Page 1 Page 2 氏 名 ー護 墓 とし ひろ 学位(専攻分野) 博 士 (薬 学

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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ムスカリンM2受容体選択的拮抗剤の構造活性相関に関す
る研究( Abstract_要旨 )
渡邉, 俊博
Kyoto University (京都大学)
2000-03-23
http://hdl.handle.net/2433/181187
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
遥
遠
士
撞
(
薬
嵩
学位 (
専攻分野)
博
学)
学 位 記 番 号
2
8号
論 薬 博 第 6
学位授与の 目付
2年 3 月 23 日
平 成 1
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 2項 該 当
学位論文題 目
ムス カ リン M2受 容 体 選 択 的括抗 剤 の構 造 活 性 相 関 に関 す る研 究
論文調査委員
許
諾 )藤 井 信 孝
論
教 授 井 深 俊 郎
文
内
容
の
要
教 授 富 岡
清
旨
ムスカ リン M2
受容体措抗薬 は, 徐脈性不整脈の治療 において人工ペースメーカーの埋め込み手術 に替わ りうる化学療法
剤の候補 と して大 きな期待が寄せ られているが, 副作用 となる M3受容体括抗作用 との帝離が重要課題 となっている。 著者
受容体桔抗剤 AF
DX11
6を リー ド化合物 とし, この課題を克服
は, M3受容体 との選択性が低 く活性 も低 いムスカ リン M2
する目的で研究を開始 した。その結果,i
nv
i
t
r
o活性,M3受容体 との選択性,i
nv
i
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o活性全てにおいて優 る YM-4
7
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1
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37868
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1.テ トラヒ ドロイソキノ リン骨格を有す るムスカ リン MZ受容体括抗剤 YM-3
7
8
6
8の発見の経緯
DX1
1
6の ピペ リジン部分の最適化か ら研究を開始 した。その結果 1, 2, 3, 4-テ トラヒ ドロイソキノ
まず初めに AF
リン骨格に変換す ることにより M2受容体親和性が増強することを兄いだ した。 続いて末端 ア ミノ基の最適な位置を見出す
為 に,そのベ ンゼ ン環上に自由度の大 きいア ミノアルキル鎖を導入 した。これ らの構造活性相関か ら 1,2, 3, 4
-テ トラ
ヒドロイソキノ リン骨格のベ ンゼ ン環が M2受容体親和性の向上 に寄与す ること,炭素数 6- 7のアルキル鎖が M2受容体
受容体に対する M2
受容体選択性 (
Ki(
M3
)/
Ki(
M2
)比)の向上 に寄与することを見出 した。その結果,AF
DX
親和性 と M3
1
1
6の 1
6
0倍の MZ受容体親和性を示す と共 に Ki(
M3
)/
Ki(
M2
)比が 3倍向上 した YM-3
7
8
6
8を見出す ことがで きた。
2.フェニル酢酸誘導体 YM-5
9
9
8
1への展開
YM-3
7
8
6
8において新たに導入 したベ ンゼ ン環が M2受容体親和性の向上 に寄与 したことか ら,テ トラヒ ドロイソキノ リ
ンをベ ンゼ ン環 に変換 し,そのベ ンゼ ン環上 にア ミノアルキル鎖を有す るフェニル酢酸誘導体をデザイ ンし,一連の誘導体
nv
i
t
r
oにおいて AF
DX1
1
6の 6
3倍の M2受容体親和性 と 4倍の Ki(
M3
)/
Ki(
M2
)
の構造活性研究を行 った。その結果,i
比を有する YM-5
9
9
8
1を見出 した。 また, フェニル酢酸の 3位 にアニ リド系の置換基を導入す るとKi(
M3
)/
Ki(
M2
)比
が向上することも見出 した。更に YM-5
9
9
8
1はオキソ トレモ リン誘発徐脈 ラッ トモデル,夜間徐脈無麻酔 イヌモデルを用い
るi
nv
i
v
o試験 において も AF
DX11
6を凌 ぐ抗徐脈作用 と M2受容体選択性を示す ことを明 らかに した。
3.高選択的ムスカ リンM2受容体括抗剤 YM-4
7
2
4
4の開発
側鎖の自由度をさらに増大 させ る目的で, フェニル酢酸のベ ンゼ ン環を生物学的等価体にな り得 るア ミド結合に変換 した
-1
6
0
1
-
一連 の コ- ク酸 ア ミド誘導体 を合成 し,活性 を評価 した。その構造活性相関か ら,フェニル酢酸 のベ ンゼ ン環 は N
置換 ア ミ
ド結合へ変換可能 な ことを明 らかに し,また側鎖末端 の 4-(4-アルキル ピペ ラジン-1-イル)ベ ンジルア ミノ基が M2受容
・M3
受容体 との選択性 の向上 に極 めて重要 な部分構造 になることを見出 した。更 に,YM-4
7
2
4
4が i
nv
i
t
r
oにおい
て A『DX1
1
6の 2
0
0倍 の M2
受容体親和性 と高 い gi(
M3
)/
gi(
M2
)比 を有す ること,ラッ トオキ ソ トレモ リン誘発徐脈及
