米穀粒の層別における含窒素化合物の分布

一42一
食 物 学 会 誌 ・第27号
米 穀 粒 の 層 別 に お け る含 窒 素 化 合 物 の 分 布
布浦
Radial
Distribution
in
Rice
the
Hiroshi
of
弘*,光
Nitrogen
俊 郎*,井
Containing
戸
Nunoura.
Toshiro
Mitsunaga.
で あ り,わ れ わ れ 日本 人 に
こと って食 生
Compounds
and
軟 質 米)を
Akiko
Ido
収 穫 翌 年4月
に 玄 米 の 形 で 購 入 し,実
2.試
は 約6∼8%の
型 掲 精 機 に よ り揚 精 し,生
タ ンパ ク質 が 含 まれ て お り,現 在 日本
料 の 調 製;玄
米2009を
単 位 に し て,佐
重 量%に
米 に は グ ル テ リ ン,プ ロ ラ ミン,グ ロブ リンお よび ア
1)
ル ブ ミン の4種 類 の タ ン パ ク質 が 含 まれ て お り・ そ の
16^-20°0,
大 部 分 は グ ル テ リ ンが 占め て い る。HoganやHouston
に て 脱 脂 し分 析 試 料 と した 。
らは これ らの タ ン パ ク質 は 米 粒 の 中 心 部 よ り表 層 部 に
3.各
多 く含 まれ て い る と報 告 して い る。
抽 出 はMaesの
3)
離 ア ミノ酸 も10∼17種 類 含 まれ て い る。 これ らの ア ミ
米 粒 の部 位,栽 培 条 件)/rVより種 類,
含 量 が 異 な って い る。 グ ル タ ミン酸,グ
パ ラギ ン酸,ア
ラ ニ ン,チ
ロ シ ン,パ
に共 通 に 存 在 して い るが,ア
リシ ン,ア ス
リンな どは 品 種
ル ギ ニ ン,ス
て0∼4°o,4∼8%,8∼12%,12∼16°o,
°oの9部
20^'30°0,
分に分け た
4)
また 米 には タ ンパ ク質 以 外 の含 窒 素 化 合 物 と して 遊
レオ ニ ン,
フ ェ ニル ァ ラ ニ ン,リ ジ ンな どは 含 まれ な い 品種 が あ
5)
30^-40°0,
40^-50°0,
種 タ ン パ ク 質 の 抽 出 法;各
試 料 の タ ン パ ク質 の
小 麦 タ ンパ ク質 の 分 離
し て用 い た 。 まず 試 料 粉 約2.59を
(#560)109と
砂2009を
乳 鉢 で 充 分 混 合,磨
砕 す る。 さ らに 海
加 え て 混 合 した後 少 量 の蒸 留 水 を 加 え て 泥
砂,泥
状 試 料,海
砂,石
ル の順 に 充 填 され る。 海 砂,石
英 砂,ガ
ゥ ム,70%ユ
らに外 国 産 米 は 日本 産 米 に 比 し て ア ミノ酸 存 在 数 が 少
6)
く,総 含量 も非 常 に 少 な い こ とが 知 られ て い る。 米 の
含 窒 素 化 合 物 の 含 量 に つ い て は 品 種,製
米,糠),産
地s栽
品(玄 米,白
培 条 件 な どに よ って の報 告 が 多 く,
ラス ウ ー
の
厚 み に つ め られ る。 こ こで 用 い た 海 砂,石 英 砂 お よび
酸 総 量 が 大 で あ る。 と くに グ ル タ ミ ン酸,ア
ス パ ラギ
ガ ラス ウー ル,
英 砂 の各 層 は 約1㎝
セ ライ トの各 抽 出助 剤 は 先 に
ご水,1.0%水
ロ リンが 少 な い 。 さ
7」
抽 出法 を 改 良
精 取 し,セ ライ ト
状 に す る。 つ ぎに カ ラ ム(35×30㎝)に
石 英 砂,海
50^-100
。 それ ぞれ の部分 は石 油工一テル
る と報 告 され て い る。 ま た 食 味 の 良 い 米 は 遊 離 ア ミノ
ン酸 お よ び ア ル ギ ニ ンが 多 く,プ
竹式小
成 す る 粉 を 表 層 部 よ り順 に
人 の タ ンパ ク質 源 と して も重 要 な 食 糧 で あ る。
2)
験 に
供 した 。
活 に 主 食 と し て 占 め る位 置 は 大 き い 。 さ らに 米 粒 中 に
ノ酸 は 米 の 品 種
明 子**
Kernel
米 は 東 南 ア ジ ア は じめ 世 界 各 地 で 栽 培 され てい る代
表 的 穀 類 の1つ
永
酸化ナ トリ
タ ノ ー ル に て充 分 洗 潅,精 製 した 。 抽 出
は カ ラ ムに 蒸 留 水,5%塩
化 ナ ト リウ ム 水 溶 液,60%
エ タ ノー ル の順 に 各 溶 媒 を 連 続 的 に 流 して 行 な わ れ る。
そ して 各 々 の 溶 媒 の 抽 出液 を ア ル ブ ミン区 分,グ
リ ン区 分,プ
ロブ
ロ ラ ミ ン区 分 と して タ ンパ ク質 量 を 定 量
した 。 さ らに 総 タ ンパ ク質 量 よ りア ル ブ ミ ン量,グ
ロ
米 粒 を 対 照 に して 層 別 に これ らの 成 分 の分 布 を 詳 細 に
ブ リ ン量 お よ び プ ロ ラ ミン量 の和 を 引 き,そ れ を グル
検 討 した 報 告 は 少 な い 。
テ リ ン量 と し た 。
本 研 究 は 米 穀 粒 を表 層 部 よ り内 層 部 に 層 別 に 分 離 し,
4.
