2015 年 2 月 6 日 FOREX WEEKLY 市場営業統括部 チーフ・エコノミスト 山下えつ子 Tel: +1-212-224-4561 (ニューヨーク) [email protected] Global View … 原油相場の下落と金融市場の不確実性(2) → p.2 ・ 原油相場の下落が止まったように見える。 ・ これに伴い、今週は他の金融市場も巻き戻し。強い米国の雇用統計もこの動きに加勢した。 US View … 強い雇用統計を受けて → p.3 ・ 経済指標は強弱混じるが、雇用統計は強かった。 ・ 利上げ観測が再び戻る可能性がある。 FX Outlook … ギリシャに振らされた → p.4 <来週の予想ポイント> ドル/円 ユーロ/円 上昇 ・ 米国の経済指標への注目度高い。 横ばい ・ ギリシャ問題は再び材料外へ。 今週のレンジ 本日東京 9 時 来週の予想レンジ 今後 3 ヶ月の予想レンジ ドル/円 116.64-118.29 円 117.54 円 118.00-121.00 円 112.00-125.00 円 ユーロ/ドル 1.1278-1.1534ドル 1.1473ドル 1.1200-1.1400ドル 1.1000-1.1800ドル ユーロ/円 132.00-135.35円 134.83 円 133.00-136.00 円 130.00-140.00 円 (今週のレンジは先週金曜日東京9時~本日東京9時、予想レンジは本日東京9時~来週金曜日東京9時) ・今週号本文はニューヨーク時間金曜日正午までの情報をもとに作成しています。 ・FOREX WEEKLYに関するお問い合わせは、現在お取り引き中の営業部/支店にお願い申し上げます。 ・FOREX WEEKLY は弊行ホームページでもご覧頂けます。(http://www.smbc.co.jp/ マーケット情報→外国為替情報→ フォレックス・ウィークリー) 本レポートは情報の提供を目的としており、何らかの行動を喚起するものではありません。ここに示した意見は本レポート作成日 現在の筆者の意見を示すのみです。データや数値の抽出範囲・基準は任意で設定している場合があります。データ・資料等につい ては、数値等の誤りが含まれている可能性があります。本レポートに基づき、お客さまが投資のご判断をされた結果に基づき生じ た損害・損失について当行は一切責任を負いません。投資や資金運用に関する最終決定は、お客さまご自身で判断されるようお願 い申し上げます。また、本レポートの全部または一部の無断コピー使用はご遠慮ください。 1 FOREX WEEKLY 2015/2/6 Global View … 原油相場の下落と金融市場の不確実性(2) 2 月に入り、原油相場に下げ止まり感が出てきた。1 月には 50 ドル/バレル以下に沈んでいた WTI 先物は 50 ドル台へ浮上。まだ 51 ドル、52 ドルといった程度だが、下げ止まり上昇し始めたのかと 思える相場になってきた。 先週号に記した通り、原油価格がここから大きく上昇するためには、供給サイドで OPEC の減産や 米国の採掘大幅減少といった変化があることが重要である。需要サイドの、中国や欧州の景気の好転 も原油価格の押し上げ材料にはなるが、過去と異なり、供給の調整不良に大きな原因があるため、供 給サイドに変化がなければ、原油価格の大幅上昇を予想するのは困難である。 今のところ、米国でリグ数が減ってきたとのニュースはあるが、OPEC が減産に動きそうだとのニ ュースは聞こえない。価格の下落に対する耐性がまだ強いサウジが仕掛ける我慢比べに近く、劇的な 変化を期待するのはまだ早そうだ。欧州の景気はユーロ安の恩恵で、ドイツの ifo 景況指数の改善の ように底打ちも見えるが、他方、中国は HSBC 製造業 PMI が 50 割れとなるなど、金融緩和はあったが 今後の見通しは慎重だ。需要の持ち直しが原油価格を押し上げるとしても、これにも限界はありそう である。 しかし、50 ドル近辺でも下げ止まったとすれば、先週号の「原油相場の下落が金融市場の不確実 性を増している」という構図にも変化はあるだろう。今週は原油相場が下げ止まり、ごく小幅でも上 昇したことで、債券利回りは上昇した。