KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL Nano-Structure and Thermal Relaxation of Ultrathin Polymer Films Prepared by the Langmuir-Blodgett Technique( Abstract_要旨 ) Mabuchi, Michiaki Kyoto University (京都大学) 1998-09-24 http://hdl.handle.net/2433/182337 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 氏 名 ま ぶち みち あき 間 淵 通 昭 ( 工 学) 学 位 (専 攻 分 野 ) 博 士 学 位 記 番 号 工 学 位 授 与 の 日付 平 成 1 0 年 9 月 24 日 学位 授 与 の要件 学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当 研 究 科 ・専 攻 工 学 研 究 科 高 分 子 化 学 専 攻 学 位 論 文 題 目 Na n o S t uc r t u r ea n dTh e r ma lRe l a x a t i o no fUl t r a t h i nP o l y me rFi l msPr e p a r e db y 仇eLa n g mu i r Bl o d g e t tTe c h n i q u e 博 第 1 768 号 (ラ ン グ ミュア ープ ロジ ェ ッ ト法 に よ る高 分 子 超 薄 膜 のナ ノ構 造 と熱 的 緩和) ( 主査) 論 文 調 査 委 員 教 授 宮 本 武 明 論 文 内 教 授 山 岡 仁 史 容 の 要 教 授 升 田利 史 郎 旨 近年,分子 レベル での構造制御 と機能発現 をめ ざして,超薄膜 の研究が盛 んに行 われてい る。特 に,水面上に展開 した高 分子単分子膜 を基板上 に積層 して得 られ るラング ミュア-プ ロジェ ッ ト ( La ng mui r Bl o d g e t t:LB)膜 は分子 レベル で人 為的に組織化 された超薄膜であ り,新 しい光 ・電子機能 を発現できる機能性材料 として期待 され てい る。本論文 は,高分子 LB膜の もつナ ノ構造 を励起エネル ギー移動法 を用いて定量的 に解析す る とともに,膜 の熱 的構造緩和 の特性 を明 らかに し た研究結果 をま とめた ものであ り, 2編 6章か らなってい る。 第 1章は序論で,本研究の 目的 とその背景,そ して本論文の概要がま とめ られてい る。 第 1編 は高分子 の物性 を支配す る側鎖長 ,分子量,立体規則性 な どの分子構造 因子が高分子 L B膜 の熱 的な構造緩和 に与 える効果 について検討 した結果 をま とめた ものである。 第 2章で は,側鎖長 の異 な る 3種類 のポ リビニル アル カナ-ル アセ タール を合成 した。加熱 に よって, これ らのLB膜 の ナ ノ構造が緩和 し,各層が混合 された平衡状態-不可逆的に達す ることを明 らかに した。また,構造緩和の温度依存性 か ら, 高分子 のガ ラス転移温度 と緩和現象 とに強い相 関があるこ とを示 し,LB膜 の構造緩和 は高分子主鎖 の運動モー ドに よって ひ き起 こされ ることを明 らかに した。 さらに蛍光 ラベル を施 した高分子LB膜 を合成 し,高分子鎖 のLB膜 内での拡散係数お よび見かけの活性化エネル ギー を求 めることに成功 した。 その結果 ,高分子鎖 の局所的なセ グメン ト運動 によって,二次元 の非平衡 な コンホメーシ ョンか ら三次元-の形態変化 が起 こる とい う,高分子LB膜の構造緩和の特性 を明 らかに した。 第 3章では,立体規則性 の異 なる 3種類 のポ リビニルオ クタナ-ル アセ タール ( PVO) を合成 し,立体規則性 とLB膜 の 構造緩和現象 との関係 を検討 してい る。主鎖構造 の類似す る高分子 を累積 した多層膜 は,熱処理 によ り各層が均一 に混合 さ れた状態-緩和す るのに対 し,立体規則性 の異なる高分子 を累積 した多層膜 においては この よ うな混合 は起 こらず,相分離 が起 こるこ とを示 した。 この よ うに高分子主鎖 の立体構造 は,膜 の熱 的特性 とともに,得 られ るナ ノ構造の緩和挙動 を支配 す る重要 な因子であることを明 らかに した。 第 4章で は,擬 二次元超薄膜 である高分子 LB膜 の緩和 に及 ぼす分子量の効果 を検討 してい る。膜 内での拡散係数 と分子 量の関係 は分子量 6万 を境 に大 き く変化す ることを兄いだ した。