抗核抗体が高い乾癬患者にBio製剤を導入する際の留意点

◎抗核抗体が高い乾癬患者に
製剤を導入する際の留意点
Bio
乾癬患者の治療前の検査スクリーニング
で 抗 核 抗 体 が 高 い こ と が わ か っ た の で す が、
全身性エリテマトーデスと診断されるのは、
アメリカリウマチ協会による分類基準では①頬
部紅斑、②円板状皮疹、③光線過敏症、④口腔
内潰瘍、⑤関節炎、⑥漿膜炎、⑦腎障害、⑧神
経障害、⑨血液学的異常、⑩免疫学的異常、⑪
製剤の導入への留意点をご教示ください。
Bio
抗核抗体、以上の 項目のうち4項目以上が見
︵北海道・皮膚科︶
回答
東京慈恵会医科大学
皮膚科学講座
簗場広一
られる場合です。しかしながら、抗TNF α
抗体による薬剤誘発性ループスの半数以上は分
類基準を満たさないため、分類基準にとらわれ
ずに診断する必要があります。
報告により差はありますが、抗TNF α
に最も問題になるのが、全身性エリテマトーデ
症するケースが報告されておりますが、臨床的
TNF α 抗体により様々な自己免疫疾患を発
抗体や IL-12/23 p40
抗体といった生物学的製剤
が広く使用されるようになりました。中でも抗
近年になり、乾癬に対して、抗TNF α
ループスを発症する頻度は、抗TNF α 抗体
症するのはごく一部であり、実際に薬剤誘発性
しかしながら、抗核抗体や抗 ds-DNA
抗体が陽
転化した患者の中でも薬剤誘発性ループスを発
核抗体は半数以上で、抗 ds-DNA
抗体は ∼
%程度で、陽性化することがわかっています。
抗体を長期にわたって投与することにより、抗
講師
東京慈恵会医科大学
皮膚科学講座
主任教授
中川秀己
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2)
3)
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1)
を投与された患者のうち0・1∼1%程度と考
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スに類似した症状を呈する薬剤誘発性ループス
です。
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えられています。
抗T N F α 抗 体 の 導 入 前 に 抗 核 抗 体 が 陽
はステロイドの全身投与が必要になる場合もあ
ります。投与中止から改善までには、 カ月を
要するとされております。
10
薬剤誘発性ループス以外にもごく稀ではあ
性があるため、定期的に抗核抗体、抗 ds-DNA
抗体の力価を測定するとともに、皮疹の出現や、 りますが、抗TNF α 抗体により皮膚筋炎、
性の患者は自己免疫疾患への感受性が高い可能
1)
4)
期投与により徐々に陽転化する可能性が高いの
抗核抗体が陰性のケースでも、前述のように長
出現に注意する必要があります。また導入前に
ど、全身性エリテマトーデスに関連する症状の
腎機能障害、漿膜炎、関節痛、中枢神経障害な
ると考えます。
れらの発症の可能性を常に念頭に置く必要があ
りますので、抗TNF α 抗体導入の際にはこ
んが、血管炎や多発性硬化症の発症の報告もあ
あります。抗核抗体の有無とは関連はありませ
抗リン脂質抗体症候群が発症したという報告も
文献
薬剤投与を中止することで症状が改善しますが、
漿膜炎や腎障害などの臓器障害を来した場合に
De Rycke L, et al : Antinuclear antibodies following
infliximab treatment in patients with rheumatoid
Ramos-Casals M, et al : Autoimmune diseases induced
by TNF-targeted therapies : analysis of 233 cases.
Medicine (Baltimore), 86, 242-251 (2007)
に抗核抗体が陽性だった場合と、陰性だった場
α 抗体による薬剤誘発性ループスは基本的に
うがより発症リスクは高いようです。抗TNF
な研究報告では導入前から陽性だった場合のほ
規模な研究はありませんが、症例報告や小規模
合で薬剤誘発性ループスの発症率を比較した大
で、同様の注意を払う必要はあります。導入前
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arthritis or spondylarthropathy. Arthritis Rheum, 48,
1015-1023 (2003)
Poulalhon N, et al : A follow-up study in 28 patients
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1)
2)
3)
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treated with infliximab for severe recalcitrant
psoriasis : evidence for efficacy and high incident of
biological autoimmunity. Br J Dermatol, 156, 329-336
(2007)
Ramos-Casals M, et al : Autoimmune diseases induced
by biological agents : a double-edged sword?
Autoimmune Rev, 9, 188-193 (2013)
4)
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