加えて、これまで「原油価格の下落→米国の利上げ後ずれ」 との観測に繋がっていた連鎖も、米国の雇用統計の上振れで緩んだ。わずか 1 週間の動きで今後まで を予想するのは行き過ぎだろうが、今週の原油相場と金融市場の動きは先週号で取り上げた話の延長 となったので、下記に原油相場と他の金融市場の動きのグラフを参考に掲載しておく。 (データ)Bloomberg 2 FOREX WEEKLY 2015/2/6 US View … 強い雇用統計を受けて 原油相場に下げ止まり感が出始め、WTI 先物は今週、50 ドル/バレル前後で推移した。これに連れ て債券利回りは 10 年債利回りが 1.8%台へ上昇するなど、相場には全般的に巻き戻しが発生。6 日に 発表された雇用統計が強い数字となり、10 年債利回りは 1.9%台へ 10bps 以上、更に上昇した。 雇用統計は非農業部門雇用者数が 25 万 7 千人増。この数字自体も予想比上振れだが、過去分改訂 で 12 月分は 32 万 9 千人増、11 月分は 42 万 3 千人増、と大幅な上昇修正になった。11 月以降、雇用 の伸びは鈍化しているが、水準が非常に高く、1 月の FOMC 声明文で「雇用が“強い”」と表現が上 方修正されていたことと整合的な結果になった。30 日に発表された 10-12 月実質 GDP は前期比年率 +2.6%で予想比下振れ、2 日の製造業 ISM も悪化、と下振れの数字がある中で、Fed の利上げ後ずれ 予想が増えてきたが、今回の強い雇用統計を受けて、そうしたマーケットの予想は修正されそうだ。 原油相場が下げ止まれば、金融市場における不確実性も低減すると考えられるが、そうした相場の巻 き戻し的な動きとも相俟って、債券利回りの上昇やドル上昇の可能性が出てきた。その場合、WTI 先 物が 50 ドル~55 ドル/バレルであれば、10 年債利回りが 2.0%~2.2%、ドル円は 118 円~121 円辺 りが目安となる。これ以上の上値は、原油需給に供給削減などの明らかな変化があるか、Fed が改め て今年半ばの利上げ開始をリマインドしてくるか、また逆に、ギリシャなどリスク要因が相場を反対 方向へ引っ張ることはないか、など条件が必要である。 雇用統計をきっかけに、「やはり利上げは予定通り今年の半ば頃には始まる」という思惑が強まる が、しばらく Fed の正式なスタンス表明の場がない。Fed 議長による半期議会証言は上院では 24 日 に開催されると発表された。議会証言では、3 月の FOMC でフォワード・ガイダンスの“patient”を 変更するか否か、また利上げ時期をどう考えているのか、ヒントがあるかもしれない。 それまでの間、経済指標への注目度合いは強まる。30 日に発表された 10-12 月実質 GDP は 7-9 月 が+5.0%と高かったことを考慮すれば悪くはないだろうが、3%以上との予想に届かず、マーケット には悪い印象を与えた。ただし内訳は米国経済の状況に違和感なく沿っている。つまり、エネルギー 価格の下落によって個人消費が堅調、長期金利低下で住宅投資が底固く、他方、輸出は鈍化、設備投 資は未だ増勢が出ない。2014 年の年間の実質 GDP は+2.4%成長で中期成長率をやや上回る水準だっ た。先週号にも記したが、その水準の成長率は Fed が利上げを開始できると判断するのに十分で(Fed は中期成長率を 2.0%~2.3%と想定)、3%以上の成長が利上げ開始の必要条件ではない。 若干注意が必要なのはガソリン価格の今後の動きだ。下げ止まるだけでもガソリン価格下落の恩恵 はなくなる。昨年 10-12 月の原油価格の平均値は 73 ドル/バレル(WTI 先物ベース)、1 月は 47 ドル /バレル。1-3 月平均値が 10-12 月並みに戻るとすると、2 月、3 月は 86 ドルまで上昇している必要 がある(これは想定し難い)。このため、四半期ベースでは 1-3 月はまだ実質消費が持ち上げられる 可能性が高い。だが月次ベースでは、2 月は既に 1 月よりもガソリン価格が上昇しているため、前月 対比ガソリン価格下落の恩恵はなくなる。次第に消費者センチメントも悪化していく恐れもある。 来週は 12 日の小売売上高やミシガン大消費者センチメントが主要経済指標である。