1月鉱工業生産

経済分析レポート
2015 年 2 月 27 日
全5頁
Indicators Update
1 月鉱工業生産
足下は堅調、計画は慎重
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 橋本 政彦
[要約]

2015 年 1 月の生産指数は、前月比+4.0%と 2 ヶ月連続の上昇となった。ヘッドライン
が市場コンセンサス(同+2.7%)を上回る高い伸びとなったことに加えて、内訳を見
ても幅広い業種で生産が増加するポジティブな内容であった。生産指数の 3 ヶ月移動平
均値は前月比+1.4%と 5 ヶ月連続の上昇、上昇幅は前月から拡大しており、2014 年 8
月を底に持ち直しの動きが続いてきた生産は着実に増加基調に向かっている。

製造工業生産予測調査では、2015 年 2 月の生産計画は前月比+0.2%、3 月は同▲3.2%
となった。過去数ヶ月間は強気の生産計画が示されてきたが、今回の結果では 3 月に向
けて生産の減速が見込まれており、足下の生産の強さとは対照的に先行きの計画につい
てはやや懸念が残る内容であった。

今回の製造工業生産予測調査は生産の減速が懸念される結果となったが、大和総研では
先行きの生産についても増加傾向が続くと見込んでいる。これまで緩やかな伸びに留ま
っていた輸出数量は、1 月には大幅に増加し、先行きの増勢加速を期待させる結果であ
った。海外経済の拡大による輸出の増加が生産を牽引すると見込んでいる。輸出の増加
を起点とした生産増、企業収益の改善は国内設備投資需要を喚起するとみられ、資本財
需要への波及も期待できるだろう。
鉱工業生産の概況(季節調整済み前月比、%)
鉱工業生産
コンセンサス
DIR予想
生産者出荷
生産者在庫
生産者在庫率
2014年
4月
▲2.8
5月
0.7
6月
▲3.4
7月
0.4
8月
▲1.9
9月
2.9
10月
0.4
11月
▲0.5
12月
0.8
▲5.0
▲0.5
▲1.6
▲1.0
3.0
4.0
▲1.9
2.0
3.4
0.7
0.9
▲2.2
▲2.1
0.9
8.6
4.4
▲0.7
▲6.0
0.6
▲0.4
0.8
▲1.4
1.1
4.2
1.0
▲0.7
▲4.3
2015年
1月
4.0
2.7
3.2
5.8
▲0.6
▲3.5
(注)コンセンサスはBloomberg。
(出所)Bloomberg、経済産業省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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2015 年 1 月の生産指数は 2 ヶ月連続の上昇、コンセンサスを上回る伸び
2015 年 1 月の生産指数は、前月比+4.0%と 2 ヶ月連続の上昇となった。ヘッドラインが市場
コンセンサス(同+2.7%)を上回る高い伸びとなったことに加えて、内訳を見ても幅広い業種
で生産が増加するポジティブな内容であった。生産指数の 3 ヶ月移動平均値は前月比+1.4%と
5 ヶ月連続の上昇、上昇幅は前月から拡大しており、2014 年 8 月を底に持ち直しの動きが続い
てきた生産は着実に増加基調に向かっている。
出荷指数は、資本財(前月比+10.3%)、耐久消費財(同+10.1%)の大幅増加を主因に前月
比+5.8%と 2 ヶ月連続の上昇となり、在庫指数も同▲0.6%と 2 ヶ月連続で低下した。この結
果、在庫率指数は前月比▲3.5%と、2 ヶ月連続で大幅に低下し、在庫調整にも進展が見られて
いる。
生産・在庫・在庫率、出荷指数財別内訳
出荷指数
生産・在庫・在庫率
(2010年=100)
(2010年=100)
160
140
在庫率指数
150
財別内訳
130
資本財
140
120
在庫指数
130
120
110
110
100
100
建設財
90
90
70
2008
生産財
80
80
生産指数
09
10
11
消費財
12
13
14
70
15 (年) 2008
09
10
11
12
13
14
15(年)
(注)生産指数の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業が生産を押し上げ
1 月の生産指数を業種別に見ると、全 15 業種中、13 業種が上昇した。生産全体への寄与度を
見ると、はん用・生産用・業務用機械工業(前月比+9.4%)、輸送機械工業(同+4.5%)、電
気機械工業(同+5.6%)による押し上げが大きかった。
はん用・生産用・業務用機械工業は、2014 年半ばから持ち直しの動きが続いている「半導体
製造装置」の生産が前月比+16.3%と大幅に増加したことが押し上げに寄与した。前月時点の
製造工業生産予測調査における計画(同+19.7%)を大きく下回った形だが、同業種では計画
に対して実績が下振れすることが多く、サプライズはない。輸送機械工業については、国内向
け、輸出向け双方の販売が持ち直す中、概ね前月時点の計画に沿う結果となった。電気機械工
業は、振れの大きい「一般用タービン発電機」の生産が前月比+77.5%と大幅に増加したこと
が押し上げに寄与した。
3/5
一方、パルプ・紙・紙加工品工業(前月比▲0.4%)、石油・石炭製品工業(同▲0.4%)では
生産が減少したが、減少幅は小幅に留まっており、増加基調の反転を示唆するような結果では
