FOREX WEEKLY

2015 年 1 月 30 日
FOREX WEEKLY
市場営業統括部
チーフ・エコノミスト
山下えつ子
Tel: +1-212-224-4561 (ニューヨーク)
[email protected]
Global View … 原油相場の下落と金融市場の不確実性 → p.2
・ 原油相場の下落がまだ止まらない。これが昨今の金融市場の不確実性の高まりの背景だ。
・ 日米の金融政策に対するマーケットの憶測も収まりにくい。
US View
…
FOMC を通過
→ p.3
・ FOMC では Fed に大きなスタンスの変更はなかった。
・ 来週は ISM や雇用統計など主要経済指標の発表週。
FX Outlook
… 欧州にリスクはあるがユーロ安は小休止 → p.4
<来週の予想ポイント>
ドル/円
レンジ
・
米国の主要経済指標で上下。
ユーロ/円
横ばい
・
欧州のリスクがクローズアップされるまで小休止。
今週のレンジ
本日東京 9 時
来週の予想レンジ
今後 3 ヶ月の予想レンジ
ドル/円
117.25-118.77 円
118.25 円
117.50-119.50 円
112.00-125.00 円
ユーロ/ドル
1.1098-1.1423ドル
1.1335ドル
1.1200-1.1400ドル
1.1000-1.1500ドル
ユーロ/円
130.16-134.84円
134.04 円
132.00-135.00 円
130.00-140.00 円
(今週のレンジは先週金曜日東京9時~本日東京9時、予想レンジは本日東京9時~来週金曜日東京9時)
・今週号本文はニューヨーク時間木曜日正午までの情報をもとに作成しています。
・FOREX WEEKLYに関するお問い合わせは、現在お取り引き中の営業部/支店にお願い申し上げます。
・FOREX WEEKLY は弊行ホームページでもご覧頂けます。(http://www.smbc.co.jp/ マーケット情報→外国為替情報→
フォレックス・ウィークリー)
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現在の筆者の意見を示すのみです。データや数値の抽出範囲・基準は任意で設定している場合があります。データ・資料等につい
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い申し上げます。また、本レポートの全部または一部の無断コピー使用はご遠慮ください。
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FOREX WEEKLY 2015/1/30
Global View
… 原油相場の下落と金融市場の不確実性
年初から相場が大きく動いたかと思えば、今度は方向が見えなくなり、難しい相場になっている。
この相場の一番大きな背景は原油相場の下落だろう。すべてはそこに端を発しているように見える。
昨年夏から始まった原油相場の下落は終盤勢いを増し、半年間で原油価格は半値になった。年明け
以降もスピードは緩やかになったものの、まだ下落し続けている。原油需給のうち、需要サイドの要
因もあろうが、今回の原油相場の下落は供給サイドの問題が圧倒的に大きいと言える。これまで需給
のミスマッチが発生した場合は OPEC が供給を調整することによって価格の暴落や高騰を避けてきた。
だが、今回はサウジが供給カットを拒否し、供給過剰による価格の暴落となった、と考えられる。た
だし、世界の原油供給は米国のシェールオイルなど OPEC 以外の国のシェアの拡大によって OPEC のみ
では供給量の適切な調整が行えない、あるいはそれでは OPEC の不利益が大きくなる、というサウジ
等の主張ももっともであり、サウジ等 OPEC のみに今回の原油価格の下落の責めを問うのは妥当では
ないだろう。
いずれにせよ、当面、供給が自主的に削減される見通しはなく、世界景気が上向き需要見通しが上
方修正されない限り、原油相場の反転の可能性はない。米国などの石油採掘会社が採算割れによって
倒産し、供給減となる可能性もあるが、時間はかなりかかるだろう。
こうした原油相場の下落は米国や日本などを含め多くの国にとって経済にネットではプラスに働
いているので、“責め”どころか“感謝”かもしれない。だが、金融市場にとっては、原油相場の下
落が“不確実性”の増大として、直接間接に相場のボラティリティを上げる方向に働いている、と筆
