FOREX WEEKLY

2015 年 2 月 27 日
FOREX WEEKLY
市場営業統括部
チーフ・エコノミスト
山下えつ子
Tel: +1-212-224-4561 (ニューヨーク)
[email protected]
Global View … 欧州の道のりは険しい → p.2
・ ギリシャ以外のユーロ圏諸国でも失業率の高止まりが見られる。このためマクロ経済や財政赤字
の縮小などの改善のデータに比べると、社会不安・政治不満が長引く。
US View
…
イエレン議長の議会証言の真意は? → p.3
・ イエレン議長の議会証言では、利上げ後ずれの様子はなかった。
・ 利上げを急ぐ様子もないが、利上げに向かっていることは確かだろう。
FX Outlook
… イベントを通過しても晴れない
→ p.4
<来週の予想ポイント>
ドル/円
横ばい
・
米国の経済指標に左右される。
ユーロ/円
横ばい
・
ユーロ圏にも経済指標の発表が予定されている。
・
日本には大きな材料がない。
今週のレンジ
本日東京 9 時
来週の予想レンジ
今後 3 ヶ月の予想レンジ
ドル/円
118.30-119.84 円
119.38 円
118.50-120.50 円
112.00-127.00 円
ユーロ/ドル
1.1184-1.1430ドル
1.1203ドル
1.1150-1.1350ドル
1.1000-1.1600ドル
ユーロ/円
133.55-135.94円
133.76 円
133.00-135.00 円
130.00-140.00 円
(今週のレンジは先週金曜日東京9時~本日東京9時、予想レンジは本日東京9時~来週金曜日東京9時)
・今週号本文はニューヨーク時間木曜日正午までの情報をもとに作成しています。
・FOREX WEEKLYに関するお問い合わせは、現在お取り引き中の営業部/支店にお願い申し上げます。
・FOREX WEEKLY は弊行ホームページでもご覧頂けます。(http://www.smbc.co.jp/ マーケット情報→外国為替情報→
フォレックス・ウィークリー)
本レポートは情報の提供を目的としており、何らかの行動を喚起するものではありません。ここに示した意見は本レポート作成日
現在の筆者の意見を示すのみです。データや数値の抽出範囲・基準は任意で設定している場合があります。データ・資料等につい
ては、数値等の誤りが含まれている可能性があります。本レポートに基づき、お客さまが投資のご判断をされた結果に基づき生じ
た損害・損失について当行は一切責任を負いません。投資や資金運用に関する最終決定は、お客さまご自身で判断されるようお願
い申し上げます。また、本レポートの全部または一部の無断コピー使用はご遠慮ください。
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Global View
… 欧州の道のりは険しい
ギリシャ新政権による金融支援のプログラム変更と債務再編を巡る要望は結局、現行のトロイカか
らの支援を 4 ヶ月間の延長することで、まずは合意となった。7 月には国債償還があるため、この延
長期間が切れる 6 月末までに、次の支援に関する協議と合意が必須となる。今回のギリシャとユーロ
圏諸国との協議の展開からは、次の協議もユーロ圏諸国が主導すると予想される。一方、その場合は
ギリシャ国内には社会不安・政治不安定が発生することになるだろう(本レポート 2/13 号参照)。
しかし、ギリシャの交渉は自己中心的だと批判されるが、国内事情を見ると同情の余地も少しある。
下のグラフはユーロ圏各国の失業率と 25 歳以下の若年層の失業率の推移である。金融危機、欧州債
務危機、財政緊縮、を通じて、ギリシャの失業率は大幅に上昇し、25 歳以下の失業率は一時期 60%
にまで上昇した。過去 1 年余り、失業率は若年層も含めて低下し始め、景気は上向いてきたと思われ
るが、失業率の水準は依然として高いうえ、労働市場の改善は景気に遅行するため、雇用や賃金を通
した国民の実感は決して上向いてはいないだろう。経済の改善に比して、政治は安定化する前に、一
旦、混乱することになる。
ギリシャ以外の国の失業率を見ると、スペインがギリシャ並みに悪く、イタリアも他国と違って失
業率がいまだに上昇。フランスも意外と苦戦している。分類すると、(1)ギリシャ、スペイン、(2)
ポルトガル、アイルランド、(3)イタリア、フランス、(4)ドイツ、といった感じだろうか。(2)
は財政緊縮を厳しくもやり遂げた姿を示しているが、(1)と(3)には危うさがある。つまり、ギ
リシャだけではなく、スペイン、イタリア、そしてフランスにも財政緊縮の長期化による国内政治の
不安定化のリスクが内在する。
失業率に見るように、金融危機の発生まではギリシャやスペインを含め、各国の経済は良好な方向
へ収斂していた。だが、危機後の状態は全く異なり、各国の利害は発散している。いずれ国内の政治・
社会情勢の混乱がユーロ圏のルール遵守の姿勢を凌駕するほどに大きくなってしまうのか。それより
も前に再び良好な方向へ収斂できるのか。欧州の回復の道のりは険しい。
(資料)Eurostat
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US View
… Fed 議長の議会証言の真意は?
