増えゆく製品-定期的なダイエットのすすめ-

みずほ総研コンサルティングニュース 2015.3
Mizuho Research Institute Consulting News
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増えゆく製品-定期的なダイエットのすすめ-
~中小企業における製品絞り込みの実践的手順~
1.製品数が増えていく
「消費者ニーズの多様化」への対応については、さ
まざまな分野でその重要性が唱えられている。
大企業
と比較して経営資源に制約のある中小企業は、
ニーズ
に対応した尖った製品を作ると同時に、重要性の低い
製品を絞り込む必要がある。
一般的に、製品絞り込みは、「やらない」ことへの
インセンティブが強く働く。「業績への影響」「営業
からの反発」などはもちろん、そもそも「絞り込むた
めの判断基準がない」といったことが要因となって先
送りされ、製品数が増加していく。その結果、製造効
率は悪化、管理も複雑化し、業務もコストも増加して
いく。そうやって、いつのまにか、収益性が悪化して
いる事例が多く見受けられる。
今回は、中小企業が抱える問題のなかから、「製品
の絞り込み」にフォーカスし、どのように必要な製品
を選択、集約化していくべきかについて考える。外部
環境の影響を強く受ける消費財メーカーA社の事例
を紹介しながら、ポイントを説明する。
2.製品絞込みにおけるポイント
近年マーケティングなどにおいて、ビッグデータの
活用が流行しているが、中小企業にはそれを扱う人的
資本も、金銭的資本も不足していることが多い。
A社の事例では、「自社のデータ」を徹底活用する
ことで製品の選択と集約化を行った。
業種や取扱製品
によって、使用すべきデータは異なるが、製品絞り込
みにおけるポイントは、大きく分けて5つ挙げられる。
以下では、そのプロセスに沿って説明する。
(1)比較できる視点で情報を利用する
A社の事例に適用した視点は、主に以下の3つ。
①時系列で比較:売上、利益の成長性など
②競合との比較:同一カテゴリ内でのシェアなど
③必要な視点で比較:絞り込みによる効果など
目的によって③の「必要な視点」は異なる。A社の
ケースでは、製品絞り込みによる目的が「製造効率の
改善、管理コスト・廃棄ロスの削減」であったため、
その効果を「見える化」した。
(2)製品特性をもとに、自社と他社の製品を特徴づ
け、グループ化する
製品の特性をもとに、自社と他社の製品をグループ
化する。この際、自社と他社の売上などの定量情報を
グループ別に「見える化」する。競合の定量情報と比
較することによって、グループ内でのシェア争いや収
益性の違いなどを把握できるようになる。ただし、競
合データについては入手が容易でない。あるいは、有
料データを購入する必要があるといった場合がある。
(3)グループ別に製品のマッピング図を作成する
グループ別に製品をマッピングした2軸のグラフ
を作成する。それによって、自社と他社の競合状況を
一目で確認できる。マッピングの軸は、顧客が価値を
感じると想定される項目を選定する。製品カテゴリに
よっては特徴が大きく異なり、同じ軸にならない場合
もある。そのため、軸の切り口を変えて検討できるよ
うに、複数の価値項目を設定しておくと便利である。
(4)全体を俯瞰して比較を容易にするため、絞り込
みの視点や根拠となるデータを1つのシート
に落とし込む
製品絞り込みは、最終的には製品戦略や営業戦略な
どに従うため、総合的な判断が必要となる。
そのため、
判断を行う際の負担軽減や、検討項目の抜け漏れ防止
のために、検討に必要な視点や情報を1つのシートに
まとめることが望ましい。
(5)最終的な損益への影響を「見える化」する
製品を絞り込むことで考えられる損益への影響を
シミュレーションする。ここでは、損益の数値を正確
に予測することが目的ではない。製品絞り込みの影響
を把握したうえで、その影響を最小限にするにはどの
ような施策が必要かを検討し、全社としての製品戦略
や営業戦略に活用するための情報として位置づける
ことが重要である。
3.最後に
これまでの経験によると、製品の絞り込みには、少
なくとも2つの大きなハードルが発生する。
1つめは、製品を絞り込むための判断軸を選定する
ことが難しいこと。メリット・デメリットを含め、絞
り込みによる影響が多方面に及ぶためである。
2つめは、利害関係者が多く、全社的な納得感を得
ることが難しいこと。代表的な例としてに挙げられる
のは、
製造部門と営業部門のコンフリクトである。
「言
うは易く行うは難し」だが、ぜひ実行をして収益改善
のツールとして活用していただければ幸いである。
みずほ総合研究所 コンサルティング部
コンサルタント 温井博之
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