平成 23 年度 家庭用品事故情報収集調査 フマル酸エステル類

平成 23 年度 家庭用品事故情報収集調査
フマル酸エステル類及びマレイン酸エステル類の皮膚感作性調査
国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 五十嵐良明、伊佐間和郎、西村哲治
-------------------------------------------------------------------------------概要
家庭用品の防カビ剤として用いられていたフマル酸ジメチルによる接触皮膚炎が報告さ
れている。日本国内の家庭用品の実態調査の結果、フマル酸ジメチルの他、マレイン酸ジ
メチルやフマル酸ジブチルも検出された。これらはフマル酸ジメチルとはアルキル基ある
いは cis-trans の幾可異性体の違いでしかなく、皮膚感作性や交差反応性が疑われる。本研
究では、類似構造を有するフマル酸ジエステル及びマレイン酸ジエステル計 6 種の皮膚感
作性を OECD ガイドラインに採用されている LLNA:DA 法によって評価した。その結果、
試験したマレイン酸ジエステル及びフマル酸ジエステルはいずれも皮膚感作性を有すると
評価した。マレイン酸ジエステル及びフマル酸ジエステルともアルキル基が長くなるにつ
れ感作性強度は弱くなる傾向が認められた。フマル酸ジメチル及びマレイン酸ジメチルは、
中程度の陽性対照物質として知られるα-hexyl cinnamaldehyde よりも感作性は強く、フマ
ル酸ジブチル及びマレイン酸ジブチルが同程度あるいはそれ以下と考えられた。同じアル
キル基を持つフマル酸ジエステルとマレイン酸ジエステルを比較したところ、フマル酸ジ
エステルの方がマレイン酸ジエステルよりも感作性は強かった。同じ化学構造式を有する
物質であっても幾可異性体の違いで感作性強度が変化することがわかった。