FOREX WEEKLY

2015 年 8 月 28 日
FOREX WEEKLY
市場営業統括部
チーフ・エコノミスト
山下えつ子
Tel: +1-212-224-4561 (ニューヨーク)
[email protected]
Global View 「米国の利上げと世界株安(2)」 → p.2
・ 国際金融市場は中国の利下げ実施とフィッシャーFed 副議長のやや強気な姿勢を受けて、少し落
ち着いてきた。
・ 次は Fed の利上げの有無に注目が集まるが、中国経済の先行きへの不安も残る。
US View
… 9 月利上げはどうなるか → p.3
・ 9 月利上げの可能性は低くなったが、まだ残る。
・ 4 日発表の雇用統計が重要。
FX Outlook
… リスクオフは一服 → p.4
<来週の予想ポイント>
ドル/円
横ばい
・
米経済指標に注目だが、雇用統計が重要。
ユーロ/円
横ばい
・
ECB理事会での追加緩和は恐らくない。
今週のレンジ
本日東京 9 時
来週の予想レンジ
今後 3 ヶ月の予想レンジ
ドル/円
116.15-123.50 円
121.03 円
120.00-122.50 円
120.00-127.00 円
ユーロ/ドル
1.1203-1.1713ドル
1.1244ドル
1.1050-1.1300ドル
1.0000-1.2000ドル
ユーロ/円
135.26-139.00円
136.10円
135.00-137.50 円
125.00-145.00 円
(今週のレンジは先週金曜日東京9時~本日東京9時、予想レンジは本日東京9時~来週金曜日東京9時)
・今週号本文はニューヨーク時間金曜日15:00までの情報をもとに作成しています。
・FOREX WEEKLYに関するお問い合わせは、現在お取り引き中の営業部/支店にお願い申し上げます。
・FOREX WEEKLY は弊行ホームページでもご覧頂けます。(http://www.smbc.co.jp/ マーケット情報→外国為替情報→
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現在の筆者の意見を示すのみです。データや数値の抽出範囲・基準は任意で設定している場合があります。データ・資料等につい
ては、数値等の誤りが含まれている可能性があります。本レポートに基づき、お客さまが投資のご判断をされた結果に基づき生じ
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い申し上げます。また、本レポートの全部または一部の無断コピー使用はご遠慮ください。
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FOREX WEEKLY 2015/8/28
Global View
「米国の利上げと世界株安(2)」
先週号(8/21 号)では米国の金融緩和の縮小と国際金融市場、特にエマージング株式市場の動揺
の関係について 2013 年以降のパターンを振り返って考えてみた。①QE 縮小や利上げ開始など、最初
のプレアドの時(サプライズ)と時期が近づいた時(不安の高まり)に大きな反応があるが、実施の
時には相場は一巡し終わり、むしろ相場好転となる、②不安心理が先行した相場は中国および世界景
気の減速懸念とセットになることが多い、の 2 点のパターンが見られる、というのが先週号で記した
ことである。
今回も「米国の利上げ先取り」と「中国リスク」が相乗的に相場のオーバーシュートを招いたとす
れば、米国の利上げが実施されると逆に相場は上昇する、ということになる。中国リスクについては、
25 日に中国が利下げを発表し、対応があったことでマーケットは一旦落ち着いた。一方、Fed のフィ
ッシャー副議長が市場の動きや中国経済の影響を注視しつつも、9 月の利上げ開始をオープンにした
ことで、マーケットも次は米国の対応を見ようと構えている。
マーケットとの対峙(“対話”というよりも現在は“対峙”の様相)では、フィッシャー副議長の
冷静でやや強気なスタンスはマーケットの不安や投機を一旦おさめる役割を果たした。だが、難しい
のはここからだろう。楽観的なシナリオは、4 日の米国の雇用統計が上振れ、9 月利上げ観測が自ず
と高まり、17 日に利上げ実施、マーケットはこれを好感。悲観的なシナリオは、4 日の雇用統計が下
振れ、9 月利上げ見送り、マーケットの動揺が再燃。マーケットが落ち着いたか否かは雇用統計を越
えないと判断がつかない。
もう一つ難しいのは相場ではなく、中国経済である。Fed が 9 月あるいは 10 月に利上げを実施す
るとしても、それまでに中国経済のハードランディングが発生しないからであり、中国経済のリスク
がないわけではない。中国経済が過去数年間に亘って減速し続けていることは以前に取り上げたが、
中国経済の負債の増大は解決しておらず、どのように解消されるのか、大きな問題がある。市場に自
由な動きを与えれば、株式市場も為替市場も大幅に下落しかねず、多かれ少なかれ、管理相場である
ことが価格の暴落を抑えている面が中国にはある。それは海外から見た場合、中国の市場がクラッシ
ュはしないとの安心感にも繋がっている。6 月下旬から 7 月にかけての中国株の下落や 8 月の人民元
切り下げがその安心感を揺らがせる一因となったと考えられるが、市場や経済へのコントロールはど
こまで効き得るのか。そこに不透明感がある。過去の日本や最近の米国が経験したようにバブルが崩
壊するものであれば、中国経済のバブルも崩壊するのか、それとも中国は崩壊を回避してバブルを萎
ませることが出来るのか。経済体制や政策が異なる国においては他国が出来なかったことが可能かも
しれないし、やはり同じ帰結かもしれない。どちらなのか分からないことが先行きへの予見を不可能
にしている。
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FOREX WEEKLY 2015/8/28
US View
… 9 月利上げはどうなるか?
