屋外広告物の都市景観への影響についての分析 環境デザイン学研究室 福井裕明 【はじめに】 現在、屋外広告物は様々なところに存在しているが、特に都市中心部や繁華街には 多くの屋外広告物が存在しており、都市景観に大きな影響を与えている。しかし、今まで屋外広告 物のどういった面が景観に影響を与えるかを客観的に論じられることは少なかった。そこで、本研 究では、屋外広告物の有無による都市景観の変化について比較・分析することで屋外広告物のどう いった点が都市景観に影響を及ぼすのかを探っていきたい。 【調査地概要】 本研究の調査地は京都市一番の繁華街の一角に位置する河原町三条とする。調査 地は、京都市の広告物に関する条例では「屋外広告物規制区域第 5 種地域」に指定されているが、 意匠については実質的にはどのような屋外広告物も掲示できるようになっている。ただし、ビルの 高層の部分に関しては他地域からの遠景に影響があるので地の色に白を用いるように指導している。 【分析の方法】 まず、河原町三条の周囲4方向から対角上に写真を撮影した。この撮影方法の方 が通りに平行に撮影するよりも分析に適当である。次にその写真から広告を削除した画像を作成し た。画像の解像度は 1600×1200pixel(1 ピクセルは視覚として約 30″、正面のファサードで 1.5cm 四方の大きさ)である。4地点それぞれについてこの2種類の画像を使って分析を行った。分析する 際の指標は『色彩』と『形状の複雑さ』の 2 つとした。この 2 指標は景観を規定する上で最も重要 な指標であると考える。前者は、画像の各ピクセルの色素情報を Labで表し、それぞれについて 平均値・標準偏差を求め、次に具体的に色彩の表れ方の変化を見るために広告のある画像とない画 像の差をラスター画像で表した。この際、図の色彩まで認識できる画像(160×120pixel・同約 12′ 30″・同 15cm 四方)と大きな広告の図の色のみ表れる画像(16×12pixel・同約 2°6′・1.5m 四方) を用い、色彩の表れ方を比較した。 後者は、カラー情報を破棄した画像を二値化し、そこからフラ クタル次元を求めた。フラクタル次元の算出法は様々あるが、今回はメッシュ法を用いた。この方 法は一般性が高くコンピュータで計算するのに適した方法であるため用いた。 【結果と考察】 『色彩』は色味ab明るさLともにはっきりと変化が現れた。標準偏差は広告 物があるほうが大きく、広告物のあるほうが色彩が多様であることがわかった。また、Lに関して は広告物がないほうが平均値・標準偏差ともに大きかった。これは、屋上広告や突出広告によって 陽の光がさえぎられているからであろう。また、解像度の細かいほうに比べて粗いほうはほとんど 色彩の表れ方に変化がなかった。これは、画像のなかで屋外広告物の占める割合が小さいために各 ピクセルのなかに広告物の色彩が反映されていないからであろう。 『形状の複雑さ』は、フラクタル 次元に大きな違いは表れなかった。ここから、景観の形状にとって屋外広告物の有無はほとんど影 響しないということがわかった。これは、都市景観全体に対する屋外広告物の面積割合が意外に小 さい(約 4∼10%)ことが原因であると考えられる。以上のより次の結論が導かれる。①屋外広告物 が景観の中で占める面積は小さいく、形状による景観への影響は小さい②屋外広告物による景観上 の色彩の変化は大きい。これより、屋外広告物はその形状よりもその色彩で都市景観に変化を与え ると言える。従って、屋外広告物をコントロールするときはその形状よりも意匠の色彩をコントロ ールしたほうが効果があると言えよう。
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