Page 1 Page 2 学位(専攻分野) 博 士 (工 学) 学位授与の日付 平 成 ー2

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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系統解析のための負荷モデルに関する研究( Abstract_要旨
)
富山, 勝幸
Kyoto University (京都大学)
2000-03-23
http://hdl.handle.net/2433/180998
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
蓄
電
士
等
巌
学位 (
専攻分野)
博
(
工
学)
学 位 記 番 号
論 工 博 第 3
5
0
1号
学位授与の 日付
平 成 1
2年 3 月 2
3日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4条 第 2項 該 当
学位論文題 目
系 統 解 析 の た め の負 荷 モ デル に関 す る研 尭
論文調査委員
芽
彦 )上 田 院 亮
論
教 授 宅 間
文
内
容
の
董
要
教 授 奥村 捨 土
旨
本研究では,電力系統の安定度解析に際 し負荷 モデルが重要であることを示 し, そのモデル化手法を開発するとともに,
エアコン負荷が電力系統の安定度, とくに電圧安定性に与える影響が大 きいことを, それ らの負荷特性試験を通 して明 らか
とし,それ らの結果を纏めた もので, 7章か らなっている。
0Hz系統 における安定度問題 とその対応について概観 し,諸外国で発生 している大規模停電を評
第 1章では,我が国の 6
価する際に,負荷特性が重要であることを示すなど,本研究の背景 と 「
負荷 モデル」開発の目的を述べている。
第 2章では,諸外国で開発 されている 「
負荷モデル」を概観 し,
「
静的負荷 モデル」が電力系統の各種安定度に与える影響
が大 きいことを,固有値解析,および シミュレー ションを通 じて明 らかに している。 また,負荷 に含 まれる力率改善用 コン
デ ンサなどの進相補償容量 を予測す る方法を提案 し,その重要性 を述べている。
第 3章では,事故時の観測データ (
出石変電所 6
.
6kV母線)か ら有効電力 P,無効電力 Q の電圧依存性を表わす静特性係
数 Kp,Kqを,季節別,時間帯別に予測する方法を示 した。また,負荷特性 に大 きく影響を与える冷房負荷比率を,電力需
要 と気温 データか ら算出す る方法を述べ,Kp,Kq と事故発生時の冷房負荷比率 との間に良好な相関関係があることを明 ら
かに している。
動的負荷モデル」を提案 している。 観
第 4章では,系統か らみた負荷をコンダクタンス G,サセプタンス Bで表現す る 「
測データを分析す ることにより,事故直後,有効電力,無効電力 ともに事故後 4-5サイクルで静特性 に戻 ること,さらに,
事故 ク リア直後の動特性が過渡安定度 に大 きく影響を及ぼす こと,を明 らかに している。 この動特性を,誘導機の等価回路
に表れるコンダクタンス G,サセプタンス Bに等価 な定数で表現することを試み,系統負荷の減衰時定数を適切 に選ぶ こと
豆より,「
動的負荷 モデル」 と 「
観測データ」 とは良好な一致を示す ことを確認 している.
第 5章では,負荷特性 に相当な影響を与えているエアコン負荷の負荷特性試験を行 い,エアコン負荷が電力系統に与える
影響を明 らかに している。近年,普及が著 しいイ ンバータエアコンが負荷の電圧特性 に及ぼす影響を検討す るために,非イ
ンバータエアコン (
従来型) とイ ンバータエアコンの両者 について単体試験を行 うことにより,非 イ ンバータエアコンの方
がイ ンバータエアコンより電圧安定度を低下 させ る可能性の高 いことを指摘 している。 さらに,非イ ンバータエアコンとイ
ンバータエアコンが混在 した複合負荷を対象 に電圧特性試験を行 うことにより,第 4章 に導入 したコンダクタンス G とサセ
プタンス Bの関係を明 らかに している。さらに,観測点か ら負荷点 に至 る等価系統 リアクタンスが供試系統の動特性 に大 き
く影響を与えることを シ ミュレーションにより明 らかに している. また,出右変電所で観測 された事故波形の様相が複合負
荷の動特性試験の結果 とよ く似 た傾向を示 していることを確認 し, エアコン負荷の影響を無視 し得ないことを明 らかに して
いる。
第 6章では,
「
静的負荷 モデル」
,「動的負荷モデル」,「進相補償容量」および 「等価系統 リアクタンス」により表現 された
新 しい 「
負荷 モデル」を実際の事故 ケースにおけるパ ラメータを用 いて シミュレー ションを行い,提案 した 「
負荷モデル」
の妥当性を検証 し,評価 している。その結果,現在用い られている 「
静的負荷モデル」によるシミュレーション結果に比べ,
今回提案 した 「
負荷 モデル」のほうが,電圧,有効電力,無効電力 ともに観測波形 に近い結果を示す ことを確認 し,大 きい
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じょう乱時の解析 において も, これ らの挙動を正 しく表現す ることを確認 している。
最後 に第 7章では,本研究で得 られた成果をまとめ,今後の課題 について述べている。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文 は,電力系統の解析に際 し重要な負荷の電圧特性 を予測す る手法を開発す るとともに,負荷の動特性 に少なか らぬ
影響を与えている空調負荷 に着 目 した実験を通 じて, その電圧安定性-の影響を検討 した もので,得 られた主な成果 は次の
通 りである。
1.「
静的負荷特性」を予測す る手法の開発 任意の季節,時間帯 における有効電力 P,無効電力 Q の電圧依存性 を表わす
静特性係数 Kp,Kqの予測法 として,毎時刻の電力需要,気温か ら算出され る冷房負荷比率を用 いる手法を提案 した。
2.「動的負荷 モデル」の開発 事故時の観測 データか ら,事故 ク リア直後の負荷の動特性が過渡安定度解析 に重要である
ことを明 らかに し,その動特性 は誘導機の等価回路 に表れ るコンダクタンス G,サセプタンス Bに等価 な定数を用 いること
によって表現 されることを提案 した。
3.エアコン負荷の電圧安定性 に与える影響の検討 負荷特性 に影響 を及ぼ している各種のエアコン負荷の実測を通 じ,
それ らの動特性が,大規模停電事故 の原因 とな り得 る電圧安定性 に大 きく影響を与えていることに着 目 し,以下の事項 を明
らかに した。
・エアコンの動特性 は,じょう 乱の大 きさにより 3つのパ ター ンに分現 され,厳 しいケースでは事故 ク リア後,P,Q とも
に急増 した状態に留 まり, それによって系統電圧が低下 した状態 になること,がある。
・非イ ンバータエアコンは,系統電圧が徐々に低下 した場合の静特性,および,事故 ク リア後の動特性 ともに,P,Q が急
増 し,イ ンバ ータエアコンに比べ,電圧不安定現象を引 き起 こす可能性が大 きい。
・負荷に至 るまでの等価系統 リアクタンスがェアコンの動特性 に大 きく影響 を及ぼ し, それを適正 に模擬す ることの重要
性を明 らかに した。
・観測データの中にも,系統状況が厳 しい場合,系統電圧を低下 させたままで推移す るケースがみ られた。
以上 本論文 は,電力系統の解析 に際 し重要 となる負荷特性のモデル化を行 うに際 しての考え方,手法 についての体系化
を図るとともに,近年著 しく増加 している空調負荷が電力系統の負荷特性 に与える影響 を明 らかに した もので,学術的,莱
際上寄与す るところが少な くない。 よって,本論文 は,博士 (
工学)の学位論文 として価値あるもの と認める。 また,平成
1
2年 1月 2
5日,論文内容 とそれに関連 した事項 について試問を行 った結果,合格 と認 めた。
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