演習問題 10

概 論 IV 演 習
§10. Cauchy の積分定理と積分公式(その 2) 2014 年 12 月 16 日出題
[ 10.1 ] f (z) は点 a 2 C の近傍で定義された連続函数とする.このとき次を示せ.
Z
f (z) eeeeeeeeee
lim
dz = 2⇡if (a).
r!+0 |z a|=r z
a
Hint: f (z) = f (a) + '(z) とおいてみよ.
[ 10.2 ] (1) 被積分函数を 2 項展開して,次の等式を示せ.
Z
n ✓ ◆2
X
n
1
n
n
z (z + 1) (z + 1) dz =
.
2⇡i |z|=1
k
k=0
(2) z = 1 のときは z = z
1
であることに注意し,(1) を利用して次の等式を示せ.
✓ ◆
n ✓ ◆2
X
n
2n
=
.
k
n
k=0
[ 10.3 ] f (z) は整函数とする.
(1) 異なる複素数 ↵, が与えられたとし,R > 0 を十分大きくとって 2 点 ↵, が円
z = R の内部にあるとする.部分分数分解を経て次式を示せ:
Z
f (z)
f (↵) f ( )
1
dz =
······ 1
2⇡i |z|=R (z ↵)(z
)
↵
(2) さらに f (z) は有界であると仮定する. 1 の左辺を評価して R ! +1 とするこ
とで,Liouville の定理の別証明を与えよ.
[ 10.4 ] 次の手順で代数学の基本定理を証明せよ1.
(1) n = 1 とし,n 次の多項式 p(z) は C に根を持たないとする.
Z
1
dz = 1 である.
(2) 8r > 0 に対して,
2⇡i |z|=r zp(z)
p(0)
(3) (2) の左辺の積分は,r ! +1 のときに ! 0 である.
[ 10.5 ] 各 z 2 D(0, 1) := {z 2 C ; z < 1} に対して,
Z 1
Z ⇡
1
d✓
f (z) :=
r dr
i✓
⇡ 0
re
+z
⇡
とおくとき,f (z) = z (8z 2 D(0, 1)) であることを示せ.
Z ⇡
d✓
Remark: z を固定するとき,函数 r 7!
は r = z で定義されないが,
i✓
⇡ re + z
それは [ 0, 1 ] での r についての積分には影響しない.パラメータ付きの正則函数を
そのパラメータで積分したら反正則函数になる例.乱暴な議論に対する警鐘である.
裏面に続く
1A.
R. Schep (2009) による証明.
Im z
[ 10.6 ] 円周 z = R (R > 0, R 6= 1) の上半分を
z = RZから z = R に至る路を C とするとき,
C
dz
i
積分
2 を求めよ.
"#
Re z
C 1+z
R
R
O
Hint: R > 1 のときは右図の閉路(C" は中心 i,
小さい半径 " > 0 の円周を正の方向に 1 周する路)
C + [ R, 0 ] + [ 0, (1 ")i ] + ( C" ) + [ (1 ")i, 0 ] + [ 0, R ]
に一般形の Cauchy の積分定理を適用する.練習問題として,留数定理を使わずに
解くこと.
⇣ dz ⌘
[ 10.7 ] (1) a > 0, b > 0 は定数とする.z = a cos ✓ + ib sin ✓ のとき,Im 1
を
z d✓
✓ を用いて表せ.
Z ⇡
d✓
(2) (1) を利用して,定積分
2 を計算せよ.
2
2
2
0 a cos ✓ + b sin ✓
i
1
[ 10.8 ] f (z) は整函数とする.右図の閉路 C と ↵ = 3, 1, 1, i
1
Z
3
f
(z)
1
に対して,
dz を求めよ.
2⇡i C z ↵
Z
dz の可能な値をすべて見出せ.
[ 10.9 ] C が ±i を通らない閉曲線であるとき,
1
+
z2
C
[ 10.10 ] D := C \ { 1, 1} とし,f (z) は D で正則な
函数とする.右図にあるような D 内の閉曲線
C:P!O!Q!R!S!O!T!U!P
を考える.
Z
(1) n(C, ±1) を考察することで f (z) dz = 0 示せ.
Z C
f (z)
(2) n(C, i) を考察して, 1
dz を求めよ.
2⇡i C z i
P
R
T
i
1
O
C
1
S
U
Q
[ 10.11 ] f (z) は領域 D で正則で定数函数ではないとする.このとき,最大絶対値
の原理を用いて,像 f (D) は開集合であること2を次の手順で示せ.
(1) (要理由)w0 = f (z0 ) 2 f (D) をとると,9r > 0 s.t.
D(z0 , 2r) ⇢ D かつ f (z) 6= w0 (8z 2 D(z0 , 2r) \ {z0 }).
(2) 2m := min
|z z0 |=r
f (z)
w0 > 0 とおくと D(w0 , m) ⇢ f (D) となることを,
8w 2 D(w0 , m), 9z 2 D(z0 , r) s.t. f (z) = w
1
となることで示す.そのために結論を否定すると,F (z) :=
は D(z0 , r) で
f (z) w
正則,D(z0 , r) で連続である.しかし,境界 z z0 = r 上での F (z) の値と F (z0 )
の大小関係は最大絶対値の原理に反していることが示せる.
以上
2Rouch´
e の定理を用いる証明が多くの本で採られている.