KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 新規5-HT_3受容体拮抗薬の化学療法剤誘発消化器症状へ の作用に関する薬理学的研究( Abstract_要旨 ) 尾崎, 昭夫 Kyoto University (京都大学) 1999-09-24 http://hdl.handle.net/2433/181471 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 氏 名 お ざき あき お 尾 崎 昭 夫 ( 薬 学) 学位 ( 専攻分野) 博 士 学 位 記 番 号 1 8号 論 薬 博 第 6 学位授与 の 日付 平 成 1 1年 9 月 2 4日 学位授与 の要件 学 位 規 則 第 4 条 第 2項 該 当 学位論文題 目 新規 5HT3 受容体括抗薬 の化学療法剤誘発消化器症状への作用 に関す る薬理学 的研究 論文調査委員 許 諾 ) 赤 池 昭紀 論 教 授 佐 藤 公道 文 内 容 の 要 教 授 佐 治英 郎 旨 HT3 )受容体括抗薬 に明確 に関連付 け られている薬理作用 は,化学療法薬 によ り誘発 され る唱吐 に対 す る セ ロ トニ ン3(5抑制作用であ る。 近年, 5HT3 受容休 の機能的な解明が進 むに従 い, 5HT3受容体が唱吐だけでな く,様 々な疾患,例 え HT3 受容体括抗薬 の新 たな適 ば,下痢,不安症,片頭痛,記憶障害 および掻軽症 などに も関与 す ることが明 らか にされ, 5応症への可能性 が拡大 している。 著者 らはベ ンズイ ミダゾール誘導体 の中か ら 5HT3受容体括抗作用 を有 す る化合物 KB- R6 9 3 3(6lami n0 -5l C hl or 0 -1-i s opr opyl l2- (4-me t hy1 -1-pi pe r az i nyl )-be nz i mi daz ol e di mal e at e )を見出 した. KB-R6 9 3 3は既存の 5-HT3受容体括抗薬 とは異 な り不斉炭素 を含 まない新規 な化合物 である。 そ こで, 本化合物 につ いて 51 HT3 受容体括抗作用の特性 および化学療法剤 にす る消化器症状 に対 す る効果 を検討 し, その薬理学的特性 につ いて研究 HT3受容体桔抗薬 の有効性 に関す る基礎的資料 を得 る目的で,神経性下痢 モデルにお した。さ らに,喝吐以外 の疾患への 5ける本化合物 の作用を検討 した。 HT3 受容体 に対 す る結合特性 および括抗作用 KBR6 9 3 3の 5-HT3 受容体 に対 す る結合特性 を明 らか にす る目 第 1章 5HT3受容体 を含む各種受容体への結合実験 を行 な った。KB-R6 9 3 3は ラッ ト脳膜模本への選択的 5HT3 受容体括 的で, 53 H]GR6 5 6 30結合 を阻害 し,Sc at c har d解析 の結果 は本化合物 の阻害様式が競合的であることを示 した。一方, 5抗某 [ HT3 受容体以外の 3 9種類 の受容体およびイオ ンチ ャネルへの親和性 は無 いか, 軽微 であ った。 このよ うに, KBR6 9 3 3は 5-HT3受容体 に選択的 な親和性 を有す ることが確認 された。 そ こで, KBIR6 9 3 3の i nv i t r oおよび i nv i v oにおける 5l HT3 受容体桔抗作用 を検討 した。 モルモ ッ ト回腸標本 における 5HT誘発収縮 に対 して, KBR6 9 3 3およびグラニセ トロ ンなどの 5HT3 受容体桔抗薬 は, いずれ も著明 な抑制作用 を示 したが, KBR6 9 3 3は最大収縮量 を減少 させ る点 で これ ら R6 9 3 3の阻害作用 は脳膜標本での結果 とは異 な り非競合的であ り,ラッ ト脳膜標 対照薬 と異 な っていた。回腸 における KB本 とモルモ ッ ト消化管 とで KBR6 9 3 3の 5-HT3受容体括抗作用 に相違 が認 め られ た。麻酔 ラッ トでの 5-HT誘発徐脈 に R6 9 3 3は静脈 内,経 口,経皮の各投与経路で抑制作用 を示 した。 また,静脈 内投与 での徐脈抑制作用 は, グラ 対 して,KBニセ トロンなどの 5HT3 受容体括抗薬 の効果が数時間で消失す るのに対 し, KBR6 9 3 3の作用 は 8時間以上持続す ること R6 9 3 3は長持続型 の 5-HT3受容体桔抗作用 を示す ことが明 らかにな った。 