Page 1 Page 2 学位(専攻分野) 博 士 (農 学) 学位授与の日付 平成ー0

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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Catalytic Mechanism of L-2-Haloacid Dehalogenase from
Pseudomonas sp.YL( Abstract_要旨 )
Li, Yong-Fu
Kyoto University (京都大学)
1998-09-24
http://hdl.handle.net/2433/182417
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
董
士
完
轟
(
農
学)
学 位 (専 攻 分 野 )
博
学 位 記 番 号
農
学 位 授 与 の 日付
0 年 9 月 24 日
平 成 1
学位授 与 の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
農 学 研 究 科 農 芸 化 学 専 攻
学 位 論 文 題 目
Ca
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yt
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na
ss
p.
YL
博
第
1
01
9 号
(
ps
e
u
d
o
mo
na
ss
p.YLの L2J、ロ酸 デハ ロゲナ - ゼ の触 媒機 構 )
(
主査)
論 文 調 査 委 員
教 授 江 崎 倍 芳
論
文
内
教 授 林
容
の
力 丸
要
教 授 池 田 篤 治
旨
有機ハ ロゲン化合物 は,溶剤 ,冷媒,工業原料,農薬 な どとして広 く用い られ,大量 に生産 され る一方 , 自然界で も細菌
や藻類 の- ロペルオキシダーゼ な どに よって生合成 され る。生物界では有機ハ ロゲ ン化合物 は主にデハ ロゲナ-ゼによって
ハ ロ酸
分解 され,基質特異性や反応特異性 の異 なる多種多様 なデハ ロゲナ-ゼが主 として微 生物か ら単離 され てい る。 2デハ ロゲナ-ゼ は 2J、ロ酸 を加水分解 的 に脱ハ ロゲ ン して ヒ ドロキシ酸 を生成す る反応 を触媒す る酵 素 で, これまでに立
LDEX)は, 2ハ ロ酸の L異性体に特
体特異性 の異な る数種 の酵素が明 らかに されてい る。 L-2ノ、ロ酸デ- ロゲナ-ゼ (
異的 に作用 し,D・2-ヒ ドロキシ酸 を与 える酵素で, Ps
e
ud
o
mo
na
ss
p.YL株 由来の酵素 についてその特性解 明が進 め られ
てきた。本論文 は,本酵素の触媒機構 を原子 レベル で解 明す るこ とを 目的 として,質量分析やⅩ線結晶構造解析 を駆使 して
詳細 な検討 を行 った もので,その結果 は以下の よ うに要約 され る。
1.タンパ ク質の分子量 を質量分析 で直接測定す ることによ り,触媒機構 に関す る重要 な新知見 を得た。すなわち,野生型
Oが基質 によって直ちにエ ステル化 され ることを兄いだ した。基
酵素 を基質 2ノ、ロ酸 とともにイ ンキュべ- トす る と,DI
質が消費 し尽 くされ るまで,酵素分子 は大部分エステル 中間体の形で存在す ることか ら,エステル 中間体の加水分解が本酵
素反応 にお ける律速段階 と推論 した。 また,活性 をもたない各種 の部位特異的変異酵素 も,基質添加後 直 ちにエステル 中間
4,S1
1
8,K1
51
,Y1
5
7
,S1
7
5,
体 を形成す ることを兄いだ した。各変異酵素におけるエステル 中間体生成速度の違いか ら,T1
N1
7
7は主にエステル 中間体 の加水分解 の段階に関与す るのに対 し,R41とD1
8
0はエ ステル 中間体生成 の段階において も重
要な役割 を果 たす と推論 した。
2.S1
7
5
A変異酵素の結晶 をモ ノクロロ酢酸, 2クロロ酪酸, 2クロロメチル酪酸 な らびに 2クロロメチル吉草酸の溶液
に各 々浸漬す ることによ りエステル 中間体 を形成 させ,それぞれ の立体構造 を解析 した。不斉化合物 を基質 とした場合 には