(本欄は 8/29 の情報を含みます)
週明けの 24 日には米国の株式市場では一時、ダウは 15370 まで下落、S&P500 指数は 1867 まで下
落し、10 年債利回りはその中で 1.90%まで低下した。25 日に中国が預金準備率の 0.5%引き下げ、
ならびに基準金利の 0.25%引き下げを発表すると、欧米株、コモディティ相場は反発、週末には中
国上海総合指数も 3000 ポイント台へ回復して、越週。このままこれまでの相場をすべて回復するか
は不明だが、下げ止まり感が出た。
Fed の FOMC は 9 月 16-17 日に開催される。国際金融市場の混乱があり、米国の利上げはどうなる
のか。国内景気の緩やかな改善が続き、9 月に利上げが開始されてもおかしくはない状態にあった。
しかし足元の国際金融市場の動揺によって、26 日にはダドレーNY 連銀総裁は「9 月の利上げは以前
よりも説得力がなくなった」と発言した。9 月利上げの観測はこれで後退したが、28 日のフィッシャ
ーFed 副議長の CNBC とのインタビューでは「9 月利上げについての判断は尚早」。マーケットでは“9
月利上げの可能性はまだ残っている”との解釈となった。
9 月 FOMC での利上げの有無は不明なのだが、これらの発言から分かったことは、そもそも、“Fed
は 9 月利上げ実施を目指していた”ということだ。Fed は年内利上げ開始をプレアドし、7 月の FOMC
の声明文で利上げに近づいている印象を与えていたが、9 月利上げ開始をコミットしたことはない。
だが、ダドレーおよびフィッシャーは 9 月の利上げの可能性が“以前にはあった”と発言している。
そして“現時点では”、ダドレーは可能性が低くなったとしているが、フィッシャーはまだ可能性は
残る、としている。つまり、利上げを巡る状況は、“9 月の利上げにアプローチしていたが、外部情
勢が揺らいでおり、政策決定に影響を及ぼし得る”、というのが現在位置だと考えられる。
さて、ジャクソンホールで開催されたカンファレンスでは 29 日にフィッシャーFed 副議長が講演
した。ここで足元の金融情勢や中国情勢も踏まえた考え方が詳しく述べられた。ポイントは、①カン
ファレンスのテーマであるインフレに関しては、ドル高によるインフレ抑制に言及があったものの、
インフレ抑制要因は和らいでいき、いずれインフレ率が 2%の目標に戻る“reasonable なコンフィデ
ンスがある”と主張、②中国経済については、「中国経済が他国経済に及ぼしている影響と潜在的な
影響について通常よりも注視している」、③「米国の利上げが他国経済へ影響することは承知してい
る」、④「8 月の雇用情勢が 9 月 4 日に公表されるのを待っているところ」。
9 月の利上げの有無は未だオープンで、米国内では 4 日の雇用統計、海外情勢では中国の影響、を
Fed は重視している。
9 月の利上げについては、中国経済およびその影響の見極めに慎重になれば、米国の雇用統計が良
好でも利上げは見送られる可能性がある。一方で、今のところ、9 月の利上げを見送るとしても、今
後 2 週間で中国経済がクラッシュするのでなければ、一足飛びに“年内利上げ”までを解消すること
はなさそうだ。筆者の予想を確率の高い順番で言えば、①9 月見送り・10 月利上げ、②9 月利上げ、
③12 月利上げ、④来年以降。④の可能性は現時点では非常に低く、9 月利上げが見送られた場合、一
般にこれまで考えられていなかった 10 月 FOMC での利上げの可能性が③の 12 月利上げよりも高い。
10 月は議長記者会見がないため利上げができないとの見方があるが、予定された記者会見がない会
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FOREX WEEKLY 2015/8/28
合で利上げを決定した場合には TV 会議による記者会見を行うべく、Fed はテスト済みである。Fed
が“9 月 4 日の雇用統計まで見て大丈夫そうならば 9 月に利上げしよう”と以前に思っていたのであ
れば、9 月か 10 月に利上げが実施される、という目線で見ておくのがよいだろう。