か ら, KB第 2章 シスプ ラチ ン誘発喝吐および胃排 出能低下 に対 ず る作用 化学療法薬 による消化器症状への効果 を検討す るために, フェ レッ トでの シプ ラチ ン誘発唱吐および ラ ッ ト胃排 出能低下 R6 9 3 3およびグラニセ トロ ン等 の 5HT3 受容体括抗薬 は前 に対す る作用 を検討 した。 シスプ ラチ ン誘発唱吐 に対 し, KB処置お よび唱吐発現後処置 の いずれ によ って も唱吐 を抑制 した。 シスプ ラチ ンは胃排 出能 を著 明 に低下 させ たが, KBR 6 9 3 3および対照薬 は シスプ ラチ ン投与 によ り低下 した胃排 出を改善 しだ。この ことか ら, シスプ ラチ ンによる喝吐 および胃 排 出能低下 の発現機序 に 5HT3 受容体 が関与 してお り, KBR6 9 3 3は 5-HT3 受容体 に対 す る括抗作用 を介 して唱吐 お よ び低下 した胃排 出を改善す るとの結論 に至 った。 第 3章 実験的下痢 に対 す る作用 -1 5 7 3 - マウスおよびラッ トを用 い,実験的下痢 モデルにおける KB-R6 9 3 3の作用を検討 した。KB-R6 9 3 3および 5-HT3受容体 括抗薬 ラモセ トロンは 5-HT および拘束ス トレス誘発下痢を抑制 した。 しか し, 両案 ともヒマ シ油および PGE2誘発下痢 には影響を示 さなか った。止鴻薬 ロベラ ミドは検討 したすべての下痢 モデルを抑制 した。次に, コレラ毒誘発腸液分泌に対 す る効果を検討 した。 いずれの薬物 も腸液分泌を抑制 したが, ラモセ トロンの抑制作用が部分的であったのに対 し, KB-R 9 3 3は神経性の下痢を抑制 し 6 9 3 3は腸液分泌を完全に消失 させた点で両薬物の作用は異なっていた。 このように, KB-R6 だ。KB-R6 9 3 3が有効であ ったモデルでは下痢発現機構 に 5-HT3受容体の関与が示唆 されていること,KB-R6 9 3 3とラモ 9 3 3はオ ピオイ ド受容体やカル シウムチ ャネルには作用 セ トロンは有効な下痢 モデルが一致 していたこと,さらに,KB-R6 しないことなどか ら, KB-R6 9 3 3は 5-HT3受容体桔抗作用に基づいて下痢および冗進 した腸液分泌を抑制すると推定 され た。 また,回腸での 5-HT収縮阻害作用 と同様 に,腸液分泌モデルにおいて も,KB-R6 9 3 3は対照薬 とは異なる 5-HT3受 容体括抗作用を示 した。 薬 にはない桔抗作用様式を示す ことを見出 した.i nv i v oにおいては化学療法薬 によって誘発 され る喝吐および胃排出低下を 9 3 3が神経性下痢 モデルに有効であることを兄いだ し, この作用が 5-HT3受容 抑制す ることを確認 しだ。 さらに, KB-R6 体桔抗作用に基づ くことを示 した. 本研究 によって, KB-R6 9 3 3を含む 5-HT3受容体括抗薬が唱吐治療だけではな く,過 敏性腸症候群のような神経困性の下痢 に対する治療薬 としての薬理学的特性を持っ ことを明 らかに した。 輸 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 セロ トニ ン (5-HT)受容体サブタイプの一つであるセロ トニ ン 3 (5-HT3 )受容体は,唱吐,下痢,不安症,片頭痛, 記憶障害,掻痔症 など多 くの疾患への関与が示唆 されてお り,その桔抗薬 は化学療法薬誘発喝吐に対する抑制作用を含む広 範 な薬理作用を持っ ことが指摘 されている。 筆者 らは, ベ ンズイ ミダゾール誘導体の中か ら 5-HT3受容体括抗作用を有す 9 3 3(6ami n0 -51 C hl or 0-1-i s opr opy1 -2-(4me t hy1 -1-pi pe r a z i nyl )-be nz i mi daz ol edi ma l る新規化合物 KB-R6 e at e )を見出 した。そこで,本研究 において筆者 らは KB-R6933の 5-HT受容体桔抗作用の特性 と消化器系に対する作用を 明 らかにする目的で, 5-HT: i 受容体桔抗作用,シスプラチ ン誘発喝吐 ・胃排出能低下 に対ずる作用,および実験的下荊モデ 9 3 3が消化管では非競合的かつ持続性の 5-HT3受容体桔抗作用を示す こと, ルに対する作用を検討 した。