ない。
主要業種の生産推移
加工業種
(2010年=100)
予測 130
はん用・生産用
電気機械
・業務用機械
120
素材業種
(2010年=100)
112
鉄鋼
108
予測
金属製品
110
104
100
100
90
96
80
92
88
非鉄金属
84
2010
11
70
パルプ・紙
・紙加工品
化学(除く医薬品)
12
13
14
15
60
輸送機械
50
11
(年) 2010
電子部品
・デバイス
情報通信機械
12
13
14
15
(年)
(注)直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
製造工業生産予測調査は慎重な結果
製造工業生産予測調査では、2015 年 2 月の生産計画は前月比+0.2%、3 月は同▲3.2%とな
った。過去数ヶ月間は強気の生産計画が示されてきたが、今回の結果では 3 月に向けて生産の
減速が見込まれており、足下の生産の強さとは対照的に先行きの計画についてはやや懸念が残
る内容であった。2 月については、情報通信機械工業(前月比+4.3%)、化学工業(同+2.6%)、
紙・パルプ工業(同+3.5%)などで増産を見込む一方で、輸送機械工業(同▲1.6%)の減産
などにより全体としての増加幅は限定的となっている。3 月については、多くの業種が生産の減
少を見込んでおり、特にはん用・生産用・業務用機械工業(前月比▲7.3%)、電子部品・デバ
イス工業(同▲8.5%)、電気機械工業(同▲7.2%)、情報通信機械工業(同▲5.5%)などの加
工組立業種が軒並み大幅な減少を見込んでいる。
先行きの生産は増加傾向が続く見通し
今回の製造工業生産予測調査は生産の減速が懸念される結果となったが、大和総研では先行
きの生産についても増加傾向が続くと見込んでいる。これまで緩やかな伸びに留まっていた輸
出数量は、1 月には大幅に増加し、先行きの増勢加速を期待させる結果であった。米国で底堅い
景気拡大が続いていることに加えて、これまで低迷が続いてきた欧州経済でも明るい兆しが見
られており、海外経済の拡大による輸出の増加が生産を牽引すると見込んでいる。輸出の増加
を起点とした生産増、企業収益の改善は国内設備投資需要を喚起するとみられ、資本財需要へ
の波及も期待できるだろう。日銀短観等の企業アンケートでは、企業の設備投資に対して前向
4/5
きな姿勢が確認できることに加え、先行指標の機械受注も底堅い。また、家計の所得環境の改
善に加えて、原油価格下落による実質賃金の押し上げも追い風となり、消費財の需要も持ち直
しが続くとみられる。内・外需とも持ち直しに向かう中、生産は増加基調が続く見込みである。
輸出数量、出荷・在庫バランスと生産
鉱工業生産と輸出数量
(2010年=100)
(2010年=100)
130
120
50
115
40
120
110
鉱工業生産指数
(右軸)
110
105
100
100
90
95
90
80
輸出数量指数
70
60
2008
09
10
11
12
13
14
15
出荷・在庫バランスと生産
(前年比、%)
鉱工業生産指数
30
20
10
0
-10
-20
85
-30
80
-40
-50
75
(年) 2008
(注)鉱工業生産の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)内閣府、経済産業省統計より大和総研作成
出荷・在庫バランス
(1ヶ月先行)
09
10
11
12
13
14
15 (年)
5/5
主要産業の生産動向(季節調整値)
輸送機械
はん用・生産用・業務用機械
(指数×ウエイト)
(指数×ウエイト)
12
2.5
半導体・フラットパネル製造装置
乗用車
はん用機械器具部品
10
2.0
自動車部品
8
1.5
6
1.0
4
船舶・同機関
トラック
ボイラ・原動機
0.5
2
風水力機械・油圧機器
金属工作機械
0
2008
09
10
11
12
13
14
15(年)
0.0
2008
09
10
11
電子部品・デバイス
12
13
14
15
(年)
電気機械
(指数×ウエイト)
(指数×ウエイト)
5.0
2.0
4.5
4.0
1.6
3.5
1.4
3.0
1.2
2.5
民生用電気機械
開閉制御装置・機器
1.8
電子部品
1.0
2.0
集積回路
1.5
半導体部品
0.6
1.0
0.4
0.5
0.2
0.0
2008
09
10
11
12
回転電気機械
0.8
半導体素子
13
14
15(年)
配線・照明用器具
電池
0.0
2008
09
化学
10
11
12
13
14
15(年)
鉄鋼・非鉄金属・金属製品
(指数×ウエイト)
1.6
3.5
1.4
化粧品
3.0
(指数×ウエイト)
建築用金属製品
熱間圧延鋼材
鉄素製品
(含.鋼半製品)
1.2
2.5
1.0
2.0
有機薬品
プラスチック
1.5
0.8
0.6
1.0
0.4
0.5
石けん・合成洗剤・界面活性剤
石油系芳香族
0.0
2008
09
10
11
12
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
13
14
0.2
伸銅・アルミニウム圧延製品
0.0
2008
15(年)
建設用金属製品
非鉄金属鋳物
09
10
11
12
13
14
15(年)