1月鉱工業生産

経済分析レポート
2017 年 2 月 28 日 全 5 頁
Indicators Update
1 月鉱工業生産
前月比▲0.8%と 6 ヶ月ぶりの低下
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 前田 和馬
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

1 月の生産指数は前月比▲0.8%と、市場コンセンサス(同+0.4%)に反して低下した。
生産指数の低下は 6 ヶ月ぶりである。一方、1 月の出荷指数は同▲0.4%と 2 ヶ月連続
の低下、在庫指数は同+0.0%と横ばい、在庫率指数は同+1.7%と 2 ヶ月連続の上昇と
なった。生産と出荷ともに減少する結果となった。

1 月の結果については、中華圏の旧正月である春節の影響から、1 月の輸出数量が伸び
悩んだことが一部に影響したものと思われる。足下の増産基調に一服感がみられるもの
の、出荷水準の大幅な低下や在庫水準の上昇は伴っておらず、そこまで悲観的に見る必
要もないであろう。

製造工業生産予測調査によると、2 月、3 月の生産指数は前月比+3.5%、同▲5.0%と
一進一退の動きを見込んでいる。また、経済産業省が公表した先行き試算値については、
2 月は同+1.1%の増加となっている。

2017 年 4 月以降に関しては、生産は緩やかな拡大を見込んでいる。耐久消費財につい
ては、家電エコポイント導入時に購入された白物家電等が買い替えサイクルを迎えてい
ることに加えて、消費増税前の駆け込み等による需要先食いの悪影響が剥落しつつある
ことから、今後は底堅く推移することが見込まれる。また、外需についても、家計部門
を中心に底堅い米国経済をはじめとして、海外経済の回復が続いていくと考えられるこ
とから、緩やかに輸出は持ち直すであろう。
図表 1:鉱工業生産の概況(季節調整済み前月比、%)
鉱工業生産
コンセンサス
DIR予想
出荷
在庫
在庫率
2016年
4月
+0.5
5月
▲2.6
6月
+2.3
7月
▲0.4
8月
+1.3
9月
+0.6
10月
+0.0
11月
+1.5
12月
+0.7
+1.6
▲1.7
▲2.2
▲2.6
+0.4
+1.8
+1.7
+0.0
▲1.5
+0.7
▲2.4
+1.1
▲1.1
+0.3
▲3.2
+1.8
▲0.5
+1.1
+2.0
▲2.1
▲0.6
+1.0
▲1.6
▲5.6
▲0.4
+0.6
+1.6
2017年
1月
▲0.8
+0.4
+0.8
▲0.4
+0.0
+1.7
(注)コンセンサスはBloomberg。
(出所)Bloomberg、経済産業省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する
ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和
証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。
2/5
生産は前月比▲0.8%と 6 ヶ月ぶりの低下
1 月の生産指数は前月比▲0.8%と、市場コンセンサス(同+0.4%)に反して低下した。生産
指数の低下は 6 ヶ月ぶりである。一方、1 月の出荷指数は同▲0.4%と 2 ヶ月連続の低下、在庫
指数は同+0.0%と横ばい、在庫率指数は同+1.7%と 2 ヶ月連続の上昇となった。生産と出荷
ともに減少する結果となった。生産予測調査で見ると、2 月:同+3.5%、3 月:同▲5.0%とな
っている。
1 月の結果については、中華圏の旧正月である春節の影響から、1 月の輸出数量が伸び悩んだ
ことが一部に影響したものと思われる。電気機械工業や非鉄金属工業の実現率を見ると、過去
実績よりもマイナスに振れている。足下の増産基調に一服感がみられるものの、出荷水準の大
幅な低下や在庫水準の上昇は伴っておらず、そこまで悲観的に見る必要もないであろう。
図表 2:出荷・在庫・在庫率、生産指数財別内訳
生産指数
出荷・在庫・在庫率
財別内訳
(2010年=100)
(2010年=100)
120
在庫率指数
140
予測
130
115
資本財
120
建設財
110
110
100
105
90
在庫指数
80
100
生産指数
70
耐久消費財
95
60
出荷指数
90
12
13
14
15
16
50
17(年) 2008 09
10
11
12
13
14
15
16
17 (年)
(注)生産指数の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
全 15 業種中、12 業種が低下
1 月の生産指数を業種別に見ると、全 15 業種中、12 業種が低下した。なかでも、輸送機械工
業(前月比▲4.7%)、化学工業(除.医薬品)(同▲3.5%)の寄与度が大きい。輸送機械工業
については、1 月調査時点で同▲5.4%を見込んでいたため、予定通りの減産となった。ただし、
米国向け輸出において乗用車の増勢に頭打ち感が見られていることに留意する必要があろう。
化学工業(除.医薬品)については、美容液やファンデーションが全体を押し下げた。一方、
生産指数が上昇した業種は、電子部品・デバイス工業(同+5.7%)
、プラスチック製品工業(同
+0.9%)
、パルプ・紙・紙加工品工業(同+0.3%)の 3 業種であった。電子部品・デバイス工
