2014 年 11 月 7 日 FOREX WEEKLY 市場営業統括部 チーフ・エコノミスト Tel: 山下えつ子 +1-212-224-4561 (ニューヨーク) [email protected] Global View … 日銀のスーパーサプライズ → p.2 ・ 31 日の日銀の追加緩和はサプライズだった。 ・ 意図の有無にかかわらず、株式相場の押し上げには貢献した。 … 中間選挙は共和党圧勝 → p.3 US View ・ 中間選挙は共和党が両院で過半数を獲得。大統領選に向けて議会が今後どう動くか興味深い。 FX Outlook … 日米欧の金融政策を巡って大きな動き → p.4 <来週の予想ポイント> ドル/円 ドル高・円安 ユーロ/円 横ばい ・ まず米雇用統計に注目。 ・ ドル高・円安のトレンドの勢い。 ・ ユーロ安は対円では進みにくい。 今週のレンジ 本日東京 9 時 来週の予想レンジ 今後 3 ヶ月の予想レンジ ドル/円 109.18-115.52 円 115.18 円 114.00-116.50 円 110.00-120.00 円 ユーロ/ドル 1.2364-1.2614ドル 1.2380ドル 1.2250-1.2400ドル 1.2000-1.2700ドル ユーロ/円 137.68-144.23円 142.55円 140.00-145.00 円 135.00-150.00 円 (今週のレンジは先週金曜日東京9時~本日東京9時、予想レンジは本日東京9時~来週金曜日東京9時) ・今週号本文はニューヨーク時間木曜日正午までの情報をもとに作成しています。 ・FOREX WEEKLYに関するお問い合わせは、現在お取り引き中の営業部/支店にお願い申し上げます。 ・FOREX WEEKLY は弊行ホームページでもご覧頂けます。(http://www.smbc.co.jp/ マーケット情報→外国為替情報→ フォレックス・ウィークリー) 本レポートは情報の提供を目的としており、何らかの行動を喚起するものではありません。ここに示した意見は本レポート作成日 現在の筆者の意見を示すのみです。データや数値の抽出範囲・基準は任意で設定している場合があります。データ・資料等につい ては、数値等の誤りが含まれている可能性があります。本レポートに基づき、お客さまが投資のご判断をされた結果に基づき生じ た損害・損失について当行は一切責任を負いません。投資や資金運用に関する最終決定は、お客さまご自身で判断されるようお願 い申し上げます。また、本レポートの全部または一部の無断コピー使用はご遠慮ください。 1 FOREX WEEKLY 2014/11/7 Global View … 日銀のスーパーサプライズ 31 日の日銀の追加緩和決定は完全なサプライズだった。決定会合では反対票が 4 票も入り、5 対 4 のぎりぎりの可決、と内部でもいろいろな議論があったことが窺える。 中銀の政策運営上、コミュニケーションは重視される。政策の変更が金融市場に急激な変化をもた らすことを避けることが出来るからだ。今回の日銀の決定に際しては、直前まで黒田総裁が発する経 済・物価判断から追加緩和の実施が予想出来なかったことで、大きなサプライズとなった。総裁の説 明では、サプライズを与える目的はなかった(円安、株高の誘導は政策の目標ではない)、としてい るので意図の有無は追及しないが、客観情勢は円安・株高。ドル円は 115 円台、日経平均株価も一時 17000 円台まで上昇した。 2 年程度で消費者物価を 2%へという目標にリスクが生じた以上、追加緩和は必要だった。物価や 景気の下振れが一時的だという判断を変更するか、変更せずに引き延ばすか。ギャップは判断の変更 によって埋められ、そうであるならば追加緩和を実施する、という運びである。緩和実施のタイミン グは今回が適切か、次回が適切か、の議論はあっただろう。コミュニケーションを重視して次回とし た場合、日銀は追い込まれたと信認を失う恐れがあり、今回とすればコミュニケーションを犠牲にし たことを非難される恐れがある。こうした議論が反対票 4 票の理由の一つだろう。ただ、結果論を言 えば、判断の修正と同時にアクションも起こしたのは正解だったかもしれない。株式相場の押し上げ に(意図せずして?)成功したからである。 今回の追加緩和で久し振りに外国人投資家も大幅に買い越しに傾いた(下右図、最終週は 11/1 ま での1週間)。デフレマインドからの好転を継続させるため追加緩和を決定した、という説明によっ て日銀の本気度が高いと見えるのだろう。日銀の法的な政策目標ではないだろうが、現在の日本にと って、円安・株高誘導がもし必要ならば、常時とは異なり、為替レートや株価も政策の一つの決定要 因という扱いで、もう少し前面に出して論じてもよいかもしれない。 