タ ンパ ク質 の 定 量 法;タ
ンパ ク質 量 は ケル ダ ール
各 層 に お け る各 種 タ ンパ ク質 お よび 遊 離 ア ミノ酸 の 分
法 で窒 素 量 を 定 量 し,窒 素 係 数5.95を
布 に つ い て検 討 し た 。
5.
実
験
方
法
用 い て 算 出 した 。
ア ル ブ ミン区 分 の 精 製 と デ ィス ク電 気 泳 動;上 記
各 試 料 の ア ル ブ ミン区 分 抽 出 液 を 遠 心 分 離(8000rpm)
して そ の 上 清 を と る。 これ を 硫 安 で100%飽
1.材
料;う
るち 米 の 越 路 早 生(昭 和45年 度 新 潟 県 産,
*本学食 品化学 研究室
**本 学46年度 卒業生
和 し,塩
析 後 遠 心 分 離 して 沈 殿 物 を 分 離 す る。 この沈 殿 物 は 蒸
留 水 に とか し て,M/100グ
リシ ン緩 衝 液(pH8.6)に
昭和4
7
年1
1月 (1972)
- 43-
て透析する。透析物中にわずかに生じた沈殴物は遠心
80t%
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N クエン酸緩衝液 (
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)で定容 (5ml)にして,ア
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得られた液は減圧濃縮し,
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てピクリン酸を除き,
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クする。上清は Dowex2x8
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-型イオン交換樹脂に
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の 1 %ピクリン酸液を加えた後遠心分離して除タンパ
り
数時間振鍾し遊離アミノ酸を抽出し ,
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液に約 5倍量
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円
4
取し,約 2倍量の 70%エタノールを加え, 40~50oC で
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6
. 遊離アミノ酸の分離と定量:各分析試料 50gを精
UphU89qd
ミドゲルを用いて電気泳動させ,各試料アルブミンの
パターンを比較した。
(中小)言
は D
avis の方法にしたがって 8 %のポリアグリルア
円/広
精製アルブミン子分とする。この精製アルブミン区分
ハ
UAUAUAUnun
分離により除いた後上清を限外P過して 1
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倍に濃縮し,
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ミノ酸自動分析計(目立 KLA-5B型〉にて定量した。
に近ずくにつれて減少の傾向を示す。とくにアルブミ
結果および考察
ン区分は表層部においては米の主タンパク質であるグ
ルテリン区分の約 2倍量も含まれていた。しかし中心
1
. 米粒中のタンパク質の分布
(
1
)
粗タンパク質量:F
ig1に示すごとく,粗タンパク
部にいくにつれて急激な減少が認められ, 18%層では
質量は最外部層より 6 %内部にはいった層に最も多く,
逆にグルテリン区分量の%以下に減少を示している。
15.5%も含まれている。この量は試料玄米の粗タンパ
プロラミン区分は米粒の各層を通じて平均に分布して
ク質量 (
6
.75%) の約 2
.