24 日と 25 日にイエレン Fed 議長の議会証言が行われた。マーケットの注目点は利上げに対するス
タンスだった。1 月 FOMC の議事録では利上げ開始に対する慎重論が多数となった印象があったが、
議長の議会証言からは利上げを始める(=金融正常化を進める)方針に変更はない、と思われる。
米国の景気判断は依然として強気だった。特に雇用の改善を受けて自信と安心を強めている様子で
ある。2 月初の雇用統計では過去分も上方修正され、非農業部門雇用者数は 11 月には 42.3 万人増、
12 月には 32.9 万人増、1 月も水準は下がったが 25.7 万人増、と極めて強かった。来週 6 日には次回
雇用統計の発表があるが、20 万人台前半の数字が予想されている。失業率の低下に必要な月間雇用
増加数は 20 万人を下回ると考えられている。来週の雇用統計を含め、雇用情勢が著しく劣化しない
限り、当面、失業率は低下していく可能性が高い。これまで失業率は Fed の予想以上に速いペースで
低下し続け、現在は 5.7%である。Fed は 5.2%~5.5%を中期的な失業率として想定しているので、
この上限の 5.5%への到達は相当に近い視野に入ってきた。
こうした雇用情勢の改善とそれが今後も当面続くと予想されることが、Fed(イエレン議長)が「(賃
金が上昇し)インフレ率は 2%へ向かって上昇していく」という見通しがリーゾナブル、理にかなっ
ている、と考える根拠である。雇用改善→賃金上昇→インフレ上昇、というわけである。議会証言で
はインフレが上昇する“証拠”はあるのか、といった質問も出たが、何と言っても将来の予想でもあ
り、“証拠”はない。しかし、証拠はないが、今のところ、イエレン議長には“理にかなった自信が
ある”。
しかし、賃金は他方、時間当たり賃金は 2%近辺での横ばい圏のまま。雇用者数の多い小売業での
賃金引上げ(最低賃金引き上げという規制対応ではなく、労働者確保のため)のニュースや、西海岸
での港湾労働者による雇用契約を巡る争議、エネルギー業界でのストライキ、など局所的には賃金上
昇に関わるニュースが聞こえる。これがなかなか数字に出て来ないことと、その先にある賃金上昇→
インフレ上昇もまだ証拠がないことが不透明なのである。そして、その賃金とインフレに上昇の証拠
が出ない限り、マーケットは利上げ開始に懐疑的なままになる。Fed とマーケットのギャップはデー
タの根拠がないと埋まり難い。
来週の雇用統計のうち、失業率と賃金が特に注目される。また利上げ開始まで常に注目されること
になろう。一方、CPI も同様に重要だが。26 日に発表された 1 月の CPI はコア前月比が+0.2%、前年
比では+1.6%と、エネルギー価格が 1 月は一段と下落したにも関わらず、コアインフレの下落には明
瞭な波及は見当たらなかった。(エネルギー価格に連動する航空運賃やガソリン価格の下落で販売の
増加が期待される自動車は価格が上昇したが、これらの例はコストの下落が物価の下落に繋がるもの
とは少し異なる。)
では、利上げ開始に対するスタンスに変更がなかったとして、利上げはいつなのか。Fed は昨年来、
利上げの開始に向けて、テクニカルな準備を進めている。ゼロ金利から金利を引き上げ始めた際、短
期金融市場が混乱なく機能することが肝要で、そのためには入念な準備が必要となるが、恐らく 6
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月に利上げが始まるとしても、テクニカルには大丈夫であろう。議会証言でも金融政策の正常化、す
なわち利上げ開始に向けた方針やテクニカル面の説明もあった。
議会証言では、“patient”というフォワード・ガイダンスの意味は「少なくとも次 2 回の FOMC
では利上げはない」と明示したうえで、「利上げを開始する際には、それに先立ってフォワード・ガ
イダンスの”patient”を変更する」と述べられた。それに続き、「その場合に、2 回後の会合で利
上げを開始する、とは限らない」との注意も加えられた。議会証言におけるこの箇所の解釈は人によ
って異なるかもしれない。筆者の解釈は次の通りである。①“Patient”を外す時は利上げの可能性
を意識した時だ、という議長の説明だった。このため“patient”が外れた場合は利上げ開始が意識
