Indicators Update

経済分析レポート
2016 年 10 月 31 日 全 5 頁
Indicators Update
9 月鉱工業生産
前月比横ばいだが一時的な下押し要因も、先行きは増産計画
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 齋藤 勉
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

9 月の生産指数は前月比+0.0%と前月から横ばいとなり、市場コンセンサス(同+
0.9%)を下回った。一方、9 月の出荷指数は同+1.1%と 2 ヶ月ぶりの上昇、在庫指数
は同▲0.4%と 2 ヶ月ぶりの低下、
在庫率指数は同+1.5%と 2 ヶ月ぶりの上昇となった。
前月大幅に増加していた情報通信機械工業や電子部品・デバイス工業の減産が全体を大
きく下押ししたものの、はん用・生産用・業務用機械工業や輸送機械工業などでは生産・
出荷ともに持ち直しが見られており、堅調な結果となっている。

製造工業生産予測調査で見ると、10 月:前月比+1.1%、11 月:同+2.1%と、増産が
続く計画となっている。今月減産幅の大きかった情報通信機械工業や電子部品・デバイ
ス工業が増産に復する計画となっていることはポジティブに捉えて良いだろう。

12 月以降に関しては、生産は一進一退の推移が続くとみている。勤労者世帯の可処分
所得および年金受給世帯所得の伸び悩みを背景に、個人消費は横ばい圏での推移が続く
とみている。加えて、円高の進行を受けて企業の収益環境が悪化する中、国内設備投資
の増加も、人手不足対応の省力化投資や研究開発・省エネ関連投資など、的を絞った内
容となる可能性が高い。外需については、一部に堅調な品目がみられるものの、当面横
ばい圏での推移が続くだろう。
図表 1:鉱工業生産の概況(季節調整済み前月比、%)
鉱工業生産
コンセンサス
DIR予想
出荷
在庫
在庫率
2015年
12月
▲1.2
2016年
1月
+2.5
2月
▲5.2
3月
+3.8
4月
+0.5
5月
▲2.6
6月
+2.3
7月
▲0.4
8月
+1.3
▲1.4
+0.4
+0.7
+2.0
▲0.3
▲0.1
▲4.1
▲0.2
▲1.5
+1.8
+2.9
+3.3
+1.6
▲1.7
▲2.2
▲2.6
+0.4
+1.8
+1.7
+0.0
▲1.5
+0.7
▲2.4
+1.1
▲1.1
+0.3
▲3.2
9月
+0.0
+0.9
+1.2
+1.1
▲0.4
+1.5
(注)コンセンサスはBloomberg。
(出所)Bloomberg、経済産業省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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生産は前月比横ばいだが一時的な下押し要因が押し下げ
9 月の生産指数は前月比+0.0%と前月から横ばいとなり、市場コンセンサス(同+0.9%)を
下回った。一方、9 月の出荷指数は同+1.1%と 2 ヶ月ぶりの上昇、在庫指数は同▲0.4%と 2 ヶ
月ぶりの低下、在庫率指数は同+1.5%と 2 ヶ月ぶりの上昇となった。前月大幅に増加していた
情報通信機械工業や電子部品・デバイス工業の減産が全体を大きく下押ししたものの、はん用・
生産用・業務用機械工業や輸送機械工業などでは生産・出荷ともに持ち直しが見られており、
堅調な結果となっている。製造工業生産予測調査で見ると、10 月:前月比+1.1%、11 月:同
+2.1%と、増産が続く計画となっている。今月減産幅の大きかった情報通信機械工業や電子部
品・デバイス工業が増産に復する計画となっていることはポジティブに捉えて良いだろう。
図表 2:出荷・在庫・在庫率、生産指数財別内訳
生産指数
出荷・在庫・在庫率
財別内訳
(2010年=100)
(2010年=100)
120
140
在庫率指数
予測
130
115
資本財
120
建設財
110
110
100
105
90
在庫指数
80
100
生産指数
70
耐久消費財
95
60
出荷指数
90
12
13
14
15
16
50
(年) 2008 09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)生産指数の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
半導体製造装置、自動車輸出が全体の増加要因に。前月増加した業種は反動で減少
9 月の生産指数を業種別に見ると、全 15 業種中、7 業種が上昇した。なかでも、はん用・生
産用・業務用機械工業(前月比+3.7%)、輸送機械工業(同+2.6%)の上昇率が大きい。この
ところ増加基調が続く半導体製造装置の増産が全体をけん引したほか、米国向けを中心に自動
車輸出台数が増加したことも、生産の増加に寄与したもようである。一方、生産指数が低下し
た業種では、情報通信機械工業(9 月:同▲11.8%←8 月:同+14.0%)、電子部品・デバイス
工業(9 月:同▲2.7%←8 月:同+6.2%)が低下に大きく寄与した。情報通信機械工業は、前
月大幅に増加した反動でノートパソコンやデスクトップ型パソコンの生産が減少した影響が大
きい。ただし、パソコンの輸出は緩やかな増加基調にあることから、一時的な生産調整の結果
とみてよいだろう。電子部品・デバイス工業の減産も、9 月に発売された新型スマートフォン向
けのメモリ生産が一時的に増加していた反動と考えられる。一時的な要因で全体が下押しされ