1 月の値引き 販売や足元のガソリン価格の下げ止まりが反映されると、弱めとなる。小売業からは消費の弱さを指 3 FOREX WEEKLY 2015/2/6 摘する声は聞こえないので、消費減速を心配する必要はまだないだろうが、雇用統計後の相場の持続 性という観点では、すべての経済指標が同じ方向に出るとは限らないので、上述のレンジよりも上値 を見るのは早いだろう。 今週の主要経済指標である製造業 ISM は 55.1 から 53.5 へ悪化、非製造業 ISM は 56.7 でやや上振 れ。製造業はドル高の影響といった業者コメントはなく、西海岸での荷積み・荷下ろしの遅延の影響 がコメントとしては目立つ。このため、ISM の悪化から景気が悪化しているとダイレクトに判断する のは尚早である。年始の 1/2 号に記載したが、米国では西海岸の港湾労働者によるスローダウンと呼 ばれる荷役作業の遅延(一種のスト)が発生しており、過去数ヶ月間、これによる部品入荷や製品出 荷の滞りが生じている。労使交渉は収束するどころか、このままでは 29 の西海岸の主要港湾が 5 日 ~10 日の閉鎖となる恐れがある、と事態は悪化してきた。部品や素材の搬入が遅れてサプライチェ ーンへの影響が懸念される輸送機器、加工金属、化学などのほか、輸出への影響も懸念されている。 賃上げ、年金、社会保障など、労使契約の内容は多岐にわたるが、5 年間の多年度契約であるため、 労使とも簡単には譲れない。行政の介入による解決、または港湾閉鎖となるか。今のところ、どちら も考えられるが、港湾の荷動きは製造業だけではなく、輸送業、外食産業などサービス業に広く影響 があるため、港湾閉鎖となると経済活動と経済データには歪みをもたらすことになる。 FX Outlook … ギリシャに振らされた ギリシャ新政権はユーロからの離脱を望まないが、一方で、債務減免、財政緊縮策の緩和などを目 指し、欧州各国および ECB との協議を始めた。ギリシャはその過程で要求(希望?)を通すことは難 しいと認識して方針を一部変えつつあったようだが、ECB の措置は厳しかった。ECB はギリシャとの 会談の後、4 日に「ギリシャ国債を適格担保の最低条件の適用除外とするとの特例措置を解除する」 と突如発表。ユーロドルは一時 1.15 台までユーロ高だったが、この発表を受けて 1.13 近くまでユー ロ急落。その後は、ギリシャの銀行への緊急流動性供給は続けられる(=銀行の連鎖破綻のリスクは 小さい)ことに安堵したユーロ買戻し。週末は米国の雇用統計が強く、再びユーロ反落。ギリシャを 巡る動向で一喜一憂となった後に米国要因も加わって、週後半のユーロ相場は大きく上下した。 来週 12 日の EU サミット時にドイツのメルケル首相はギリシャのツィプラス首相と会談する予定で ある。恐らくメルケル首相もギリシャに対して厳しい姿勢を崩さず、ギリシャは当初の案を相当に変 更せざるを得なくなろう。この場合、ギリシャ国内では期待を裏切られた国民がデモなどの抗議を起 こす可能性があり、ギリシャ国内の不安定さは続く。しかしマーケットにとっては、ユーロ離脱、ギ リシャ銀行破綻、債務減免再交渉、といったことがリスク要因としては高く、ギリシャ国内の不安定 さは国内にとどまるのでリスク要因としては低い。どのような展開でもどこかにリスクは残るだろう が、ギリシャ国内にリスクが止まるシナリオの場合はマーケットでは安堵あるいは、ほとんど材料と ならないだろう。今回の ECB の断固とした対応を見ても、ギリシャが長期に亘るユーロ売り要因であ り続ける可能性は低いだろう。 9 日・10 日には G20 財務相・中銀総裁会議がトルコで開催される。ギリシャ問題も議題となるだろ うが、ECB の QE 決定後でもあり、ユーロ圏全体の経済動向について、より重きを置いた討議となる 4 FOREX WEEKLY 2015/2/6 のではないか。また、中国も既に金融緩和を発表しているが、これについてもユーロ圏と同様に状況 の把握が必要とされるだろう。他方、米国では経済指標は強弱が混じっているが、6 日に発表された 雇用統計が強い内容だったため、為替相場はドル買い、ドル円も 119 円台へ上昇した。G20 会合でも、 米国の景気点検、利上げの可能性、そのグローバルな影響、といったことが議題とされるだろう。 