電力中央研究所報告 環 境 トマトのロックウール栽培と土耕栽培におけ る温室効果ガス発生量の比較 キーワード:トマト,ロックウール,土壌,温室効果ガス,栽培法 背 報告書番号:V11004 景 近年、施設園芸栽培においても温室効果ガス(GHG)発生量の低減が重要な課題と なっており、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法などによって総GHG発生量 の解析が行われている。一方、一般的な農業では栽培に伴う土壌微生物の働きによって 発生するGHG(土壌放出GHG)が総発生量の過半を占めている。しかし、これまで 施設園芸栽培については土壌放出GHG量が明らかにされていない。 目 的 施設園芸栽培で用いられることの多いロックウール耕と土耕によってトマトを栽培し、 主なGHG(CO2、N2O、CH4)発生量を明らかにする。 主な成果 1. GHGサンプリング装置の改良 フィールド試験用GHGサンプリング装置をポット試験に合うように植物体保持用特 殊スポンジなどを改良して、試験に供した(図 1)。 2. GHGの発生量と栽培に伴う変化 それぞれの栽培方法において、ほぼ同様のタイミング、量による施肥を行いながら、 栽培に伴って発生するGHG量を測定したところ、CO2とN2Oの発生について、①栽 培方法によらずトマトの収穫最盛期(播種後3∼4カ月)、および日中(午後2時∼6時) に最大となること(最小時の5∼40倍)、②同じくGHG発生量全体に寄与する割合 はN2Oが大半を占めていること、また、③CO2発生量は栽培期間を通じて土耕が上回 ったが、N2O発生量は栽培方法による有意な差異が認められないこと、などが明らか となった。 以上より、一般的な施設園芸栽培におけるGHG発生量が明らかとなった。これらか ら栽培期間中に発生するGHG合計量を推定したところ、土耕(約 160g-CO2eq)とロッ クウール耕(約 180g-CO2eq)間で有意な差異は見いだされなかった。このことはCO2 換算にすると全GHG発生量の 9 割以上を占めるN2O発生量に差異がなかったためと 考えられた(図 2)。 今後の展開 GHG発生動態と施肥の量・タイミングなどの栽培条件、植物の生育、根圏微生物の 消長との関連を明らかにして、より低環境負荷型の施設園芸栽培技術の開発に資する。 図 1 ポット栽培用 GHG サンプラー模式図 図 2 各栽培方法における栽培期間中の総 GHG 発生量の推計 栽培期間中の主なGHG発生量をトマトの生育による変化や日変化に合わせて類別して合計し、 CO2 当量(g-CO2eq)に換算(CH4;21 倍、N2O;310 倍)して示した。 関連研究報告書 V08035「中山間地における草本性バイオマス生産に関するLCA的手法による評価」 (2009.4) 研究担当者 吉原 利一(環境科学研究所 問い合わせ先 バイオテクノロジー領域) (財)電力中央研究所 環境科学研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] ©財団法人電力中央研究所 平成23年11月発行 11−003
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