今週発表された米国の経済指標は、4-6 月 GDP の上方修正、消費者信頼感指数および耐久財受注の
上振れ、と強めの指標が出ている。来週はシカゴ PM、製造業 ISM、そして 4 日に雇用統計が発表され
る。非農業部門雇用者数が 20 万人以上ならば、マーケットは 9 月利上げの可能性を高めに見始める
かもしれない。足元までのマーケットと Fed の利上げ観測は、利上げ観測が高まるとマーケットが動
揺し、利上げ観測が後退するとマーケットが落ち着く、というシーソーのような関係だった。だが、
マーケット自体が落ち着き始め、Fed が冷静さを失わず、米国の雇用統計が強かった場合、次の関係
は、
“Fed の利上げは世界経済が大丈夫だというシグナル→マーケットは好感”となるだろう。逆に、
雇用統計で非農業部門雇用者数が 15 万人以下となった場合、“Fed の 9 月利上げ観測が後退するだ
けでなく、米国にも景気減速が及んだ、という悲観論が持ち上がり、マーケットの混乱が再燃する”
ことになるだろう。筆者は 8 月のマーケットは米国利上げ観測と中国リスクを材料とする不安心理か
らのオーバーシュートが 8 割の理由だったと考えているほか(先週号の Global View 参照)、米国景
気は底固く、雇用も弱いとは考え難いと思っている。ただ、相場がこのまま好転一方向となるかは、
まだ注意が必要だろう。
FX Outlook
… リスクオフは一服
25 日に中国が利下げを発表し、
マーケットも好転した。ドル円は 24 日に 116 円台前半までドル安・
円高となったが、週末までに 120 円台へ上昇。ユーロドルも 24 日に 1.17 台前半まで一時ユーロ急騰
となったが、そこから週末にかけて 1.12 近辺までユーロは下落。かなり大きな動きだったが、落ち
着いてきた。
9 月には米国の FOMC があり、利上げの有無に注目が集まっている。国際金融市場の動揺や中国経
済の不透明感から 9 月の利上げの観測は後退していたが、28 日にフィッシャーFed 副議長が 9 月利上
げの可能性はまだ残ると示唆し、ドル買いの反応となった。国際金融市場の動揺が完全に終息したと
は言い難いが、不安先行の相場は中国の対応や Fed フィッシャー副議長の冷静な態度によって、落ち
着いてきたと見える。原油先物相場も週末には WTI 先物が 45 ドル台まで上昇しており、足元の相場
の投機性の高さを示唆している。
来週は 4 日に米国の雇用統計の発表がある。それに先立ち、31 日にはシカゴ PM、1 日に製造業 ISM、
2 日に ADP 雇用調査などの発表が予定されている。米国の景気は底固いが製造業は減速気味なので、
雇用統計前の経済指標は必ずしも 9 月利上げの可能性を高めず、4 日の雇用統計までマーケットは様
子見となるだろう。ドル円は 120 円超をキープしたまま進むと予想するが、雇用統計前に一段のドル
高となるためには、米国の経済指標が上振れるか、中国からグッドニュースが出た場合など、追加的
な良好な材料が必要である。
ユーロはドルが下落する場面で逆に大きくユーロ高となったが、反落。ユーロ高の進行で 3 日に開
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FOREX WEEKLY 2015/8/28
催される ECB 理事会での追加緩和の期待が膨んだが、マーケットの落ち着きで期待は相当程度、後退
しているだろう。追加緩和は現行の QE の規模の拡大か期間の延長のかたちが想定されるが、現行で
は来年 9 月までの期間を現時点で延長する必要もなく、現時点での追加緩和の方法自体が想像しにく
い。理事会後の総裁記者会見では、マーケットの動きを注視はするが静観、となろう。ただし、為替
ユーロは理事会での追加緩和の有無よりも、米国の経済指標で左右されるドルの動きに主導されると
予想する。このため、ECB から追加緩和の発表がなくても、ユーロは対ドルでユーロ安に向かう可能
性がある。
(データ出所:Reuters)
ディーラーに聞きました(来週のドル円相場の方向性~ブルベア)
