経済分析レポート 2015 年 12 月 28 日 全5頁 Indicators Update 11 月鉱工業生産 踊り場から回復再開へ エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 小林 俊介 [要約] 2015 年 11 月の生産指数は前月比▲1.0%となり、3 ヶ月ぶりの低下となった。市場コン センサス(同▲0.5%)からは小幅の下振れであるが、出荷指数の落ち込みは同▲2.5% と大きく、ヘッドラインはネガティブな内容である。在庫は同+0.4%の微増となり、 在庫率指数は同+2.9%と 3 ヶ月ぶりに上昇した。ただし予測調査では先行きの増産見 通しが示されており、こちらは明るい材料となった。 先行きの生産は再度増産傾向に転じると見込んでいる。まず内需については、勤労世帯 および年金受給世帯の実質所得環境改善に伴う消費の回復を見込んでいる。また、国内 設備投資に対する企業の意欲は衰えておらず、資本財需要の下支え要因となろう。外需 についても、強弱入り混じりながらも緩やかな回復基調に復する見通しだ。米国では家 計部門を中心に底堅い景気拡大が続いており、耐久財等の輸出は増加傾向が続くだろう。 欧州向け輸出については、原油価格下落や ECB による量的緩和の効果などから持ち直し ており、均してみれば回復基調が継続すると見込んでいる。アジア経済に関しては、中 国の預金準備率引き下げや利下げなどによる実体経済の底上げが確認され始めており、 消費財などを中心に一段の需要減少は回避される公算が大きい。 図表 1:鉱工業生産の概況(季節調整済み前月比、%) 鉱工業生産 コンセンサス DIR予想 生産者出荷 生産者在庫 生産者在庫率 2015年 2月 ▲3.1 3月 ▲0.8 4月 1.2 5月 ▲2.1 6月 1.1 7月 ▲0.8 8月 ▲1.2 9月 1.1 10月 1.4 ▲4.4 1.1 4.0 ▲0.6 0.4 0.9 0.6 0.4 ▲1.0 ▲1.9 ▲0.8 1.9 0.6 1.5 ▲1.6 ▲0.4 ▲0.8 ▲1.1 ▲0.7 0.3 6.2 1.4 ▲0.4 ▲3.1 2.1 ▲1.9 ▲3.0 11月 ▲1.0 ▲0.5 ▲1.0 ▲2.5 0.4 2.9 (注)コンセンサスはBloomberg。 (出所)Bloomberg、経済産業省統計より大和総研作成 株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2/5 出荷指数が低下に転じ、在庫率指数上昇 2015 年 11 月の生産指数は前月比▲1.0%となり、3 ヶ月ぶりの低下となった。市場コンセン サス(同▲0.5%)からは小幅の下振れであるが、出荷指数の落ち込みは同▲2.5%と大きく、 ヘッドラインはネガティブな内容である。在庫は同+0.4%の微増となり、在庫率指数は同+ 2.9%と 3 ヶ月ぶりに上昇した。 図表 2:出荷・在庫・在庫率、生産指数財別内訳 生産指数 出荷・在庫・在庫率 (2010年=100) (2010年=100) 160 150 140 在庫率指数 資本財 120 在庫指数 130 100 110 90 100 80 90 70 60 出荷指数 10 11 12 建設財 110 120 70 2008 09 予測 130 140 80 財別内訳 13 14 15 50 16(年) 2008 09 生産指数 10 11 耐久消費財 12 13 14 15 16(年) (注)生産指数の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 資本財・素材セクターが引き続き不調、最終財も減産 11 月の生産指数を業種別に見ると、全 15 業種中、10 業種の生産が低下した。はん用・生産 用・業務用機械工業(前月比▲2.5%)、化学工業(除.医薬品) (同▲2.7%)、金属製品工業(同 ▲2.9%)、石油・石炭製品工業(同▲4.9%)、窯業・土石製品工業(同▲1.3%)など、資本財・ 素材セクターが軒並み減産を記録している。また、新製品投入に向けて作り込みが始まったと 目される輸送機械工業(同▲0.6%)や関連産業である電気機械工業(同▲0.4%)、堅調な推移 を続けてきた電子部品・デバイス工業(同▲1.1%)も減産に転じた。 11 月の生産指数を財別に見ると、投資財部門の低下が大きい。前月に増産に転じた資本財は 前月比▲2.5%とマイナスに転じており、引き続き軟調である。堅調さを維持してきた建設財も 同▲3.8%と減産に転じている。消費財も同▲1.5%となった。耐久消費財(同▲2.1%)が足を 引っ張る格好である。 3/5 先行きは増産へ 予測調査によれば、12 月、16 年 1 月の生産指数はそれぞれ前月比+0.9%、同+6.0%と、先 行きは増産に転じる見込みとなっている。業種別では、はん用・生産用・業務用機械工業(12 月同+1.9%、1 月同+13.4%)、電子部品・デバイス工業(12 月同▲3.3%、1 月同+9.2%)、 電気機械工業(12 月同▲0.4%、1 月同+5.1%)、情報通信機械工業(12 月同+15.2%、1 月同 +1.2%)、輸送機械工業(12 月同▲0.8%、1 月同+6.6%)など耐久財・資本財セクターで増 産回帰の予測がみられる。