び無麻酔 イヌ夜間徐脈 の両 i
n v
i
v
oモデルおいて もフェニル酢酸誘導体 を凌 ぐ抗徐脈作用 と M2
受容体選択性 を示す ことを
体親和性
見 出 し, AFDX1
1
6の欠点 を克服 した化合物 に導 くことに成功 した。
DX1
1
6を出発化合物 と し,様 々な構造変換 を行 った結果,強力な抗徐脈作用 と安全性 を併せ持 った開発
以上,著者 は AF候補化合物
YM-47244を見出す ことがで きた。また,それぞれの化合物合成 を通 じて新 たな M2
受容体結合部位 を見出す こ
とがで きた。 これ らの研究成果 はムスカ リン M2受容体括抗剤 の開発及 びその徐脈性不整脈治療への臨床応用研究 に対す る
有用 な基礎的知見を提供す る ものであると判断す る。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
徐脈性不整脈 の治療薬 と して ムスカ リン M2受容体の選択的桔抗剤の開発が望 まれている。
ムスカ リン受容体 は G一タ ンパ ク質共役型受容体 に属す るが薬理学的 には Ml
∼M4
の 4つのサ ブタイプに分類 され る。 各
サ ブタイプは生体内の多 くの組織 に分布 して種 々の生理反応 に関与 しているが, ア トロピンの抗徐脈作用 に関与す る M2受
容体 は心臓 に優位 に分布 している。 また, ア トロ ピンは MZ受容体 と同程度の強 さで M:
i
受容体 を阻害す ることか ら臨床上,
抹消 M3
受容体括抗作用 に由来す る口渇,尿閉,便秘等が重篤 な副作用 と して問題 にな っている。 従 って, M2
/
M3
受容体選
択性 の高 い化合物 の開発が必要 となる。また,M l受容体 を阻害す ると,記憶 ・学習への影響が懸念 され ることか ら中枢移行
性 の低 い M3選択的括抗剤 の開発が望 まれ る。 以上 の事 か ら著者 は徐脈性不整脈治療薬 の ターゲ ッ トと して, ア トロ ピンの
受容体桔抗活性 を有す とともにア トロピ
欠点 を改良 したムスカ リン受容体桔抗剤, すなわち, ア トロピンと同等以上の M2
ンの臨床 での副作用 を回避す るために M3受容体括抗活性が弱 く, 更 に中枢移行性 が低 い化合物 の発見を目的 と して構造活
性相関研究 を行 った。
著者 は上述 の活性 プ ロフィールを有す る新規 M2受容体選択的括抗剤 を創製す るにあた り,W.
Engelらによ り報告 されて
いたベ ンゾ ジアゼ ピン骨格 を有す る三環系化合物 AFDX1
1
6を リー ド化合物 と して選 び,本物質 の末端 ア ミノ黄の空間的
DX1
1
6の ピペ リジン環 を
配置 を変 え る事 によ り, M2受容体 との相互作用 を強固 にで きるとの作業仮説 をたて, まず AF-
1,2, 3, 4-テ トラヒ ドロイ ソキ ノ リン環 に変換 し,そのベ ンゼ ン環上 にア ミノアルキル基 を導入す ることにより,一連
の誘導体 の合成 と活性評価 を行 った。その構造活性相関研究か ら得 られた情報 を もとに,M2受容体括抗活性発現 に極 めて重
要 な末端 ア ミノ基 の空間的位置を最適化 を行 い, AFDX1
1
6の 16
0倍の M2受容体親和性 と高 い対 M3受容体選択性 を有す
る 1, 2, 3, 4-テ トラヒ ドロイ ソキ ノ リン系括抗剤
YM-37868を兄 いだ した。
次 いで,本物質 のベ ンゼ ン環 の M2受容体親和性 に対す る効果 に着 目 して, 1, 2, 3, 4-テ トラヒ ドロイ ソキノ リン環
をベ ンゼ ン環 に変換 した一連 の フェニル酢酸誘導体 を合成 し,評価 した。 その結果, 中枢移行性が低 く, ア トロピンと同等
以上 の M2
受容体括抗作用 と高 い対
M3
受容体選択性 を有す るフェニル酢酸型措抗剤 YM-5
9
9
8
1を兄 いだ した。 また,本研
QSAR)解析 を行 うとともに, 3位 アニ
究のなかで フェニル酢酸 のベ ンゼ ン環 3位 の置換基 に関 して定量 的構造活性相関 (
受容体認識 に関与 しているとい う新 しい知見 を得 た。 さ らに, 側鎖 の自由度 をよ り高 めることを目的 と
リド系置換基が M2
して, フェニル酢酸誘導体 の側鎖 ベ ンゼ ン環 を生物学的等価体 とな りうるア ミド結合 に変換 した コ- ク酸 ア ミド誘導体の合
-(4-アルキル ピペ ラジン-1-イル) ベ ンジル基 を導入す ること
成 と構造活性相関を行 った。 その結果,末端 ア ミノ基 に 4
受容体親和性 と対
によ り M2
M3
受容体選択性 を著 しく向上 で きることを兄 いだ し,i
nvi
t
r
o及 び i
nvi
vo両 ア ッセイ系 にお
受容体括抗剤 YM-4
7
2
4
4を兄 いだ した。
いて 目標 とす る活性 プ ロフィールを備 えた高選択的 ムスカ リン M2
受容体桔抗剤 の開発 およびその徐脈性不整脈治療 への臨床応用研究 に
本研究 において得 られた研究成果 はムスカ リン M2
対す る有用 な基礎的知見 を提供 す る もの と判断 され る。
よ って,本論文 は博士 (
薬学) の論文 と して価値 ある もの と認 め る。
更 に,平成 1
2年 1月 2
0日論文 内容 とそれ に関連 した口頭試問を行 った結果合格 と認 めた。
-1
6
0
2
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