月
7月
8月
週
20 日~
27 日~
3 日~
10 日~
17 日~
24 日~
31 日~
予想
+2
+2
±0
+2
-1
-4
-2
実績
中立
中立
中立
中立
中立
ベア
≪見方≫
当行の為替ディーラー(マーケット、カスタマー)8 名を対象に、来週の相場予想を聴取。今週の東京市場 9 時から、ドル
ブル(終値から1円以上のドル高)、中立(終値から上下1円内)、ドルベア(終値から1円のドル安)の三択で、結果を(ドルブル
人数-ドルベア人数)で表記。+(プラス)は円安ドル高、-(マイナス)は円高ドル安を示す。
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FOREX WEEKLY 2015/8/28
各種相場の動き
<債券(日本国債・10 年債利回り)>
<債券(米国債・10 年債利回り)>
<株(日経平均株価)>
<株(米ダウ)>
<株(上海総合指数)>
<株(ドイツ DAX 指数)>
<原油(WTI 先物(期近物))>
<金(NY 先物(期近物))>
(出所:Bloomberg)
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FOREX WEEKLY 2015/8/28
今週のプライスアクション(ドル円)
(出所:Reuters)
①
① 米株安と米金利低下に伴う
ドル売りが続き、ドル円は
徐々に下落。
② 世界的な株安を背景に、ド
ル円は一時 1 ドル=116.15 円
まで下落。
③ 中国の追加金融緩和策発表
や米当局者の 9 月利上げ観
測を後退させる発言を受け
て、米株と米金利が上昇し
たため、ドル円は上昇。
③
②
来週のチャ-ト分析
日足 JPY=EBS
(出所:Reuters)
日足 EUR=EBS
2015/01/29 - 2015/09/09 (TOK)
2015/04/22 - 2015/09/11 (TOK)
価格
価格
1.17
1.16
127.00
126.00
125.00
124.00
123.00
122.00
121.00
120.00
119.00
118.00
117.00
1.15
1.14
1.13
1.12
1.11
1.1
1.09
1.08
1.07
.12
02日 16日 02日 16日 01日 16日 01日 18日 01日 16日 01日 16日
15 2
15 3
15 4
15 5
15 6
15 7
自動
03日 17日 01日
15 8 15 9
01日 18日 01日 16日
15 4
15 5
15 6
01日
16日
15 7
03日 17日
15 8
01日
15 9
<ドル円、日足、ボリンジャーバンド>
<ユーロドル、日足、一目均衡表>
・ボリンジャーバンドとは移動平均±2σ(σ=標準偏差、ここ
・薄くなった部分を突き抜け、現在雲の上を推移。
では 20 日間の平均)を上限・下限とするバンド。
・9/4 の雲上限は 1.1124 ドル、下限は 1.1007 ドル。
・ドル円の値動きが大きく、バンドは上下に大きく拡大。
来週の主な材料
8/31(月)
(日)7 月鉱工業生産(速報)、7 月住宅着工件数
(米)8 月シカゴPM
(欧)8 月ユーロ圏 HICP(速報)
9/1(火)
(日)4~6 月期法人企業統計調査
(米)8 月製造業 ISM
(欧)8 月ユーロ圏製造業 PMI(確報)
9/2(水)
(中)8 月製造業 PMI
(日)8 月マネタリーベース
(米)第 2Q 非農業部門労働生産性(確報)、7 月製造業受注、ベージュブック
9/3(木)
(米)7 月貿易収支、8 月非製造業 ISM
9/4(金)
(日)7 月毎月勤労統計
(欧)8 月ユーロ圏サービス業 PMI(確報)、ECB 理事会
(米)8 月雇用統計
(欧)7 月独製造業受注、第 2Q ユーロ圏 GDP
(時間は全て現地時間)
(本ページの担当:阿部)
(注)FAX 配信の停止を希望される場合は、下記までご連絡頂きますようお願い申し上げます。
グローバルビジネス推進部
電話
03-6706-3211
FAX
7
03-6706-9721
担当:腰塚