日本も含めてであるが、各国で金融緩和が続き、通貨は通貨安競争と言われる状態に入っている。 反対サイドでは米国の利上げシナリオが意識され、ドル高。こうした状況を米国がどこまで容認する のか。現状が通貨安誘導のための金融緩和(?)と判断されている場合には、それを牽制する文言が 声明文に入るのか。為替市場では G20 会合はそれらが注目点となるが、各国の金融緩和の意図や理由 が様々で総体として金融緩和や通貨安競争を諌める文言を入れることは難しい、と考えられるほか、 通貨安で景気が浮揚するならば米国も今はドル高を容認すると考えられる。つまり、表立って通貨安 競争や金融緩和を諌める文言やドル高を是正するような文言は入らない、と予想される。 (データ出所:Reuters) ディーラーに聞きました(来週のドル円相場の方向性~ブルベア) 月 12 月 週 22 日~ 5 日~ 12 日~ 19 日~ 26 日~ 2 日~ 9 日~ 予想 +5 +2 +3 -3 +5 +3 ±0 実績 ブル 中立 ベア ブル 中立 中立 ≪見方≫ 1月 2月 当行の為替ディーラー(マーケット、カスタマー)8 名を対象に、来週の相場予想を聴取。今週の東京市場 9 時から、ドル ブル(終値から1円以上のドル高)、中立(終値から上下1円内)、ドルベア(終値から1円のドル安)の三択で、結果を(ドルブル 人数-ドルベア人数)で表記。+(プラス)は円安ドル高、-(マイナス)は円高ドル安を示す。 5 FOREX WEEKLY 2015/2/6 各種相場の動き <債券(日本国債・10 年債利回り)> <債券(米国債・10 年債利回り)> <株(日経平均株価)> <株(米ダウ)> <株(上海総合指数)> <株(ドイツ DAX 指数)> <原油(WTI 先物(期近物))> <金(NY 先物(期近物))> (出所:Bloomberg) 6 FOREX WEEKLY 2015/2/6 今週のプライスアクション(ドル円) (出所:Reuters) ① 米 10-12 月期 GDP は前期比 年率+2.6%と市場予想対比 下振れ、ドル円は弱含み。 ② 日本の不調な 10 年債入札結 果を受けて円金利が上昇 し、ドル円は軟化。 ① ② 来週のチャ-ト分析 日足 QJ PY=EB S (出所:Reuters) 2014/12/03 - 2015/03/02 (GMT) 日足 QEU R =EB S 2014/12/03 - 2015/03/02 (GMT) 価格 価格 122 1.24 120 1.22 1.20 118 1.18 116 1.16 114 1.14 112 1.12 .12 0 16日 01日 2014年 12月 16日 02日 2015年 1月 16日 01日 16日 02日 16日 02日 2014年 12月 2015年 1月 2015年 2月 16日 02日 2015年 2月 <ドル円、日足、一目均衡表> <ユーロドル、日足、ボリンジャーバンド> ・雲の中を推移。 ・ボリンジャーバンドとは移動平均±2σ(σ=標準偏差、ここ ・2/13 の雲上限は 119.06 円、下限は 115.31 円。 では 20 日間の平均)を上限・下限とするバンド。 ・バンド中心付近を推移。 来週の主な材料 2/9(月) (日)12 月国際収支、1 月消費者態度指数、1 月景気ウォッチャー調査 (米)1 月労働市場情勢指数 2/10(火) (日)12 月第 3 次産業活動指数、1 月マネーストック 2/11(水) (日)市場休場(建国記念日) 2/12(木) (日)12 月機械受注、1 月国内企業物価指数 2/13(金) (米)2 月ミシガン大消費者センチメント(速報) (中)1 月 CPI、1 月 PPI (米)1 月小売売上高、12 月企業在庫 (欧)第 4Q ユーロ圏 GDP (時間は全て現地時間) (本ページの担当:井上) (注)FAX 配信の停止を希望される場合は、下記までご連絡頂きますようお願い申し上げます。 グローバルアドバイザリー部 電話 03-4333-4255 7 FAX 03-4333-9845 担当:紺野
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