されている。利上げが年内出来そうにないと思う状態では patient は外れない。②ただし、2 回後と
は限らないので、3 回後かもしれないが、それらはその時の内外情勢による。③議長の議長証言から
考えると、3 月(3/17-18)の FOMC で”patient”が外れる可能性もある。
3 月の FOMC で patient が外れても、マーケットは 6 月利上げの可能性を織り込もうとはしないか
もしれない(今回の議会証言に対する反応と同じく)。だが、9 月以降に利上げを開始するつもりで
あれば、patient は、たとえば 6 月の FOMC で外しても十分に間に合う。つまり、Fed が 9 月以降と思
うならば、3 月の会合では patient は外れない。したがって、このロジックで考えれば、3 月の会合
で patient が外れた場合には 6 月利上げ開始の可能性をまずは想定した方がよい。
議会証言では、議員からの質問には金融規制の緩和の必要性、Fed への監査強化、といった政治的
な質問や、中所得者の賃金が上昇していない、他国の金融緩和による“為替操作”によって製造業が
不利益を蒙っている、といった発言も多かった。議会という場であるだけに、質問も政治絡みなもの
が目立った。イエレン議長の答えは、金融規制を緩める必要はない、Fed の透明性は十分にある、賃
金はいずれ上昇する、各国の金融政策は自国の経済のため、などなど。賃金やドル高に関する回答は
それらが利上げの障害にはならない、という現時点での判断を示唆する。
27 日にシカゴ PM の発表、来週は製造業 ISM(2 日)、雇用統計(6 日)、Fed のベージュブック(4
日)などの発表が予定されている。3/17-18 の FOMC を前に、これらのイベントや経済指標にマーケ
ットも敏感になるだろう。
FX Outlook
… イベントは通過したが晴れない
ギリシャへの支援延長は 20 日にほぼ合意に至り、ギリシャからの改革案を受けて 4 ヶ月間の支援
延長がユーロ圏財務相によって承認された。ユーロは既に合意を織り込んでおり、そのニュースでは
ユーロ買戻しにはならず、ユーロドルは週半ばまで 1.13 台での推移が続いた。
ギリシャへの支援については、先週号で予めいくつかのシナリオを記したが、一つ考慮外だったの
は支援延長期間が 6 ヶ月ではなく、4 ヶ月になったことである。国債償還は 7 月、8 月に集中するが、
4 ヶ月では 6 月末で支援は終了してしまう。今回の成り行きからも、ギリシャのユーロ離脱やデフォ
ルトのリスクが小さいことが分かるので、これでデフォルトのリスクが高まったとは必ずしも言えな
い。しかし、国債償還時までカバーされなかったことで、5 月から 6 月に再び今回と同じようなやり
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FOREX WEEKLY 2015/2/27
取りが繰り返されることになる。ユーロ圏の政治の不確実性がユーロを不安定にする時期は早まり、
度合いは 6 ヶ月間延長に比べて大きい。
週初にギリシャ問題がクリアになり、米国では 24 日のイエレン Fed 議長の議会証言に注目が移っ
た。冒頭スピーチは景気に対して強気なコメントから始まり、一旦、債券利回りは上昇、ドルも上昇
した。ところが、議長が「利上げ開始のフォワード・ガイダンスである”patient”がはずれても 2
回後に利上げ開始とは限らない」と説明したことがマーケットでは特にハト派発言と捉えられたよう
で、債券利回りは低下(米 10 年債利回りは 2.0%を下回った)、ドルも下落へ向かった。ドル円は
119.80 円台から 118.60 円台へ下落。
26 日には、しかし今度は米国のコア CPI が思ったほど低下せず、これをきっかけにドルが反発。
一方でギリシャは支援金額が予想以上に大きくなるとのニュースなどが嫌気され、ユーロ下落。この
組み合わせで、ドル円は 119 円台半ばへ上昇、ユーロドルは 1.13 台半ばから 1.12 割れへ急落。
来週は米国で ISM や雇用統計といった主要経済指標の発表があるほか、ユーロ圏でも PMI、HICP、
などの経済指標の発表が予定されている。今週はユーロ圏と米国のイベントや経済指標を通過しても、
決定的な方向が出なかった。来週の経済指標等で晴れるとは限らないが、データが方向を作ることも
あるだろう。
