機械受注と株価の調整は一時的の可能性

景気循環研究所レポート
機械受注と株価の調整は一時的の可能性
2016 年 1 月 14 日
株安の背景に海外収益環
境の悪化懸念
年明け以降、下落が続いた日本の株式相場は、1 月 13 日にいったん上
昇したものの、14 日には再び大幅に下落した。4 日と 6 日に発表された中
国の景気指標(製造業・サービス業 PMI)の下振れに加えて、原油相場(WTI
期近物価格)が 12 日に約 12 年ぶりの安値を記録したことから、市場では
海外景気の減速懸念が一段と強まった。今後、市場が警戒する海外景気の
悪化が現実のものとなれば、比較的底堅い国内景気に対しても、設備投資
計画の下方修正など、様々な影響が波及しかねない。しかし、その可能性
は小さいとみている。
14 日に内閣府が発表した機械受注統計をみると、設備投資の先行指標
機械受注は底堅さを維持
である「船舶・電力を除く民需」は、直近 11 月こそ前月比 14.4%減少し
たものの、9 月と 10 月に受注が大きく増加していたこともあり、10-11
月平均の受注額は、7-9 月期(月平均)を 5.7%上回っている。機械メー
カーへの聞き取り調査をもとにした 10-12 月期の内閣府受注見通し(前期
比 2.9%増)を上回っていることもあり、設備投資は今後、底堅い推移が
期待できる。
嶋中 雄二
景気循環研究所長
なお、
「船舶・電力を除く民需」は、昨年 7-9 月期に前期比 10.0%減少
しているが、これは昨年初めから年央にかけて、海外の収益環境が悪化し、
日本企業の直接投資収益(経常収支・第一次所得収支の内訳項目)が減少
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
した影響と考えられる(図 1)。その後、直接投資収益は 10、11 月と急速
シニアエコノミスト
している。
宮嵜
に持ち直しており、機械受注が年明け以降も堅調に推移する可能性を示唆
図 1. 直接投資収益は機械受注に先行する
浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
40
(対数表示、年率・兆円)
(対数表示、年率・兆円)
直接投資収益(右目盛)
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
福田
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
25.6
12.8
6.4
30
3.2
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
1.6
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
機械受注
(船舶・電力を除く民需、左目盛)
0.8
0.4
20
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年、四半期)
(注)季節調整値(直接投資収益は当研究所算出)。直近は15年10-11月平均値。
(資料)内閣府「機械受注統計調査報告」、財務省「国際収支状況」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
1
2016 年 1 月 14 日
株価は直接投資収益
に遅れて動く
一般に、海外の収益環境の変調は、設備投資よりも先に金融市場に反映さ
れるとみられるが、直接投資収益と株式相場の間にも、一定のタイムラグが
存在する。過去をみると、日本株(日経平均株価)は、直接投資収益に 1~2
四半期遅れて動く傾向が見受けられる(図 2)。
株価は今後、持ち直
しへ
中国など新興国景気の減速とは対照的に、米国や日本、ユーロ圏の景気は
比較的堅調に推移している。加えて、市場混乱の震源地である中国のみなら
ず、インフレ率が物価目標から大きく下振れている日本やユーロ圏には、追
加金融緩和を実施する余地がある。日本株は今後、現実の良好な海外収益環
境を反映するかたちで、持ち直しに転じる可能性がある。
図 2. 海外投資収益と株価の関係
(対数表示、円)
(対数表示、年率・兆円)
32,000
日経平均株価(左目盛)
25.6
12.8
直接投資収益(右目盛)
6.4
16,000
3.2
1.6
8,000
0.8
0.4
4,000
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
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13
14
15
16
(年、四半期)
(注)直接投資収益は当研究所季節調整値、直近は15年10-11月平均値。日経平均株価の直近は16年1月4~13日平均値。
(資料)財務省「国際収支状況」、日本経済新聞社をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(16.1.14 宮嵜
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浩)
2016 年 1 月 14 日
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