電力中央研究所報告 電 力 輸 送 需給状況の変化が平常時の電圧面に与える影響 分析 キーワード:発送電分離,再生可能エネルギー,電圧・無効電力制御, 2 次系統,短絡容量 背 報告書番号:R15019 景 適正電圧の維持と無効電力バランス調整は,電力系統の信頼度維持のため重要である。 現在,わが国では電力システム改革が進められており,将来的には,発送電分離に対応 した,電圧・無効電力制御の枠組みが必要となる。また,再生可能エネルギー電源(再 エネ)の大量導入と相まって,基幹系統の発電機停止や潮流条件の不確実性が増してい くことが予想される。 目 的 将来状況を想定した電圧シミュレーションに基づき,平常時の電圧面での課題を整理 する。 主な成果 これまで電圧面の解析において,基幹系統と 2 次系統は別々に扱われることが多かっ たが,発送電分離や再エネの導入拡大に伴って生じうる基幹系統の電源運用の変化より, 両者を一体として解析する必要性も増してくる(図1) 。そこで,従来の 2 次系統の解析 モデルの課題を明らかにするとともに,基幹系統と 2 次系統の両方での需給・電圧運用 の変化を考慮できるモデル系統を作成し,これを用いて電圧面での課題を整理した。 1. 従来の 2 次系統の電圧解析モデルを用いた電圧面での課題 文献等 1)を基に,電圧検討用の 2 次系統モデル 2)を作成した(表1,図2) 。日間の電圧 シミュレーションによれば,基幹系統の短絡容量や無効電力供給,再エネ導入量によっ て電圧制御機器の動作は大きく異なり(図3) ,このうち,基幹系統からの無効電力供給 の変化が電圧制御機器動作に与える影響が最も大きい。しかし,従来の基幹系統の簡略 模擬では,電源停止による個々の地点での無効電力供給状況を適切に表現することはで きないため,基幹系統をネットワークとして模擬する必要がある。 2. 基幹系統+2 次系統の電圧解析モデルを用いた電圧面の影響評価と課題整理 電気学会 WEST30機系統モデル 3)を基に,基幹系統をネットワークとして模擬した電圧 検討用の基幹系統+2 次系統モデルを作成した(表1,図4) 。発電機停止が短絡容量, 電圧安定性に与える影響は地点毎に異なり(図5) ,短絡容量,無効電力供給が低下する エリアでは,電圧変動,電圧制御機器動作が増加する(図6) 。このため,電圧・無効電 力制御においても,面的なマストラン電源配置の考慮や,エリア単位での無効電力調整 力の確保,電圧制御機能の高度化について,今後詳細な検討が必要とされる。 注 1) 例えば, 「電力系統関連設備形成等調査報告書-分散型電源を系統へ連系した場合の系統安定に関する調査-」, (財)エネ総研(2005) 2) 基幹系統については,従来から良く用いられている背後電圧一定モデルを用いる。 3) 電気学会技術報告第 754 号「電力系統の標準モデル」,電気学会(1999) ii ©CRIEPI 表 1 検討シナリオ 試算方法 24 時間の電圧シミュレーション 断面* 総需要 各負荷 ピーク断面(PK) 図2 PK:最大 360MW(Q は遅れ力率 0.98) 図4 PK:最大 23,400MW(Q は遅れ力率 0.98) 図2 配変負荷として模擬 図4 WEST30 負荷,及び図 2 の 2 次系統 (接続点 N2250,N2270) PV 導入 PK 断面最大値の シナリオ 2 割導入,4 割導入 * 図 1 将来系統における平常時の電圧面の課題 基幹系からの無効電力供給 制限なし~有効電力に対する力率制限(0.90,0.95) V=1.02pu 5km オフピーク断面については本文参照 基幹系電源状況,再エネ状況が電圧制御機器動作に影響 (これらの系統状況は同時に起こり得る) A-Block 5km 5km G 基幹系模擬Z (短絡容量5pu~20pu 1,000MVAベース) 配変 2~3バンク (20MVA /1バンク) 1次変 2~3バンク (200MVA/1バンク) PV SC・ShR PV PV 配変×3箇所/1フィーダ SC 40MVA×3 ShR 40MVA×3 PV導入(出力) 出力無し 2割,4割導入 B-Block TAP,SC・ShR動作 目標電圧:1.0pu 不感帯:2% 制御方式:90Ry C-Block 図 3 1 次変のタップ動作回数 D-Block 電圧安定性マージン(%) 80 図 2 2 次系統モデル 電源運用状況によって短絡容量が 変化する箇所では,昼間帯(B,C,D) の電圧安定性も大きく変化 70 60 B,C,E 40 N2270の日間変化 30 A 20 D N2250 各プロットは,時間帯(A~E,図4参照) の地点N2250,N2270の短絡容量と 電圧安定性マージンを表す N2270 0 0.0 30 25 10.0 12.0 基幹系の電圧維持能力が低く(近傍電源停止), 電圧制御機器の動作回数増加 PV出力無し 動作回数(回) 25 総需要(pu,1,000MVA) 4.0 6.0 8.0 短絡容量(pu,1000MVAベース) 電圧安定性マージン:系統を固定とし,当該ノード負荷を増加させた 場合の電圧安定性限界点と,現在の運転点とのマージン量(%) 2.0 図 5 短絡容量及び電圧安定性の日間変化 C B,E D 50 10 N2250の日間変化 A 20 15 10 15 PV4割導入 基幹系統の電圧維持能力が高く, 機器動作は変化せず 10 5 5 0 0 20 PV2割導入 4 8 12 時間(h) 16 20 0 24 1次変タップ 1次変SC・ShR N2250 1次変タップ 1次変SC・ShR N2270 短絡容量が変化しやすい箇所 図 4 基幹系統+2 次系統モデル(WEST30 ベース) 図 6 1 次変(N2250,N2270)の機器動作回数 研究担当者 小関 英雄(システム技術研究所 電力システム領域) 問い合わせ先 電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected] iii ©CRIEPI 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2016 CRIEPI 平成28年7月発行
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