なお、米国のイエレン議長議会証言では議員からは“為替操作”について議長が意見を求められた。
議員にはドル高を懸念する地元製造業向けアピールの目的があり、諸外国の金融緩和を通じた“為替
操作”を批判する発言が複数の議員からあった。だが、イエレン議長からは日本やユーロ圏の金融緩
和への批判はなく、また、ドル高の背景については金融政策の方向性の違いによる資金フローといっ
た説明があった。ドル高が米国経済に与える悪影響には言及はなく、ドル高のために利上げが後ずれ
る可能性は今のところ小さい。
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(データ出所:Reuters)
ディーラーに聞きました(来週のドル円相場の方向性~ブルベア)
月
1月
2月
3月
週
19 日~
26 日~
2 日~
9 日~
16 日~
23 日~
2 日~
予想
-3
+5
+3
±0
+5
+4
+1
実績
ブル
中立
中立
ブル
中立
中立
≪見方≫
当行の為替ディーラー(マーケット、カスタマー)8 名を対象に、来週の相場予想を聴取。今週の東京市場 9 時から、ドル
ブル(終値から1円以上のドル高)、中立(終値から上下1円内)、ドルベア(終値から1円のドル安)の三択で、結果を(ドルブル
人数-ドルベア人数)で表記。+(プラス)は円安ドル高、-(マイナス)は円高ドル安を示す。
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FOREX WEEKLY 2015/2/27
各種相場の動き
<債券(日本国債・10 年債利回り)>
<債券(米国債・10 年債利回り)>
<株(日経平均株価)>
<株(米ダウ)>
<株(上海総合指数)>
<株(ドイツ DAX 指数)>
<原油(WTI 先物(期近物))>
<金(NY 先物(期近物))>
(出所:Bloomberg)
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FOREX WEEKLY 2015/2/27
今週のプライスアクション(ドル円)
(出所:Reuters)
① イエレン FRB 議長の上院議
会証言がハト派的と受け止
められ、ドル円下落。
② 米 1 月コア CPI と米 1 月耐
久財受注が予想を上振れた
ことを背景に、ドル円上昇。
①
②
来週のチャ-ト分析
日足 QJ PY=EB S
(出所:Reuters)
2014/12/22
- 2015/03/04 (GMT)
日足 QEU R =EB S
2014/12/11 - 2015/03/10 (GMT)
価格
価格
122
1.24
1.22
120
1.20
118
1.18
116
1.16
1.14
114
1.12
.12
0
16日
01日
2014年 12月
16日
2015年 1月
02日
16日
2015年 2月
01日
14 12
02日
15 3
16日
2015年 1月
02日
16日
02日
2015年 2月
<ドル円、日足、一目均衡表>
<ユーロドル、日足、ボリンジャーバンド>
・雲の上を推移。
・ボリンジャーバンドとは移動平均±2σ(σ=標準偏差、ここ
・3/6 の雲上限は 118.71 円、下限は 118.16 円。
では 20 日間の平均)を上限・下限とするバンド。
・バンド下限を下抜け。
来週の主な材料
3/2(月)
(日)10-12 月期法人企業統計調査
(米)1 月個人所得・支出、2 月製造業 ISM
(欧)2 月ユーロ圏製造業 PMI(確報) 、2 月ユーロ圏 HICP(速報)
3/3(火)
(日)2 月マネタリーベース、1 月毎月勤労統計
3/4(水)
(米)2 月非製造業 ISM、ベージュブック
(欧)2 月ユーロ圏サービス業 PMI(確報)
3/5(木)
(米)第 4Q 非農業部門労働生産性(確報)、1 月製造業受注
(欧)1 月独製造業受注、ECB 理事会、ドラギ ECB 総裁記者会見
3/6(金)
(米)2 月雇用統計、1 月貿易収支
(欧)1 月独鉱工業生産、第 4Q ユーロ圏 GDP(改定値)
(時間は全て現地時間)
(本ページの担当:井上)
(注)FAX 配信の停止を希望される場合は、下記までご連絡頂きますようお願い申し上げます。
グローバルアドバイザリー部
電話
03-4333-4255
8
FAX
03-4333-9845
担当:紺野