設備投資の回復がもたつく可能性

景気循環研究所レポート
設備投資の回復がもたつく可能性
2015 年 4 月 13 日
機械受注の増勢が鈍化
内閣府が 4 月 13 日に発表した 2 月の機械受注統計によると、設備投資
の先行指標である「船舶・電力を除く民需」は、1 月の前月比 1.7%減に
続き、2 月も同 0.4%減少した。前年比では引き続き増加しているが、増
加率は 14 年 12 月の 11.4%に比べ、1 月が 1.9%、2 月は 5.9%と、増勢
が落ちている(図 1)。1、2 月平均の受注額(季節調整値)は 14 年 10-12
月の受注額(同、月平均)を 3.8%上回っていることからみて、機械受注
の増加基調は途切れていないとみられるが、それでも 1-2 月の受注増加ペ
ースは、機械メーカーが 14 年 12 月下旬時点で想定した 15 年 1-3 月期の
見通しをやや下回っている(1-2 月時点の受注見通し達成率は 98.9%、当
研究所試算)
。少なくとも、機械メーカーが事前に想定したペースでは、
機械受注は伸びていない模様だ。
製造業に変調の兆し
年明け以降の景気指標をみると、鉱工業生産指数の増勢がやや鈍化して
おり、日本銀行「短観」(15 年 3 月調査)の大企業・製造業の業況判断 DI
も、前回 14 年 12 月調査から横ばいにとどまっている。家計の雇用・所得
環境が引き続き良好であるのに対して、企業部門、特に製造業に変調の兆
嶋中 雄二
景気循環研究所長
しが出ている。
生産を取り巻く環境の変化は、設備投資に対する企業の判断にも影響を
及ぼす。過去を見ると、製造業の景況感を示す「製造業 PMI」は、機械受
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
シニアエコノミスト
宮嵜
いる(図 1)
。直近 15 年 3 月の製造業 PMI は、改善・悪化の目安となる 50
近傍まで低下しており、機械受注の減速が今年半ば頃まで続く可能性を示
唆している。
浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
福田
注(船舶・電力を除く民需)の前年比に対し、3 ヵ月程度先行して動いて
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
図 1. 製造業の景況感と設備投資の関係
75
(%ポイント)
(前年比、%)
70
機械受注(船舶・電力を除く民需、右目盛)
60
40
65
60
20
55
50
0
45
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
-20
40
35
製造業PMI(3ヵ月先行、左目盛)
-40
30
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
25
-60
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年、月次)
(注)製造業PMIは「改善・増加」-「悪化・減少」、直近は15年3月。機械受注の直近は15年2月。
(資料)内閣府「機械受注統計調査」、Markit・日本資材管理協会(JMMA)をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
1
2015 年 4 月 13 日
米国・中国の製造業 PMI
製造業の景況感の変調は、日本に限った話ではない。米国および中国でも、
製造業の景況感は弱含んでいる(図 2)。日本にとって米国と中国は主要な輸出
先であり、日本の製造業が米国と中国の景気動向に左右されるケースは少なく
ない。米国では 14 年の秋頃、中国では 14 年半ば頃から、製造業 PMI が弱含み
に転じている。今後は輸出の減速から製造業の収益が鈍化し、設備投資にやや
慎重な姿勢が強まる可能性がある。
過度の期待は後退へ
輸出や設備投資の減速が見込まれる一方で、賃上げに象徴される家計の所得
環境の改善や、経済対策(14 年度補正予算)の効果が夏場にかけて現れるとみ
られることから、国内景気の底割れは回避できる見通しだ。ただ、株式市場に
おける過度の景気回復・業績改善期待は、いったん後退する可能性がある。
図 2. 米国・中国・日本の製造業 PMI
(年、月次)
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
65
60
米国(右目盛)
55
60
50
45
中国(右目盛)
40
55
35
30
60
50
55
45
50
45
40
40
35
日本(左目盛)
30
25
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年、月次)
(注)米国はISM製造業景況指数、中国はHSBC製造業景況指数、日本はMarkit/JMMA製造業PMI。直近はいずれも15年3月。
(資料)ISM(米国供給管理協会)、HSBC、Markit、日本資材管理協会(JMMA)をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(15.4.13 宮嵜
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
2
浩)
2015 年 4 月 13 日
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