分子配列制御による機能性材料の創出と 低環境負荷な化学品製造プロセスの開発 産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センター 崔 星集(チェ ソンジッ) 本講演では、1)分子配列制御を活用した新たな機能を持つ材料の創出、2) 資源利用の高度化を含めた新しい低環境負荷な化学品製造プロセスの開発に関 する研究成果を紹介する。 材料中の分子配列を分子間相互作用によって精密に制御する事は、材料の新 しい機能を引き出し、より有用な材料を創出する手段として有効である。本研 究では、分子間相互作用の一つである水素結合を利用して、テトラチアフルバ レン骨格を有する化合物やピンサー型白金錯体を設計・合成し、小さな単分子 から導電性超分子ポリマーや3色変化発光材料を開発した。これは単分子とし ての特性を維持しながら、分子配列制御によって物性を引き出し、新しい機能 性材料の創出に成功した事例である。 また、機能性材料等の化学製品が社会でより広く活用されるには、その製造 プロセスを低環境負荷なものに革新する必要がある。その為には反応廃棄物の 低減や、化石資源以外の豊富な原料を有効活用可能な化学反応技術の開発が重 要である。そこで、余分な反応剤を必要とせず、高分子を得る新しい重合法の 開発や砂(シリカ)とアルコールから一段階でテトラアルコキシシランを合成 する方法を開発した。これらは、機能性材料を高純度かつ高効率に得る低環境 負荷な製造プロセスであり、持続可能な社会の構築に貢献できると期待してい る。
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