また、非鉄金属工業(12 月同▲0.5%、1 月同+7.9%)、金属製品工 業(12 月同+2.4%、1 月同+3.2%)、化学工業(12 月同+2.6%、1 月同+2.2%)などの素材 セクターにおいても生産の底打ちが見込まれている。 予測調査を財別に見ると、資本財(除.輸送機械)(12 月前月比+2.3%、1 月同+9.5%)、 耐久消費財(12 月同▲0.2%、1 月同+7.6%)、非耐久消費財(12 月同+3.2%、1 月同+12.0%) など、やはり先行きの資本財・消費財生産に強さが見られる。建設財(12 月同+1.7%、1 月同 +3.0%)も緩やかな増産基調に復する見込みである。 図表 3:主要業種の生産推移 (2010年=100) 素材業種 (2010年=100) 予測 予測 140 112 108 加工業種 鉄鋼 電気機械 130 金属製品 はん用・生産用 ・業務用機械 120 104 110 100 100 96 90 80 92 88 非鉄金属 84 2010 11 70 パルプ・紙 ・紙加工品 化学(除く医薬品) 12 13 14 15 60 電子部品 ・デバイス 輸送機械 情報通信機械 50 16(年) 2010 (注)直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 11 12 13 14 15 16( 年) 4/5 踊り場から回復再開へ 今回の予測調査に示されたように、先行きの生産は再度増産傾向に転じると見込んでいる。 まず内需については、勤労世帯および年金受給世帯の実質所得環境改善に伴う消費の回復を見 込んでいる。また、国内設備投資に対する企業の意欲は衰えておらず、資本財需要の下支え要 因となろう。外需についても、強弱入り混じりながらも緩やかな回復基調に復する見通しだ。 米国では家計部門を中心に底堅い景気拡大が続いており、耐久財等の輸出は増加傾向が続くだ ろう。欧州向け輸出については、原油価格下落や ECB による量的緩和の効果などから持ち直し ており、均してみれば回復基調が継続すると見込んでいる。アジア経済に関しては、中国の預 金準備率引き下げや利下げなどによる実体経済の底上げが確認され始めており、消費財などを 中心に一段の需要減少は回避される公算が大きい。 図表 4:輸出数量、出荷・在庫バランスと生産 鉱工業生産と輸出数量 130 (2010年=100) (2010年=100) 120 50 115 40 120 110 鉱工業生産指数 (右軸) 110 105 100 100 90 95 90 80 輸出数量指数 70 60 2008 09 10 11 12 13 14 15 出荷・在庫バランスと生産 (前年比、%) 鉱工業生産指数 30 20 10 0 -10 -20 85 -30 80 -40 -50 75 2008 09 16(年) (注)鉱工業生産の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。 (出所)内閣府、経済産業省統計より大和総研作成 出荷・在庫バランス (1ヶ月先行) 10 11 12 13 14 15 (年) 5/5 主要産業の生産動向(季節調整値) 輸送機械 はん用・生産用・業務用機械 (指数×ウエイト) (指数×ウエイト) 12 2.5 半導体・フラットパネル製造装置 乗用車 はん用機械器具部品 10 2.0 自動車部品 8 1.5 6 1.0 4 船舶・同機関 トラック ボイラ・原動機 0.5 2 風水力機械・油圧機器 金属工作機械 0 2008 09 10 11 12 13 14 15 (年) 0.0 2008 09 10 11 電子部品・デバイス 12 13 14 15 (年) 電気機械 (指数×ウエイト) (指数×ウエイト) 5.0 2.0 4.5 開閉制御装置・機器 1.8 電子部品 4.0 1.6 3.5 1.4 3.0 1.2 2.5 民生用電気機械 1.0 2.0 1.5 半導体部品 半導体素子 0.6 1.0 0.4 0.5 0.2 0.0 2008 09 10 11 12 13 回転電気機械 0.8 集積回路 14 15 (年) 配線・照明用器具 電池 0.0 2008 09 化学 11 12 13 14 15 (年) 鉄鋼・非鉄金属・金属製品 (指数×ウエイト) 3.5 1.6 1.4 化粧品 3.0 10 (指数×ウエイト) 建築用金属製品 熱間圧延鋼材 鉄素製品 (含.鋼半製品) 1.2 2.5 1.0 2.0 有機薬品 プラスチック 0.8 1.5 0.6 1.0 0.4 0.5 石けん・合成洗剤・界面活性剤 石油系芳香族 0.0 2008 09 10 11 12 13 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 14 15 0.2 建設用金属製品 伸銅・アルミニウム圧延製品 0.0 2008 (年) 非鉄金属鋳物 09 10 11 12 13 14 15 (年)
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