平成 25 年度 家庭用品規制基準調査 亜リン酸エステル系老化

平成 25 年度 家庭用品規制基準調査
亜リン酸エステル系老化防止剤の皮膚感作性試験
国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 五十嵐良明、伊佐間和郎、河上強志
-------------------------------------------------------------------------------概要
亜リン酸エステル類の一つである亜リン酸トリフェニルは塩化ビニル(PVC)樹脂の老
化防止剤(酸化防止剤)として使用されている。近年、PVC 製手袋を使用して接触皮膚炎
を生じた症例が報告され、その原因物質の一つとして添加されていた亜リン酸トリフェニ
ルがあげられた。亜リン酸トリフェニルについては、急性毒性と皮膚刺激性については知
られているが、その他の毒性情報はない。またそれ以外の亜リン酸エステル類に関しても
有用な毒性情報はほとんど存在せず、特に皮膚感作性の有無については全く知られていな
い。そこで、代表的な亜リン酸エステル類 7 種の皮膚感作性を LLNA:DA 法により評価し
た。まず、亜リン酸エステル類のアセトン:オリーブ油(4:1)
(AOO)への溶解性を調べ
た。トリチオ亜リン酸トリラウリル及び亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)の 2
種の溶解性が悪いものの、他の 5 種については 25%で完全に溶解した。亜リン酸トリフェ
ニル、亜リン酸トリ-p-トリル、亜リン酸トリクレジル、亜リン酸 2-エチルヘキシルジフェ
ニル及び亜リン酸トリス(2-エチルヘキシル)をマウスに塗布した時、溶媒塗布時と比較し
てリンパ節重量の増加及び ATP 量の SI 値が 2.5 を超え、HCA と同等かそれよりやや弱
い中程度の感作性強度を有する物質と判定した。トリチオ亜リン酸トリラウリル及び亜リ
ン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)の感作性は検出しなかった。これら 2 物質は溶
解性が悪く、皮膚浸透性がないことから反応が認められなかったと考える。亜リン酸エス
テルは酸化防止剤として樹脂や潤滑油へ添加されるが、今回試験した以外にも炭素差の長
短で多くの物質がある。また反応中間体として使用され、ジアルキルハイドロゲンホスフ
ァイトは潤滑油に極圧剤として添加される。今回試験した亜リン酸エステル類の中に明ら
かな皮膚感作性を有する物質があったことから、今後亜リン酸エステル類の使用実態を調
査し、家庭用品に使用された際の健康被害発生防止のためのリスク評価を行うことが望ま
しい。
-------------------------------------------------------------------------------学会発表
五十嵐良明・小濱とも子・河上強志・伊佐間和郎:ポリ塩化ビニル製品添加剤の皮膚感作
性評価, フォーラム 2014 衛生薬学・環境トキシコロジー(2014.9, つくば)
伊佐間和郎・河上強志・小濱とも子・五十嵐良明:亜リン酸エステル系酸化防止剤の細胞
毒性と皮膚感作性, 第 51 回全国衛生化学技術協議会年会(2014.11, 別府)