者は考えている。直接的には、原油相場の下落で、コモディティ相場が連れ安となったり、エネルギ
ー関連株の下落から株式相場が全般に軟調となる、といったルートで働く。間接的には、原油価格の
下落で原油輸出国は原油収入が減少して経済や財政にマイナスの影響が及ぶケースや、それがロシア
を取り巻く情勢にも影響を及ぼしたり、地政学リスクをより深刻なものにする。また、原油価格の下
落が経済にプラスでも物価には押し下げとなり、ユーロ圏のようにデフレ懸念が深刻になる国や日本
のように追加緩和の憶測が高まる国、あるいは米国のように金融正常化へのプロセスに影響があると
の憶測が高まる国がある。
1 月には先週、日銀と ECB 理事会、今週、FOMC、と日米欧の金融政策の決定会合があった。ECB は
QE 実施を決定し、一方、日銀は動かず、米国のスタンスも不変。しかし原油相場が今後も下落を続
けた場合に日米の金融政策がどう展開するのか、不確実性は高まっている。原油相場の見通しが不確
実である限り、金融政策に対するマーケットの見通しも恐らく定まることはないだろう。金融政策に
対する不確実性が排除されるのは、原油価格が下げ止まるか、もしくは、日銀あるいは Fed が原油相
場に左右されないスタンスを表明・実行(利上げ)するか。あるいは、原油価格の見通しの修正によ
り、自らの金融政策スタンスの変更を表明・決定するか。原油相場が定まらない限り、日米の金融政
策に対する憶測は当面収まることはなかろう。マーケットが一連の金融政策のうち決定があった ECB
理事会に対してのみ反応し、日銀と Fed については不明瞭な反応しかなかったのも、こうした背景が
あったからだと思われる。
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FOREX WEEKLY 2015/1/30
US View
… FOMC を通過
27 日・28 日に開催された FOMC は声明文公表のみの会合だった(=議長記者会見等なし)。声明文
には大きな変更はなく、声明文全体が示す政策スタンスは前回の 12 月と変わりない、と判断してよ
いだろう。
最近の景気指標には耐久財受注など下振れもあるが、声明文では景気判断は上方修正された。物価
については、エネルギー価格の下落を主因に当面、2%を一段と下回って低下するが、中期的には 2%
へ向かって上昇する見通しだと書かれている。現時点では、原油相場の下落を主因とするインフレ(ヘ
ッドライン・インフレ)低下は一時的で、2016 年以降の中期見通しは不変、という前回までの Fed
の見方のままである。WTI 先物は年初に 1 バレル 50 ドルを割った後 45 ドル割れまで、ゆっくりとだ
が下落し続けており、先行き不確実。ただ、エネルギー価格の下落は家計の購買力を押し上げる、と
の一文が挿入され、原油価格の下落は米国経済にはネットでプラスだという判断が前面に出ている。
声明文を読む限りでは、今年半ば頃という利上げの開始について Fed が考えを変えたようには見えな
い。
FOMC 直後のマーケットは、債券利回りが低下するなど、やや不可解な動きだった。声明文が発表
された瞬間から利回りが低下したので、声明文への反応といったことではないだろう(この声明文へ
の反応ならば、利回りは上昇してもよかっただろう)。ただ、声明文の中で、利上げまでの注目点に
今回、「国際情勢」が加わったことが債券利回り低下の理由だという説明も一部にはある(後解釈の
ように感じるが・・・)。Fed はこれまで、雇用、物価、金融市場の状況を評価して利上げ開始を判断
する、としてきた。ここに「国際情勢」が今回加えられた。リスクを警戒しているからだとの解釈で
ある。
なぜ今回加える必要があったのか、筆者には理由は分からない。だが言えることは二つある。一つ
はこの言葉は声明文前段のリスク判断の箇所ではないので、グローバルなリスクが高まった、といっ
た記述とは位置づけが異なること。もう一つは、Fed は昨年秋から国際情勢に対する関心度を上げて
いるが、同時に利上げ開始への準備を進めているので、国際情勢をウォッチすることと利上げに慎重
であることは必ずしもイコールではない、ということだ。米国内にダウンサイドの変調が発生しなけ
れば、Fed は金融正常化をストップすることはないだろう。今回の声明文を深読みするのは禁物であ
る。
金融政策に関する次の焦点は 3 月の FOMC でフォワード・ガイダンスの”patient(利上げまで辛抱
