円高による外国人観光客の減少懸念が影響している模様。なお、景気ウォッチャ
ー指数の先行き判断DIは内需株の投資判断に有効であるとされており、実際、東証2部指数と密接に連
動する。今回の結果は最近の株価下落を正当化しているようだ。
・8日発表の3月消費者態度指数は41.7と2月から1.6pt改善。市場予想(40.5)を上回った。指数を構成す
る4項目、「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久財の買い替え判断」が揃って改善
したが、1月の水準を取り戻すことはできなかった。株価低迷によるマインドの冷え込みが影響している
だろう。
景気ウォッチャー調査
(%)
25
25
20
20
東証2部指数
(3ヶ月前比、右)
15
15
10
5
0
0
-5
40
-5
-10
-20
45
10
5
-15
消費者態度指数
50
-10
景気ウォッチャー
先行き判断DI
(3ヶ月前差)
-15
-25
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
-20
13
35
14
15
16
30
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
15
16
・2月機械受注統計によるとコア機械受注は前月比▲9.2%と市場予想(▲12.0%)に概ね一致して反落。製
造業が▲30.2%と大幅に減少した一方、非製造業が+10.2%と堅調。1月は鉄鋼業からの大型受注により
+15.0%と強く伸びていたため、その反動がでた形。3ヶ月平均では+1.7%と緩やかに増加しており、昨
年4-6月期の水準を回復。金融市場の混乱をよそに設備投資は底堅さを維持している。資本財輸出の先行
指標となる「外需」は+6.3%と4ヶ月ぶりに増加。2014年のピーク水準から半分近く減少しているため、
楽観はできないが、一先ず明るい兆候だ。ただし、ドイツの製造業受注でも「海外向け」の弱さが際立っ
ている点は注意。グローバルに設備投資が減退している可能性があるだろう。
(10億円)
機械受注
(10億円)
1800
1000
コア
900
1400
800
1000
700
外需(右)
600
500
600
200
08
09
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均
15
16
・11日の非鉄金属大手を皮切りに米企業の決算発表が本格化する。S&P500採用銘柄の1Q利益は前年比▲
7.6%が見込まれており、金融危機後の最低を更新する見込み。ドル高・原油安で米企業の収益は圧迫され
ており、3四半期連続の減益が不可避な状況。暦年では2015年に減益に陥った後、2016年は小幅ながら増
益を確保できる見込みだが、それに黄色信号が灯るようだと経営者が労働コスト削減に舵を切る可能性が
あり、景気後退確率が上昇する。注意すべきシナリオとしては、FEDがタカ派姿勢に傾斜、或いはサプ
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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ライズ的に利上げに踏み切りドル高が進行、収益圧迫によって企業の採用意欲が衰え、労働市場が軟化す
ることだ。米企業収益は世界経済の回復経路の出発点であり、それがドル安を欲している状況にあるなら
ば、ドル高を誘発するような政策・イベントはリスク要因として考えておくべきだろう。
S&P500 増益率
25 (%)
20
15
実績
10
5
0
-5
-10
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q 通年 通年
2015
2016
2017 2016 2017
(備考)Thomson Reutersにより作成
<主要株価指数>
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
終値
15599.07
17,576.96
9,622.26
6,204.41
4,303.12
(円)
15800
前日比
-222.45
35.00
91.64
67.52
57.21
108.01
1.1403
日経平均株価
9:27 現在
15700
15600
15500
15400
(㌦)
17800
-0.05
0.00
NYダウ平均株価
17700
-0.080
1.717
1.363
0.095
0.433
1.311
1.520
%
%
%
%
%
%
%
39.72 ㌦
1242.50 ㌦
-0.005
0.028
0.035
0.006
-0.004
-0.078
-0.084
%
%
%
%
%
%
%
17600
17500
2.46 ㌦
6.30 ㌦
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
110.0
109.5
109.0
108.5
108.0
107.5
107.0
USD/JPY
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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