2 FOREX WEEKLY 2014/11/7 US View … 中間選挙は共和党圧勝 4 日に実施された中間選挙は上院、下院ともに共和党が過半数を制する結果となった。共和党の得 票数は両院とも一般予想を上回り、「共和党圧勝、民主党最悪の夜」と当地では報じられた。当日の 株式市場は小幅上昇し、選挙結果はポジティブに受け止められた、と考えられる。また選挙後の為替 相場はドル高だった。 今後の米国の政治がこれでどう変わるか。共和党が両院過半数でも大統領が民主党であるため、共 和党の法案がすべて通るわけではない。このため、オバマ大統領あるいは民主党と共和党の妥協・協 力が円滑な政策運営には必要となるが、①これまで妥協を嫌ったオバマ大統領がこれを機に変わるの か、②共和党内でもティーパーティは長老と一線を画しているが、共和党内でも協調はあるのか。昨 年の政府閉鎖という失敗を各政治家は教訓にしているが、どの程度、議会が円滑に運営されるかは分 からない。ただ、今回、共和党が躍進しても 2 年後の大統領選でも有利とは限らない。一方、民主党 も当然、今回の惨敗で危機感を強めている。このため、2 年後の大統領選を睨むと、両党は政治の混 乱を招いて不人気になるよりも、妥協しながら人気を得ようとするだろう、という見方もある。大統 領選そのものも興味深いが、今後 2 年間の政治が再び混迷・停滞するのか、あるいはスムーズに前進 するのか、年明けからの政治の展開も面白くなる。 今回、中間選挙で民主党が敗北した理由には外交政策なども含むオバマ大統領の不人気もあるだろ うが、中低所得者層の所得が伸びず、失業率の低下などマクロの経済データが示すほど人々が現政権 下での景気回復を実感していないことも背景になるだろう。本日は雇用統計も発表されるが、賃金上 昇率は金融危機後、2%近辺から上昇せず、足元のガソリン等エネルギー価格の下落がどうにか個人 消費にとってプラスとなっているに過ぎない。失業率の低下やエネルギー価格の下落による実質所得 の増加に支えられて、年末商戦に向けて個人消費は底固いと思われるが、名目賃金が上昇しないと GDP を実質 3%台へ押し上げるほどの力強さにはならず、いつまでも人々の実感が好転しないことに なる。14 日に発表される小売売上高など、足元の消費は良好と予想されるが、どうもはっきりしな い状態がまだ暫く続きそうだ。 雇用統計は関連指標からは非農業部門雇用者数が 23 万人程度の伸びと考えられる。失業率が今回 も低下すると金融政策の出口が意識されやすい。反対に、出口の後ずれの憶測が出そうなのは、非農 業部門雇用者数が 20 万人以下の伸び、失業率が上昇、賃金横ばい、といった組み合わせだろう。た だ、後者の場合、現時点では Fed の金融政策、特に利上げ時期について大きな影響はないと思われる ので、マーケットの反応は一時的だろう。 米国景気の現局面には海外景気の減速の影響はほとんど見えず、一方、内需も広く緩やかな増加基 調にある。雇用情勢の改善が続き、利上げ後ずれを考える状態ではない。 3 FOREX WEEKLY 2014/11/7 FX Outlook … 日米欧の金融政策を巡って大きな動き 31 日の日銀の追加緩和実施を受け、ドル円は大幅に円安に動いた。ドル円は 31 日に 109 円から 113 円へ上昇。今週も黒田日銀総裁のスピーチや米国の中間選挙の終了を通して、115 円台半ばまで上昇 した。 31 日の日銀の追加緩和の決定はマーケットにとってサプライズだったものの、経済指標の下振れ に対して今回、手が打たれたことはポジティブに受け止められている。先週は米国の FOMC で一切揺 らぎなく金融政策の出口の方向が示され、その直後の日銀の追加緩和決定だったため、ドル円には両 者の政策の方向性の違いを反映したドル高・円安のトレンドがはっきりと出ている。ドル円ならびに 日経平均株価の急激な上昇で、利益確定売りも挟んで相場はややボラタイルな動きだが、ドル高・円 安のトレンドが覆るリスクは今のところ小さい。 ユーロ圏では 6 日に ECB 理事会が開催された。理事会では QE など追加緩和はなかった。だが、事 前に ECB 内部の意見相違がクローズアップされて QE に消極的な態度になるのではないか、との憶測 があったほか、日銀の追加緩和で ECB に対する期待も盛り上がっていたため、今後のバランスシート 拡大にコミットメントする文言があったことが実態以上に大きなインパクトをもたらした。ECB はカ バードボンドと ABS の購入プログラムを今後少なくとも 2 年間継続すること、TLTRO を 2016 年 6 月 まで継続すること(ここまでは前回すでに声明文に記載)、そしてこれらの資産購入プログラムでバ ランスシートは 2012 年初の規模まで拡大することを声明文に明記した。