景気循環研究所レポート 景気循環週報(米国) 2015 年 3 月 12 日 米国シェールオイル減産で原油価格は上昇へ ~15 年の需給見通しはタイト化~ 原油掘削設備の稼働数が 大幅減少 原油価格は、15 年 1 月下旬を底に上昇に転じたものの、その後の戻り は鈍い。一般的には、原油価格の大幅下落は、サウジアラビアによる減産 見送りによるところが大きいと、理解されている。また、サウジアラビア の原油政策は、簡単には変わらないとの見通しの下、原油先物市場(WTI) では、原油価格の上昇は限定的と予想されている。原油先物市場をみると、 16 年末時点の予想価格は 1 バレル=60 ドル、17 年末でも同 65 ドルとな っている。 しかし、今後は原油市場の需給ひっ迫を背景に、市場予想より速いペー 嶋中 雄二 景気循環研究所長 スで原油価格が上昇する可能性がある。北米の原油掘削設備の稼働数は、 シェールブームに乗り、2009 年以降、大幅に増加してきたが、原油価格 の下落に伴い、14 年 10 月をピークに減少に転じた。3 月 6 日に終わった 宮嵜 浩 週の原油掘削設備の稼働数は、922 基となり、昨年のピークから 4 割以上 シニアエコノミスト 03-6213-6573 miyazaki-hiroshi @sc.mufg.jp 減少した。さらに、足元の減少ペースは速く、下げ止まりの気配すらない 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6213-2608 fukuda-keisuke @sc.mufg.jp (図1) 。 図1.原油掘削設備とガス掘削設備の稼働数 (基) 1,800 10/10 1,601 原油掘削設備 1,600 1,400 1,200 1,000 本週報は、嶋中雄二の見方に基 づき、宮嵜・福田が執筆を担当し ています。 3/6 922 ガス掘削設備 800 600 400 200 三菱ビルヂング (出所)Baker Hughes 1 (年/月/日、週) 2015/11/3 2015/4/3 2014/9/3 2014/2/3 2013/7/3 2012/5/3 2012/12/3 2011/10/3 2011/3/3 2010/8/3 2010/1/3 2009/6/3 2008/4/3 2008/11/3 2007/9/3 2007/2/3 2006/7/3 2005/12/3 2005/5/3 2004/3/3 2004/10/3 東京都千代田区丸の内 2-5-2 2003/8/3 景気循環研究所 2003/1/3 0 2015 年 3 月 12 日 国際エネルギー機関 この生産調整を受ける形で、国際エネルギー機関(IEA)は、原油の供給見 が供給見通しを大幅 通しを大幅に下方修正している。図 2 は、IEA が毎月発行している「原油市 下方修正 場レポート」をもとに、世界の原油需給の増減(前年差)をみたものである。 2014 年は、OPEC が減産しなかったこともあり、大幅な供給過剰となり、価 格下落をもたらした(14 年供給増:日産 193 万バレル、需要増:日産 64 万 バレル)。 ところが、2 月の原油市場レポートによると、15 年の見通しは、既に、供 給増と需要増がバランスしている(供給増:日産 81 万バレル、需要増:日産 91 万バレル)。これは、前述の通り、シェールオイルの原油掘削設備の稼働 数が大幅に減少したことを反映したものだろう。14 年 12 月の原油市場レポ ートでは、15 年の供給増加見通しは 133 万バレルと、約 40 万バレルの供給 超過となっていたのが、様変わりといえる。 (百万バレル/日) (前年差) 2.00 図2.世界の原油需給(増減実績及び見通し) opec供給 (左目盛) 1.20 1.00 1.70 1.33 1.05 1.10 0.60 0.00 -1.00 0.10 見通し 世界供給 (左目盛) 2.20 1.27 -0.78 非opec供給 (左目盛) 120 1.93 100 0.91 0.81 1.97 0.64 0.55 0.50 (ドル/バレル) (前年差) 0.81 80 60 40 世界需要 (左目盛) 20 0 -2.00 原油価格(WTI) (四半期・前年差) (右目盛) -3.00 2011 2012 2013 2014 -20 15年 1-3月 -40 -60 2015 (注)15年1-3月期の原油価格の前年差は、14年1-3月平均と15年1月1日~ 3月11日までの平均を比較 (年) (出所)IEA『 Oi l Ma rket Report Ta bles』 需給タイト化で、原 油価格は上昇へ 米国のシェールオイルの生産調整は、極めて速いペースで進んでおり、原 油市場の需給は次第に引き締まっていくだろう。サウジアラビアが減産見送 り姿勢を変えなくても、原油価格は、需給タイト化を受け、比較的速いペー スで上昇することが予想される。 (以 (15.3.12 福田 巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。 2 上) 圭亮) 2015 年 3 月 12 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2015 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。 3
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