電力中央研究所報告 原子力発電 コンクリートキャスク方式による使用済燃料 貯蔵の実用化研究 -ステンレス鋼製キャニスタ蓋溶接部検査手法の提案- キーワード:使用済燃料貯蔵,コンクリートキャスク,キャニスタ, 密封機能,非破壊検査 背 報告書番号:N14001 景 コンクリートキャスクに関する国の技術要件では、密封機能を確保するためのキャニ スタ蓋溶接部(以下、蓋溶接部)の非破壊試験として多層 PT(多層浸透探傷試験)と UT(超音波探傷試験)が要求されている。一方、現行の日本機械学会(JSME)のコン クリートキャスク構造規格(以下、構造規格)では、米国 ASME Code の蓋溶接非破壊 試験方法を適用し、多層 PT のみを規定している。このため、国の技術要件に適合した 合理的な構造規格の改訂案を準備する必要がある。 目 的 蓋溶接部の非破壊試験に関する国の技術要件に適合した実用的な構造規格の改訂案を 提案する。 主な成果 実機の施工条件を考慮したキャニスタ蓋溶接部施工試験や UT を行い、溶接部の健全 性に及ぼす要因を評価するとともに、ステンレス鋼の溶接施工に伴う溶接割れに関する 新しい知見に基づき、構造規格の改訂案を提案した。 1. 蓋溶接部施工試験 (1)一次蓋の初層溶接は水蒸気環境下での溶接となるため、水蒸気環境下での蓋溶接部 施工試験を実施し、バックシールドの安定性や酸素濃度の管理(5%以下)が不十分 な場合、初層溶接部に有害な割れを引き起こす恐れがあることを明らかにした(図 1)。 (2)実機の蓋温度(200℃)や溶接余盛形状を考慮した蓋溶接部試験体を用いた UT を 実施し、室温と同等の欠陥検出性や余盛存在下での UT が可能であることを明らかに した。 2. 蓋溶接部密封機能に関する構造規格の改訂案の提案 (1)オーステナイト系ステンレス鋼と二相ステンレス鋼それぞれに、溶接時の有害な割 れを排除するための非破壊試験を規定した。オーステナイト系ステンレス鋼では 1/4tw(tw:溶接厚さ)毎の多層 PT で、二相ステンレス鋼では低温割れの懸念があるた め、多層 PT と UT の併用で、蓋溶接部が健全であることを確認することとした(表 1) 。 (2)蓋溶接部の継手に特有の遠隔自動溶接性を考慮し、事前の蓋溶接部モックアップ試 験体による健全性確認を新たに要求する(表 2)。 今後の展開 本報告で提案した構造規格改訂案を JSME 原子力専門委員会 使用済燃料貯蔵施設分 科会に付議し、2014 年度中の構造規格への反映を図る。 燃料装荷後の一次蓋初層溶接時には、燃料の崩壊熱によりキャビティ水が温められ、水蒸気を含む環境で の溶接となり、水蒸気による溶接性への影響や結露水付着による割れ等が懸念される。このため、不活性 ガス(Ar ガス)によるバックシールドの流量をパラメータとした SUS304L 材を用いた蓋溶接施工試験を実 施した。Ar ガス流量の減少や Ar ガス中の酸素濃度が 5%を超えると初層に欠陥が発生する恐れがある。 図 1 水蒸気環境下での蓋溶接部施工試験 表 1 キャニスタ密封容器の蓋溶接部非破壊試験の改訂案 鋼種毎に懸念のある有害な割れを選定し、その割れを排除するための合理的な非破壊試験を規定すること とした。オーステナイト系ステンレス鋼については、低温割れが発生しない鋼種であることから多層 PT で 健全性担保できるとし、UT を要求しないこととした。二相ステンレス鋼については、高温割れに加え低温 割れの懸念もあることから、多層 PT に加え UT を要求することとした。 材料種類 懸念される 溶接割れ 浸透探傷 試験(PT) 超音波探傷 試験(UT) オーステナイト系 ステンレス鋼 高温割れ 規定強化 不要 規定強化 要 二相 ステンレス鋼 低温割れ 高温割れ 備 考 ・応力低減係数の設定根拠である溶接厚 さの 1/4 毎の多層 PT の要求 ・本文改訂 ・多層 PT に加え、未溶融部起因の低温 割れ排除を目的とする UT の要求 ・UT を別途、新規事例規格で規定 表 2 提案したキャニスタ構造規格案の継手区分に対する要求 本改訂案では継手区分 A~C については現行の構造規格の規定通りとする。継手区分 E については、蓋溶 接部は突合せ溶接でないため機械試験を要求しないが、他の継手区分とは異なり遠隔自動溶接と検査が要 求される特殊性があることから、溶接施工法認証試験を新たに要求する。 溶接 場所 溶接施工法 認証試験 非破壊 試験 機械試験 溶接施工 備考 試験 突合せ溶接 溶接手順 確認試験 以外 A - B - 工場 ○ ○ ○ C × 米国の例 × △2) ○ 1) 1) ○ × 現行の構造規格 サイト E ○ ○ - × ○1) 提案した構造規格 <凡例>○:試験要, ×:試験不要, /:規定なし, -:該当なし, △:Dry Run 試験(NRC 要求) 1) 工場もしくはサイトいずれでもよい。 2) 規制要求として、燃料非装荷状態の溶接施工手順確認試験あり 区分 突合せ溶 接 ○ ○ - 研究担当者 後藤 将徳(地球工学研究所 バックエンド研究センター) 問い合わせ先 電力中央研究所 地球工学研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI 平成26年7月発行 14-001
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