強い)”という言葉が変更されるかどうかである。この言葉は少なくとも先 2 回の会合では利上げが
ないことを意味するため(12 月 FOMC でのイエレン議長の説明)、3 月に文言が変更されれば 6 月利
上げの可能性が高まるが、文言が残れば 4 月と 6 月の会合では利上げなし、という読みとなる。文言
が残った場合には、とりあえず 6 月会合まで利上げなしなのか。もっと先まで利上げがないとマーケ
ットは織り込みにいくのか。相場の混乱要因となり得る。ただし、patient というガイダンスの定義
を変更してしまえば、いつでも利上げ可能となるので、文言が残っても、そうした裏技が出ることも
シナリオの一つとしては考え得る。今回の FOMC では Fed のスタンスに変化はなかったが、原油相場
を始め不確実性が高いので、現時点では全方向にシナリオを立てておくしかなかろう。
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FOREX WEEKLY 2015/1/30
今週の経済指標は強弱が混じった。記録的な豪風雪がニューヨークを含む北東部に到来し、国債入
札が延期されるなどの影響もあった。その中での 27 日の経済指標(耐久財受注、新築住宅販売件数、
消費者信頼感指数)は最初に発表された耐久財受注が大幅に下振れ、その後の数字が良好だったが、
マーケットのセンチメントはなかなか好転せず、企業決算の不振もあって株式相場は 28 日まで大幅
に下落。しかし週末にかけて反転。FOMC だけでなく経済指標についても、マーケットの雰囲気、動
きが定まらない 1 週間だった。
耐久財受注は振れの大きな統計だが、4 ヶ月連続のマイナスに言い訳は難しい。Fed が言うように、
ガソリン価格の下落で個人消費が押し上げられおり、企業の設備投資が不振でも GDP 全体はまずまず
良好となる。30 日発表予定の 10-12 月実質 GDP も 3%以上が予想され、短期的には米国経済について
心配は表面化しないかもしれないが、いつまでも企業が設備投資を増やさないことが結果的にも米国
の潜在成長率を押し下げるのではないか。米国経済には回復もあるが脆弱性も残っている。(尤も、
それでも今の状態ならば金融正常化は始まるのだろう。)
30 日は GDP のほかシカゴ PM の発表があり、来週は 2 日に製造業 ISM、4 日に非製造業 ISM、ADP 雇
用調査、そして 6 日に雇用統計、と主要経済指標が発表される。昨年後半の大きな持ち上がりの後、
水準が下がる指標が増えそうな局面だが、それが水準の調整と受け止められるか、景気のスローダウ
ンだと警戒的に受け止められるか。マーケットは利上げの後ずれのシナリオをまだ好んでおり、その
中では経済指標の下振れは過度に警戒的に受け止められるリスクがある。相場のボラティリティが大
きいので、まだ慎重な構え方が必要な時間帯だろう。
FX Outlook
… 欧州にリスクはあるがユーロ安は小休止
25 日のギリシャの総選挙では事前の世論調査の通り、反改革派の SYRIZA が勝利した。ユーロドル
は 1.11 割れへ一旦ユーロ安で始まったものの、すぐに反転してユーロは上昇。26 日にはドイツ ifo
景況指数が上振れ、一方、27 日には米国の耐久財受注が下振れて、ユーロドルは 27 日には 1.14 台
まで上昇した。ECB 理事会での QE 実施決定、ギリシャ総選挙終了、とイベントを通過してユーロ売
りの材料出尽くし、かつユーロ圏の景気指標が上向き、米国の経済指標が下振れ、といった背景でユ
ーロに底打ち感が出ていると考えられる。
今週は 27 日・28 日の米国の FOMC も一大イベントだった。しかし FOMC 通過後のドル相場はいまひ
とつ方向感を出し切れない。FOMC 声明文では Fed のスタンスに変更はなく、ドルは対ユーロでは小
幅上昇したが、対円では方向感がなかった。マーケットは声明文をどう読むか少々迷ったのか、ある
いは米債券利回りの低下がドルの上値を抑えたのか、ドル相場は多少ドル買い方向だが、勢いがない。
週を通すとドル円は 117.50~118.50 のレンジを中心に方向はなく、これを来週の ISM や雇用統計と
いった主要経済指標がブレイクできるか。米国経済は昨年後半に比べると足元の景気のスピードが鈍
っている。経済指標をベースにすると、ドルにはやはり上値を伸ばす勢いが出にくい。主要経済統計
の発表週なので、経済指標で上下はすると予想するものの、来週も週を通すとレンジ相場に終わるか