業については、モス型半導体集積回路(メモリ)やアクティブ型液晶素子(中・小型)が生産
を増やしており、スマホ等の情報デバイス向けの電子部品が好調である。プラスチック製品工
3/5
業については、プラスチック製フィルム・シートやプラスチック製日用品・雑貨がそれぞれ全
体を押し上げた。
1 月の生産指数を財別に見ると、資本財は前月比▲0.5%、建設財は同▲0.5%、耐久消費財は
同▲3.9%となり、耐久消費財が大きく低下した。
生産計画は一進一退
製造工業生産予測調査によると、2 月、3 月の生産指数は前月比+3.5%、同▲5.0%と一進一
退の動きを見込んでいる。また、経済産業省が公表した先行き試算値(予測指数の結果に含ま
れる予測誤差について加工を行った値)については、2 月は同+1.1%の増加となっている。全
業種において 2 月は増産であるものの、3 月については、情報通信機械工業を除く全業種で減産
を見込む計画となっている。予測調査を業種別に見ると、電子部品・デバイス工業(2 月:同+
14.9%、3 月:同▲12.1%)
、電気機械工業(2 月:同+5.4%、3 月:同▲10.5%)、非鉄金属工
業(2 月:同+6.7%、3 月:同▲6.8%)等となっている。
図表 3:主要業種の生産推移
素材業種
(2010年=100)
予測
予測 140
112
108
加工業種
(2010年=100)
金属製品 鉄鋼
パルプ・紙
・紙加工品
130
はん用・生産用
・業務用機械
輸送機械
120
104
非鉄金属
110
100
100
96
90
80
92
電子部品
・デバイス
電気機械
情報通信機械
70
88
60
化学(除く医薬品)
84
2012
13
14
15
16
50
17 (年) 2012
(注)直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
13
14
15
16
17 (年)
4/5
先行きは緩やかな拡大を見込む
2017 年 4 月以降に関しては、生産は緩やかな拡大を見込んでいる。耐久消費財については、
家電エコポイント導入時に購入された白物家電等が買い替えサイクルを迎えていることに加え
て、消費増税前の駆け込み等による需要先食いの悪影響が剥落しつつあることから、今後は底
堅く推移することが見込まれる。また、外需についても、家計部門を中心に底堅い米国経済を
はじめとして、海外経済の回復が続いていくと考えられることから、緩やかに輸出は持ち直す
であろう。一方、ダウンサイドリスクとして、米トランプ新政権による保護主義政策や英国の
EU離脱等により、世界経済の先行き不透明感が強まる可能性が挙げられる。このことは、外
需の成長や設備投資の本格的な回復に対する障害となろう。
図表 4:輸出数量、出荷・在庫バランスと生産
鉱工業生産と輸出数量
99
(2010年=100)
(2010年=100)
105
40
鉱工業生産指数
(右軸)
97
50
出荷・在庫バランスと生産
(前年比、%)
103
鉱工業生産指数
30
20
95
101
93
99
91
10
0
-10
97
89
95
輸出数量指数
87
13
14
15
-30
出荷・在庫バランス
(1ヶ月先行)
-40
85
12
-20
16
-50
93
2008 09
17 (年)
(注)鉱工業生産の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)内閣府、経済産業省統計より大和総研作成
10
11
12
13
14
15
16
(年)
5/5
主要産業の生産動向(季節調整値)
輸送機械
はん用・生産用・業務用機械
(指数×ウエイト)
(指数×ウエイト)
12
3.0
乗用車
10
半導体・フラット
パネル製造装置
はん用機械器具部品
2.5
自動車部品
8
2.0
6
1.5
4
1.0
船舶・同機関
トラック
2
ボイラ・原動機
0.5
風水力機械・油圧機器
金属工作機械
0
0.0
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17(年)
08
09
10
11
12
電子部品・デバイス
13
14
15
16
17(年)
電気機械
(指数×ウエイト)
(指数×ウエイト)
5.0
2.0
4.5
電子部品
4.0
1.6
3.5
1.4
3.0
1.2
2.5
1.0
2.0
集積回路
1.5
半導体部品
0.8
半導体素子
0.4
0.5
0.2
0.0
09
10
11
12
13
14
15
回転電気機械
16
17(年)
配線・照明用器具
電池
0.0
08
09
化学
10
11
12
13
14
15
16
17(年)
鉄鋼・非鉄金属・金属製品
(指数×ウエイト)
3.5
1.6
化粧品
3.0
民生用電気機械
0.6
1.0
08
開閉制御装置・機器
1.8
1.4
(指数×ウエイト)
熱間圧延鋼材
鉄素製品
(含.鋼半製品)
伸銅・アルミニウム圧延製品
建設用金属製品
建築用金属製品
1.2
2.5
1.0
有機薬品
2.0
プラスチック
0.8
1.5
0.6
1.0
0.4
0.5
0.2
石油系芳香族
0.0
08
09
10
非鉄金属鋳物
石けん・合成洗剤・界面活性剤
11
0.0
12
13
14
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
15
16
17(年)
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17(年)