5倍量に相当する。さらに内
いる。グルテリン区分は表層部より中心部にいくにつ
れ,その占める割合は大きくなれ 18%層では他の 3
(%)
種類のタンパク質の合計量の約 2倍量も含まれている。
1
5
供試玄米の米穀粒中の各タンパク質量の比,すなわち
1
4
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アルブミン:グロプリン:プロラミン:グルテリンの
1
3
比は 12: 8 :2 :7
8で あ る 。 こ の 比 は Cagampang
長 12
~
による結菓 5 :6 :3 :8
4や Primoによる結葉 4 :
1
1
15: 3 :7
8 と少し異なった値を示しているが,
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は抽出法,供試米の品種などによる影響と考えられる。
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る。それより内部層ではわずかにタンパク質含量の減
少が認められる程度で, 50%層より中心部まではほと
んど変化が認められなし、。
中心部に比較して表層部
(0~20% 層〉には 2.5~3. 0倍のタンパク質が含ま
れている。
(
2
)
各種タンパク質の分布:つぎに各種類のタンパク
質の分布をみると, F
ig2に示すごとくである。アル
ブミン区分とグロプリン区分は表層部に多く,中心部
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- 44-
食物学会誌・第27号
(
3
)アノレブミン区分の電気泳動:米粒層によって分布
/100g程度含まれているが中心部ではほとんど存在し
差のはげしいアルブミン区分について,ディスク電気
なかった。スレオニン,メチオニン,ロイシン,イン
泳動による各層試料のパターンを比較すると Fig3に
ロイシン,フェニルアラニンも各層にわずかに存在す
0本のパンド
示すごとくである。玄米アルブミンには 1
ることが認められた。
'
1
6
%の各層にはこれと同じ 1
0本の
が認められる。 4"
バンドが認められるが,しかし表層部では P-2, P-9
要 約
米穀粒を層別に分けて含窒素成分(タンパク質,遊
のバンドが見られず, 1
6
"
'
2
0
%層では P-4および P-9
離アミノ酸〉の分布状態を検討した結果,
のパンドが消失している。この結果より米粒のアルブ
1
. 粗タンパク質量は表層部より 6 %層に最も多く含
ミン区分のタンパク質組成は部位によって少し異なる
まれていた。さらに内部層にうつると 30%層まではタ
ことが明らかである。
ンパク質量の急激な減少が認められ,それより中心部
2
. 遊離アミノ酸の分布:総遊離アミノ酸量はタンパ
までは層別に徐々に減少していくことを示した。
ク質はタンパク質の含量と同じ傾向を示した。すなわ
2
. 各種類のタンパク質については,アルブミン,グ
ち表層部より 6 %内部層に最も多く含まれ,中心部に
ロプリンは表層部に多く含まれ,内部層にいくにした
いくにしたがって極端な減少を示した。個々のアミノ
がって減少を示した。とくにアルブミンは表層部では
5
種類の存在が認められた。アスパ
酸は供試試料中に 1
ラギン酸,ク守ルタミン酸,セリン, グリシン,アラニ
ン,パリンは各層に認められ,各層における含量の分
ig4に示すごとくである。最も含量の多いアミノ
布は F
酸はグノレタミン酸で,つぎにアラニン,アスパラギン
酸,セリンが多く含まれている。これらのアミノ酸は
グロプリン量よりも多く,内部層にいくにつれ急激な
減少が見られた。プロラミンは米穀粒に平均に分布し
ていた。グルテリンは表層部より内部層にいくにした
層で他のタン
がし、その占める割合は増加を示し, 18%
パク質量の 2倍量もの含量を示した。米粒中の各タン
パク質量の占める割合はアルブミン:グロプリン:プ
ロラミン:グルテリン =12:8 :2 :7
8であった。
μmol/100g
:
3
0
0
3
. 各層のアルブミン区分の電気泳動パターンは層の
、
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.
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0
部位により少し異なった型を示した。
4
. 遊離アミノ酸量はタンパク質量と同じく 6 %層に
最も多く含まれていた。個々のアミノ酸は 1
5
種類存在
し,グルタミン酸,アラニン,アスパラギン酸,セリ
200
ンが多く含まれていた。それぞれ表層部に多く含まれ,
。
。
中心部にいくにしたがし、著しい減少が認められた。
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すべて表層部に多く,内部層にいくにしたがって急激
な減少を示している。とくにクールタミン酸にその傾向
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が著しし、。リジン,ヒスチジン,アルギニンは 4"
%層にそれぞれ 2,,-, 16μmolj100g含まれていたが,
最外層および中心層にはこん跡程度しか認められなか
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った。またチロシンは表層部 (0"-'8%層〉に 1
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