エステル 中間体の ヒ ドロキシ酸部分の立体配置はいずれ も 2Rで あることを兄いだ し,エステル 中間体 を生成す る段階で基
質 の立体反転が起 こることを明 らかに した。モ ノクロロ酢酸 の場合 と他 の基質の場合 では,DI
O由来 の 2個 のエステル酸素
の配 向は逆転 してお り,エステル 中間体形成 の段 階で,基質アル キル基の立体障害 に よってDI
Oのカル ボキシル基が回転す
OのCγとA1
7
5の側鎖 メチル基 との間に現れた新たな水分子 は通常エステル 中間体の加水分解 に
る と推論 した。 さらに,DI
の側鎖 によって受 け取 られ るこ とを論証 した。
使 われ ること,そ して遊離す るハ ロゲ ンイオ ンはR41
3.野生型酵素の結晶をL-2クロロプ ロピオン酸溶液 に浸漬 し,生成物D一
乳酸 との複合体結晶を得た。Ⅹ線結晶構造解析 の
乳酸 はS1
7
5
A酵素のエステル 中間体 にお けるヒ ドロキシ酸部分の場合 に比べ DI
Oを中心に反時計周 りに約9
0
度回転
結果 ,D一
7
5
A酵素のエステル 中間体で見 られ た新たな水分子 はD・
乳酸複合体の場合
した位置 に移動 してい ることを明 らかに した。 S1
Oのカル ボキシル基はD1
8
0のカ
には兄いだ されず,エステル 中間体の加水分解 に使 われて消失 した と推論 した。 さらに,DI
7
5の水酸基 とそれぞれ水素結合 してい るこ とを兄いだ し,エ ステル 中間体加水分解 にお けるS1
7
5,
ル ボキシル基お よびS1
N1
7
7な らびにD1
8
0の役割 を明 らかに した。
-9
5
4-
論
文
審
査
の
結
果
の
要
旨
- ロ酸デハ ログナ-ゼ は
デハ ログナ-ゼは有機- ロゲン化合物の微生物分解 において中心的な役割 を果 た してい る。 2細菌 に広 く分布 し,立体反転 を伴 う加水分解 的脱ハ ロゲ ン反応 を触媒す る。本研 究は, Ps
eudo
mo
nass
p.YL株 由来 のL
DEXを対象 に,質量分析やⅩ線結晶構造解析 を駆使 してその触媒機構 を原子 レベルで究明 した ものであ り,評価すべ き点は
以下の通 りである。
1.野生型酵素や各種 の部位特異的変異酵素が基質 2/、ロ酸 とエステル 中間体 を形成す ることを質量分析法 によって実証
す るとともに,エステル 中間体形成 な らびに加水分解 に関与す るア ミノ酸残基 を明 らかに した。
2.S175
A変異酵素 を用い ることによって,モ ノクロロ酢酸, 2クロロ酪酸, 2クロロメチル酪酸 な らびに 2クロロメ
チル吉草酸 とのエステル 中間体結晶の立体構造解析 に成功 した。エステル 中間体の ヒ ドロキシ酸部分の立体配置はいずれ も
2Rであることを兄いだ し,エステル 中間体 を生成す る段階で基質の立体反転が起 こることを実証 したOエステル 中間体形
Oのカル ボキシル基が回転す ることや,新たに観測 された水分子 が通常
成の段階で,基質アル キル基の立体障害によってDI
はエステル 中間体の加水分解 に使 われ ること,そ してR41が基質か ら遊離す るハ ロゲ ンイオ ンの結合部位 であることな どに
ついて,各 々精微 な論拠 を示 した。
3.野生型酵素 と生成物D・
乳酸 との複合体のⅩ線結晶構造解析 に成功 した。エステル 中間体におけるヒ ドロキシ酸部分 とD一
乳酸複合体 においては,エステル 中間体 に兄いだ さ
乳酸分子の 占める立体的位置関係 の違いを明 らかにす る とともに,D一
Oのカル ボキシル基がD1
80のカルボキシル基お
れた新たな水分子が加水分解 に使 われた とす る論拠 を示 した。 さらに,DI
よびS1
7
5の水酸基 とそれぞれ水素結合 していることを兄いだ し,S1
75,N1
77,D1
80の役割 をそれぞれ明 らかに した。
eudo
mo
nass
p.YL株 由来のLDEXについて触媒機構 を原子 レベル で解 明 してお り,酵素化
以上のよ うに本論文 は,Ps
学お よびタンパ ク質工学に寄与す るところが大 きい。
よって,本論文は博士 (
農学)の学位論文 として価値 あるもの と認 める。
0年 7月 1
6日,論文並びにそれに関連 した分野にわた り試問 した結果,博士 (
農学)の学位 を授与 され る学力
なお,平成 1
が十分あるもの と認 めた。
- 955-