た格好と言えよう。
3/5
生産計画は強いが、変動の大きい財の動向に注意
製造工業生産予測調査によると、10 月、11 月の生産指数は前月比+1.1%、同+2.1%と増産
が続く計画となった。予測調査を業種別に見ると、今月生産が減少した情報通信機械工業(10
月:同+7.2%、11 月:同+0.2%)
、電子部品・デバイス工業(10 月:同+6.3%、11 月:同+
4.8%)の計画が強い。これらの業種では計画時点から生産が下振れする傾向が強いため、数値
は若干割り引いて見る必要があるものの、今月の減産が一時的なものであることが確認できれ
ば、再び鉱工業生産全体のけん引役となることが期待される。また、今月生産の増加幅が大き
かったはん用・生産用・業務用機械工業(10 月:同+3.4%、11 月:同+4.9%)や輸送機械工
業(10 月:同+1.3%、11 月:同+1.8%)の計画が強い点もポジティブに捉えて良い点と言え
る。はん用・生産用・業務用機械工業では、半導体製造装置の生産動向を決める半導体メーカ
ーの設備投資動向、輸送機械工業では、自動車や自動車部品の輸出増加が続くかどうかが、先
行きの焦点になるだろう。
図表 3:主要業種の生産推移
(2010年=100)
素材業種
(2010年=100)
予測 130
112
108
金属製品 鉄鋼
パルプ・紙
・紙加工品
120
予測
はん用・生産用
・業務用機械
輸送機械
110
非鉄金属
104
加工業種
100
100
90
96
80
92
電子部品
・デバイス
電気機械
情報通信機械
70
88
60
化学(除く医薬品)
84
2012
13
14
15
16
50
(年) 2012
(注)直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
13
14
15
16
(年)
4/5
先行きは一進一退の推移が続く
12 月以降に関しては、生産は一進一退の推移が続くとみている。依然として在庫水準は高止
まりしていることから、在庫調整による生産の下押しが続く公算が大きい。また、勤労者世帯
の可処分所得および年金受給世帯所得の伸び悩みを背景に、個人消費は横ばい圏での推移が続
くとみている。加えて、円高の進行を受けて企業の収益環境が悪化する中、国内設備投資の増
加も、人手不足対応の省力化投資や研究開発・省エネ関連投資など、的を絞った内容となる可
能性が高い。外需については、一部に堅調な品目が見られるものの、当面横ばい圏での推移が
続くとみている。欧州向け輸出については、ECB による量的緩和の効果などから持ち直してきて
いるが、英国の EU 離脱、不良債権問題による金融機関の動揺が与える影響で弱含む可能性に注
意が必要だ。米国経済は家計部門を中心に底堅いが、設備投資の増勢は鈍く、資本財輸出が加
速する可能性は低い。アジアに関しても、設備投資の減速により資本財輸出が緩慢な動きを続
けるとみられるほか、欧州に端を発する金融市場の混乱がもう一段の需要減少を惹起する可能
性には要注意である。
図表 4:輸出数量、出荷・在庫バランスと生産
鉱工業生産と輸出数量
(2010年=100)
(2010年=100)
99
105
鉱工業生産指数
(右軸)
97
50
出荷・在庫バランスと生産
(前年比、%)
40
103
95
101
93
99
91
鉱工業生産指数
30
20
10
0
-10
97
89
95
輸出数量指数
87
13
14
15
-30
出荷・在庫バランス
(1ヶ月先行)
-40
85
12
-20
16
-50
93
2008 09
(年)
(注)鉱工業生産の直近2ヶ月の値は、製造工業生産予測調査による。
(出所)内閣府、経済産業省統計より大和総研作成
10
11
12
13
14
15
16
(年)
5/5
主要産業の生産動向(季節調整値)
輸送機械
はん用・生産用・業務用機械
(指数×ウエイト)
(指数×ウエイト)
12
2.5
半導体・フラットパネル製造装置
はん用機械器具部品
乗用車
10
2.0
自動車部品
8
1.5
6
1.0
4
船舶・同機関
トラック
ボイラ・原動機
0.5
2
風水力機械・油圧機器
金属工作機械
0
0.0
08
09
11
10
12
13
14
15
16
08
(年)
09
10
11
電子部品・デバイス
12
13
14
15
16
(年)
電気機械
(指数×ウエイト)
(指数×ウエイト)
5.0
2.0
4.5
電子部品
開閉制御装置・機器
1.8
4.0
1.6
3.5
1.4
3.0
1.2
2.5
民生用電気機械
1.0
2.0
1.5
半導体部品
半導体素子
0.6
1.0
0.4
0.5
0.2
0.0
08
09
10
11
12
回転電気機械
0.8
集積回路
13
14
15
16
(年)
配線・照明用器具
電池
0.0
08
09
化学
11
12
13
14
15
16
(年)
鉄鋼・非鉄金属・金属製品
(指数×ウエイト)
3.5
1.6
1.4
化粧品
3.0
10
(指数×ウエイト)
建築用金属製品
熱間圧延鋼材
鉄素製品
(含.鋼半製品)
1.2
2.5
1.0
2.0
有機薬品
プラスチック
0.8
1.5
0.6
1.0
0.4
0.5
石油系芳香族
0.0
08
09
10
0.2
石けん・合成洗剤・界面活性剤
伸銅・アルミニウム圧延製品
建設用金属製品
非鉄金属鋳物
0.0
11
12
13
14
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
15
16
(年)
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)