これまでもバランスシート を 2012 年初つまり金額では 1 兆ユーロ近く拡大することをドラギ総裁が口頭で説明していたため、 実は新たな情報ではない。ただ、声明文の中に明記されたことで、明瞭なコミットメントとなった。 そして、カバードボンドと ABS の購入だけでは 1 兆ユーロに届かないことから国債購入に対する期待 を引っ張り続けることが出来る。カバードボンド購入は始まったばかり、ABS 購入はこれからである。 国債購入の決定は来年に持ち越しとなる可能性があるが、それでも期待を持続させることは出来るだ ろう。 ユーロは今回の理事会後の総裁記者会見を受けて、対ドルで 1.23 台へと下落。追加緩和(特に QE) を実施せずにユーロ安を誘導することに ECB は成功した。ただ、ECB と日銀では日銀の方がバランス シート拡大ペースが速くなるため、今後 1 年あるいはそれ以上、日銀も緩和を縮小しないとすれば、 ユーロ円は円安にバイアスがかかりやすくなる、と思われる。 4 FOREX WEEKLY 2014/11/7 (データ出所:Reuters) ディーラーに聞きました(来週のドル円相場の方向性~ブルベア) 月 9月 週 29 日~ 6 日~ 13 日~ 20 日~ 27 日~ 3 日~ 10 日~ 予想 +6 +4 +2 +4 +3 +7 +7 実績 中立 中立 ベア ブル ブル ブル ≪見方≫ 10 月 11 月 当行の為替ディーラー(マーケット、カスタマー)8 名を対象に、来週の相場予想を聴取。今週の東京市場 9 時から、ドル ブル(終値から1円以上のドル高)、中立(終値から上下1円内)、ドルベア(終値から1円のドル安)の三択で、結果を(ドルブル 人数-ドルベア人数)で表記。+(プラス)は円安ドル高、-(マイナス)は円高ドル安を示す。 5 FOREX WEEKLY 2014/11/7 各種相場の動き <債券(日本国債・10 年債利回り)> <債券(米国債・10 年債利回り)> <株(日経平均株価)> <株(米ダウ)> <株(上海総合指数)> <株(ドイツ DAX 指数)> <原油(WTI 先物(期近物))> <金(NY 先物(期近物))> (出所:Bloomberg) 6 FOREX WEEKLY 2014/11/7 今週のプライスアクション(ドル円) (出所:Reuters) ① 日銀の予想外の追加緩和決 定を受け、ドル円は急上昇。 ② 米中間選挙の共和党勝利や ADP 雇用統計が好感され、ド ル円上昇。 ③ 日本株の海外短期筋の手仕 舞い売りをきっかけとした 急落を受けて、ドル円下落。 ② ③ ① 来週のチャ-ト分析 日足 QJ PY=EB S (出所:Reuters) 2014/09/01 - 2014/11/13 (GMT) 日足 QEU R =EB S 2014/09/01 - 2014/11/13 (TOK) 価格 価格 1.34 114 1.32 111 1.3 108 1.28 105 1.26 102 1.24 自動 0 01日 16日 01日 2014年 9月 16日 2014年 10月 01日 16日 2014年 9月 03日 14 11 <ドル円、日足、ボリンジャーバンド> ・ボリンジャーバンドとは移動平均±2σ(σ=標準偏差、ここ では 20 日間の平均)を上限・下限とするバンド。 ・バンド上限付近を推移。 01日 16日 2014年 10月 03日 14 11 <ユーロドル、日足、ボリンジャーバンド> ・ボリンジャーバンドとは移動平均±2σ(σ=標準偏差、ここ では 20 日間の平均)を上限・下限とするバンド。 ・バンド下限付近を推移。 来週の主な材料 11/10(月) (中)10 月 PPI、10 月 CPI 11/11(火) (日)9 月国際収支、10 月消費者態度指数、10 月景気ウォッチャー調査 (米)債券市場休場 11/12(水) (日)9 月第 3 次産業活動指数、10 月マネーストック 11/13(木) (日)10 月国内企業物価指数、9 月機械受注 (欧)11 月 ECB 月報 (中)10 月固定資産投資、10 月小売売上高、10 月鉱工業生産 11/14(金) (米)10 月小売売上高、11 月ミシガン大消費者センチメント(速報)、9 月企業在庫 (欧)10 月ユーロ圏 HICP(確報)、第 3Q ユーロ圏 GDP (時間は全て現地時間) (本ページの担当:井上) (注)FAX 配信の停止を希望される場合は、下記までご連絡頂きますようお願い申し上げます。 グローバルアドバイザリー部 電話 03-4333-4255 FAX 7 03-4333-9845 担当:紺野
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