す なわち,低分子量試料 の拡散係数 は分子量の - 2乗 に比 例 して大 き く変化 し,緩和現象 が高分子鎖 の並進拡散 によ り支配 され てい るのに反 し,高分子量側 では拡散係数 は分子量 に 依存せず ほぼ一定 となることを兄いだ した。 これ らの実験事実 よ り,平面形態 に束縛 された擬 二次元鎖 が三次元 ランダム鎖 - とエ ン トロピー的に形態緩和す ることが,高分子LB膜の緩和機構 であることを明 らかに した。 第 2編 では,剛直な α- リックス構造 を取 るポ リペ プチ ドを用 いて,高秩序 に構造制御 され ,かつ熱安定性 にす ぐれ た 高分子LB膜 を作製 し,その構造 と物性 を種 々の分光学的方法 によって評価 した結果 をま とめてい る。 - 743- 第 5章 では,側鎖 にナ フタ レン, ア ン トラセ ン,カルバ ゾール 基 を もつ ポ リ ( アル キル L グル タメー ト) を合成 し,そ B膜 の構 造 な らび に蛍光特性 を検討 した。 これ らのLB膜 は剛 直な主鎖 が累積方 向に一軸配 向 した高秩序構造 をもつ こと のL B膜 においては トラ ッ を円偏光 吸収 二色性 ,偏光赤外 吸収分光法 を用 いて明 らかに した。特 に,カルバ ゾール を導入 したL プサイ トとな るエ キシマーが ほ とん ど存在せず ,高効率のエネル ギー伝達系 を構築 で きることを明 らかに した。 - リックス主鎖近傍 に蛍 光性基 を導入 し,励 起エネル ギー移 動法 か ら累積膜 の内部 第 6章 では, ポ リグル タメー トの α構造お よびその耐熱性 を評価 した。 フェル ス ター のエネル ギー移 動理論 に基づ く計算機 シ ミュ レー シ ョン とエネルギー移動 B膜 は,剛直 な主鎖 が各層 内で位 置規制 され た特異 なナ ノ構 造 を もつ ことが示 され 効 率 の実験値 との比較 か ら,得 られ たL た。 また,累積膜 の層構造 は,剛直な主鎖 がセ グメン ト運動 を行 い難 いため,約 120℃ とい う高い耐熱性 を持つ ことを示 し, 剛直性 高分子 は熱安定性 に優 れ ,かつ高秩序 なナ ノ構造膜 の設計 に極 めて有用 な材料 となることを明 らかに した。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 分子集合体 の もつナ ノ構造お よびその構造緩和特性 を明 らかにす ることは,分子機 能材料 を構築す る上で重要である。本 B膜 の もつナ ノ構造 を励 起エネル ギー移動法や種 々の分光法 に よ り評価す る とともに,二次元的な膜構造 論 文 は,高分子 L の緩和機構 とその特性 を明 らか に した ものであ り,得 られた主な成果 は以下の通 りであ る。 1.エネル ギー移動法 を用 い て,高分子 LB膜 内での分子鎖 の拡散係数 を測 定す る こ とに成功す る とともに, この拡散過 程 が三次元バル ク系の熱 特性 ,特 にガ ラス転移温度 と強い相 関をもつ ことか ら,膜構造 の緩和現象 が高分子主鎖 の運 動モー ドに よって支配 され てい ることを明 らかに した。 2.L B膜 内での構造緩 和 の活性化 エネル ギー は粘 弾性測定 に よるバル ク系の値 に較 べ て著 しく小 さい こと,並び に拡散 係数 の分子量効果 よ り,高分子主鎖の局所的 なセ グメン ト運動 と二次元非平衡 コンフォメー シ ョンか らの形態変化が, B膜 の構造緩和 の主な機構 であるこ とを明 らかに した0 高分子 L 3.剛直 な α- リックス構 造 を取 るポ リ ( アル キル ー し グル タメー ト) を用 い る と,高秩序 なナ ノ構造 をもつ高分子L B膜 Lグル タメー ト) は新規 な光機 能性材料 として広 の作製 ,並び に種 々の光官能基の導入 が可能 で, ポ リ ( アル キル I い応用性 をもつ ことを明 らかに した。 4.ポ リ ( アル キルー Lグル タメー ト)L B膜 の熱 的緩和過程 を分光学的手法 に よ り検討 し,セ グメ ン ト運動 が抑制 され た B膜 の耐熱性 の向上 に極 めて有用 である ことを明 らかに した。 剛直高分子鎖 は,L B膜 に特徴 的 なナ ノ構造 と構 造緩和機構 を明 らか に し, 剛 直性 高分子 は高秩序でかつ耐 以上要す るに本論文 は,高分子 L B膜素材 と して,極 めて有用 で あ る こ とを実証 した ものであ り,学術 上,実際上寄与す る ところが少 な くな 熱性 の高分子 L い。 よって,本論文 は博 士 ( 工学) の学位論文 として価値 あるもの と認 める。 また平成 10年 7月 27日,論文内容 とそれ に関 連 した事項 について試 問を行 った結果 ,合格 と認 めた。 ー7 44-
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