その結果,KB-R6 シスプラチ ン誘発喝吐 ・胃排出能低下を強力に抑制すること, さ らに 5-HT3受容体桔抗作用に基づいて神経性下痢を抑制 す ることを明 らかに した。 は じめに,KB-R6 9 3 3の 5-HT3受容体に対する結合特性を明 らかにする目的で, 5-HT3受容体を含む各種受容体への結 合実験を行なった結果,ラッ ト脳膜模本への [ 3 H]GR6 5 6 3 0結合 に対 して競合的阻害作用を示 し,対照薬 として用いた既存 の 5-HT3受容体桔抗薬の中で最 も高い親和性を示 したラモセ トロンと同程度の親和性を持っ ことを見出 した。5-HT3受容 9種類の受容体およびイオ ンチ ャネルに対する親 体以外の 51HT受容体, ア ドレナ リン受容体, ムスカ リン受容体 を含む 3 和性 はほとんど認め られず,KB-R6 9 3が 5-HT3受容体に対 して極めて高い選択性 を持っ ことが明 らかになった。そこで, 消化管における KB-R6 9 3 3の 5-HT3受容体桔抗作用を i nv i t r oおよび i nv i v oの実験を用いて検討 した. KB-R6933およ びグラニセ トロンなどの 5-HT3受容体桔抗薬 はモルモ ッ ト回腸標本における 5-HT誘発収縮 に対 して著明な抑制作用を示 したが, ブ ルニセ トロンなどの対照薬が競合的な収縮抑制作用を示 したのに対 して,KB-R6 9 3 3は非競合的な抑制作用を示 nvi voでの抗 セロ トニ ン作用を明 らかにする目的で,麻酔 ラッ ト5-HT誘発徐脈 に対する KB-R6933の作用を静脈 した。I 内,経 口,経皮の 3種類の投与方法により検討 したところ,いずれの投与方法において も KB-R6 9 3 3は長時間持続する抑制 作用を発現す ることを見出 した。 次 いで,化学療法薬の重大な副作用の一つである唱吐 と胃排出能低下消化器症状 に対す る KB-R6 9 3 3の作用を明 らかに す る目的で, フェ レッ トでの シプ ラチ ン誘発喝吐および ラッ ト胃排出能低下 に対す る作用を検討 した。その結果,KB-R 6 9 3 3および対照薬 と して用 いたグラニセ トロン等 の 5-HT 3受容体括抗薬 は, シスプ ラチ ンによ り誘発 され る唱吐を抑制 し,胃排出能低下を改善することを明 らかに した。 消化器系 において唱吐以外 に 5-HT3受容体が関与す る機能 と して消化管運動の調節 と消化管腔内への水分 と電解質の放 出調節が報告 されていることか ら, KB-R6 9 3 3を含む 5-HT3受容体桔抗薬の下痢治療薬 としての有用性 についてマウスあ 11 5 7 4 - るいはラッ トを用 いて検討 した。KBR6 9 3 3および ラモセ トロ ンは 5-HTおよび拘束 ス トレス誘発下痢 を抑制 したが,両薬 物 ともヒマ シ油および P GE2誘発下痢 には影響 を示 さなか った0-万,オ ピオイ ド系の止潟薬 の ロベ ラ ミドは これ らの下痢 R6 9 3 3とロベ ラ ミドは モデルの全てで有効 であ った。次 いで, コ レラ毒誘発腸液分泌 に対 す る作用 を検討 した ところ,KB腸液分泌 に対 して完全 な抑制作用 を示 し, ラモセ トロンも部分的 な抑制作用 を示 した。KBR6 9 3 3はオ ピオイ ド受容体 や カ HT3受容体括抗作用 に基づ いて下痢 と腸液分泌冗進 を抑制 す ると推定 され ル シウムチ ャネルには作用 しないことか ら, 5た 。 以上の研究 は,KBR6 9 3 3が選択的かつ長時間作用型 の 5-HT3受容体括抗薬で あ ること,消化管で は既存 の 5-HT3受容 体桔抗薬 と異 な り非競合的桔抗作用を示す こと,化学療法薬 によ り誘発 され る唱吐および胃排 出低下 を抑制 す ること, さ ら に,神経性下痢 に対 して有効であることを明 らか に した ものであ り,消化器系 にお ける KBR6 9 3 3を含む 5-HT3受容体括 抗薬 の作用の薬理学的特性 の解明 に有用 な知見 とな るとともに,唱吐および神経困性下噺 の治療 において重要 な基礎的資料 を提供す ると考 え られ る。 よ って,本論文 は博士 ( 薬学)の論文 と して価値 ある もの と認 め る。 更 に,平成 1 1年 8月 1 8日論文内容 とそれ に関連 した口頭試問を行 った結果合格 と認 めた。 11 5 7 5 -
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