Title PHYSIOLOGICAL STUDIES ON NON-SPORE

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PHYSIOLOGICAL STUDIES ON NON-SPORE-FORMING
SULFATE-REDUCING BACTERIA( Abstract_要旨 )
Miyoshi, Hideo
Kyoto University (京都大学)
1966-11-24
http://hdl.handle.net/2433/212038
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【3
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学 位 の 種 類
農
学
博
学 位 記 番 号
論
学位授与の 日付
昭 和 41年 1
1月 24 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
PHYSI
OLOGI
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REDUCI
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A
農
博
第 1
46号
(芽胞非形成硫酸塩還元細菌 の生理学的研究)
(主 査)
論文 調査 委員
教 授 木 俣 正 夫
教
授
門
田
元
教
授
池 田 静 徳
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ノ
論
文
内
容
の
要
旨
硫酸塩還元細菌 De
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ansは, 硫酸塩 および有機物の存在す る嫌気的な水域 にひろ く
分布 し, 硫酸塩 を還元 して硫化水素を生産す る無胞子 の嫌気性細菌で ある。 本論文 は この細菌 の増殖 およ
び硫酸塩還元反応 (硫酸 呼吸) における有機物 の役割 を生理 ・ 生化学的に解析 した一 連の研究 を とりま と
めた もので ある。
著者 はまず この細菌 の栄養要求 を くわ しくしらべ, その増殖 には F e十
十
, M g 十十 などの金属 イオ ンの他
に数種のア ミノ酸が必須で あること, およびアデ ノシ ン 3 リン酸などある種 のヌクレオチ ドによ って増殖
が促進 され ることを兄いだ した。 この結果 に もとづいて著者 は新 しい合成培地 を考案 し, この細菌 を天然
物 を含まない培地中で増殖 させ ることには じめて成功 した。 つ ぎに これ を基礎培地 と して用い, どのよ う
な有機化合物がエネルギ- 源ない し炭素源 と して増殖 に利用 され るかを しらべ , 淡水株 (淡水域 か ら分離
された菌株 ) で は乳酸 , ピル ビン酸 およびオキサル酢酸が, また海水株 (海水域 か ら分離 され た菌株で,
3%程度の Na
Cl を含む培地に増殖す る)
では これ ら 3
種 の化合物 の他に リンゴ酸 , フマル酸 およびア ラ
ニ ンが利用 され ることを明 らかに した。
つ ぎに静止細胞およびその音波破砕液 を用いて, 硫酸還元反応 において水素供与体 として利用 され る化
合物 の種類 を くわ しく検討 し, 静止細胞の場合 には, 淡水株では乳酸 , ピル ビン酸 , オキサル酢酸 および
ギ酸が, 海水株ではそれ らの他に リンゴ酸 , フマル酸 およびア ラニ ンが利用 され るが, 細胞破砕液 の場合
には, いずれ の株 において も乳酸 , ピル ビン酸 , オキサル酢酸 , ギ酸, リンゴ酸 , フマル酸 およびア ラニ
ンが用い られ ることを明 らかに した。 主 と して これ らの結果 か ら著者 は, 培養および静止細胞 の レベルで
見 られ る淡水株 と海水株 との間の基質利用性 の差 は両者 の細胞膜 の透過性 の差 に起因す るもので あるが,
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Cl の濃度が大 きい影響 を与 え ることを指摘 した。 つ ぎに前記 の各有
その透過性 には増殖環境 における N
機化合物が硫酸塩 を終局水素受容体 と した場合 に そ れ ぞ れ ど の よ うな中間生成物 を経て脱水素 され るか
を, 静止細胞 および無細胞系を用いて定量的に解析 し, この細菌 の硫酸呼吸における呼吸基質 の代謝経路
-
88ト ー
を解 明 した。
炭素源 と しての有機化合物の利用に関 しては, 培養系 を用 いて
の
1
4C
1
4
Cで ラベル した種 々の有機化合物か ら
の菌体成分へ の移行 を観察 し, ギ酸以外 の前記 の化合物 の炭素は菌体成分 と して同化 され ることを
明 らかに した。
最後に, この細菌 の主要 な生活環境で ある海底および湖底堆積物 中における有機酸 およびア ミノ酸 の分
布を定量的に観察 し, 硫酸塩濃度 の十分 に高い水域では この細菌 の増殖 はア ミノ酸 の濃度 によ って, また
その硫酸還元反応 の活性 は有機酸 と くに乳酸 , ピル ビン酸 およびギ酸 の濃度 によ って, それぞれ制約を受
けるもの と推定 した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
養殖漁業の行なわれ る沿岸海域や産業廃水 あるいは都市廃水 によ って汚染 され る河川の河 口域などでは
しば しば多量の硫化水素が発生 し, 有用水族 に大 きい被害 を与 えてい る。 このよ うな水域 における硫化水
素 の生産が, 主 と して硫酸塩還元細菌 De
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an吊 こよる溶存硫酸塩 の還元 に起因す るも
ので あることはすでに古 くか ら知 られてい るが, この細菌 の増殖 および硫酸塩還元反応における有機物の
役割 についてはまだ明確 な説 明がな されていない。
従来 この細菌 の生理や代謝に関す る研究が困難で あ ったのは主 と してそれを合成培地 中で増殖 させ るこ
とが不可能で あ ったためで ある。 著者 はまず その栄養要求 を くわ しく検討 し, この細菌 の十分な増殖を可
能 にす る合成培地を調製す ることには じめて成功 した。
この合成 培地 を利用 した詳細な研究 によ って, 淡水株 および海水株の硫酸塩還元細菌が炭素源 およびエ
ネルギー源 と して利用 しうる有機化合物の種類 を明 らかに し, 従来不 明瞭で あ った淡水株 と海水株 との問 /
Cl 濃度 に依存す る細胞膜透過性 の差
の有機化合物利用性 の差 を明確 に し, その差が両株 の増殖環境 の Na
に由来す ることを指摘 してい る。
つ ぎに静止細胞および無細胞系を用いて この細菌 による硫酸塩還元反応すなわ ちこの細菌独特のエネル
ギー獲得手段で ある硫酸呼吸における呼吸基質 と しての乳酸 , ピル ビン酸, オキサル酢酸 , ギ酸, リンゴ
酸 , フマル酸 およびア ラニ ンの代謝過程 を定量的に解析 し, その代謝経路 の全貌をほぼ明 らかに してい る
が, これ らはいずれ も微生物生理学上重要 な新知見で ある。
最後 に著者 は天然 の水域 における有機酸 およびア ミノ酸 の分布を定量的に観察 し, その結果 および前記
の微生物生理学的研究 の結果 か ら自然界での硫酸還元反応 における有機物の役割 について考察 し, これ に
明快 な解釈 を与えてい る。
以上のよ うに この論文 は微生物生理学 に多 くの重要な知見 を加 えたばか りでな く, 水域 における硫化水
素発生の機作 を明 らかに した点で水産学 に も寄与す るところが大 きい。
よ って本論文 は農学博士 の学位論文 と して価値 あるもの と認 め る。
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