もしれない。
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FOREX WEEKLY 2015/1/30
経済指標以外では、総選挙後のギリシャ情勢やロシアへの追加制裁など、欧州を中心にリスク要因
はある。しかし、前述のように、欧州のデフレ懸念は QE 実施決定で一旦テーマ性が薄れ、ギリシャ
情勢も総選挙が終わり、ひとまずギリシャのユーロ離脱はなさそうだ、との観測でテーマ性が薄れ、
ドイツの景気指標は上向いた、となるとユーロは一連のイベント通過で買戻し。ユーロ円は先週号に
も記したが、日銀と ECB の緩和の量拡大の相対感だけを見れば 135 円辺りで良い水準にある。欧州の
リスクに再び焦点が当たってユーロ安となるまでは、現行水準は居心地の良いところにある。
(データ出所:Reuters)
ディーラーに聞きました(来週のドル円相場の方向性~ブルベア)
月
12 月
1月
2月
週
15 日~
22 日~
5 日~
12 日~
19 日~
26 日~
2 日~
予想
+5
+5
+2
+3
-3
+5
+3
実績
中立
ブル
中立
ベア
ブル
中立
≪見方≫
当行の為替ディーラー(マーケット、カスタマー)8 名を対象に、来週の相場予想を聴取。今週の東京市場 9 時から、ドル
ブル(終値から1円以上のドル高)、中立(終値から上下1円内)、ドルベア(終値から1円のドル安)の三択で、結果を(ドルブル
人数-ドルベア人数)で表記。+(プラス)は円安ドル高、-(マイナス)は円高ドル安を示す。
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FOREX WEEKLY 2015/1/30
各種相場の動き
<債券(日本国債・10 年債利回り)>
<債券(米国債・10 年債利回り)>
<株(日経平均株価)>
<株(米ダウ)>
<株(上海総合指数)>
<株(ドイツ DAX 指数)>
<原油(WTI 先物(期近物))>
<金(NY 先物(期近物))>
(出所:Bloomberg)
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FOREX WEEKLY 2015/1/30
今週のプライスアクション(ドル円)
(出所:Reuters)
① 先週の ECB 理事会後から急
落していたユーロドルの反
発に連れ、ドル円上昇。
② 米企業決算の不振や、米 12
月耐久財受注の予想比下振
れを受けてドル円は軟化。
③ FOMC 後のドル円は、米金利
急落を背景に弱含み。
①
②
来週のチャ-ト分析
日足 QJ PY=E B S
③
(出所:Reuters)
日足 QE U R =E B S
2014/12/01 - 2015/02/12 (GMT)
2014/12/01 - 2015/02/12 (GMT)
価格
価格
122
1.24
120
1.22
1.20
118
1.18
116
1.16
114
1.14
112
1.12
.12
0
01日
16日
01日
2014年 12月
16日
01日
16日
2014年 12月
02日
2015年 1月
15 2
01日
16日
2015年 1月
02日
15 2
<ドル円、日足、一目均衡表>
<ユーロドル、日足、ボリンジャーバンド>
・雲の中を推移。
・ボリンジャーバンドとは移動平均±2σ(σ=標準偏差、ここ
・2/6 雲上限は 119.28 円、下限は 114.48 円。
では 20 日間の平均)を上限・下限とするバンド。
・バンド下限付近から反発。
来週の主な材料
2/2(月)
(米)12 月個人所得・支出、1 月製造業 ISM
2/3(火)
(日)1 月マネタリーベース
2/4(水)
(日)12 月毎月勤労統計
(欧)1 月ユーロ圏製造業 PMI(確報)
(米)12 月製造業受注
(米)1 月非製造業 ISM
(欧)1 月ユーロ圏サービス業 PMI(確報)
2/5(木)
(米)第 4Q 非農業部門労働生産性(速報)、12 月貿易収支
(欧)12 月独製造業受注、ECB 月報
2/6(金)
(米)1 月雇用統計
(欧)12 月独鉱工業生産
(時間は全て現地時間)
(本ページの担当:井上)
(注)FAX 配信の停止を希望される場合は、下記までご連絡頂きますようお願い申し上げます。
グローバルアドバイザリー部
電話
03-4333-4255
7
FAX
03-4333-9845
担当:紺野