気象条件を考慮した柱上変圧器過負荷時の 過渡温度 - 電力中央研究所

電中研報告
電 力 輸 送
報告書番号:H 0 4 0 1 5
気象条件を考慮した柱上変圧器過負荷時の
過渡温度上昇計算手法の開発
背
景
電気事業における近年のコストダウン要請や設備投資抑制の流れから、電力設備の一層の
有効利用への志向が非常に強くなっている。柱上変圧器等の配電用変圧器もその例外ではな
く、過負荷運転が試行される一方、その寿命に与える影響の把握が必須課題となっている。
当所ではこれまで、配電用変圧器を対象に、絶縁紙の熱劣化ベースでの寿命評価を行ってき
ており、その中で必要となる内部の温度履歴を、負荷履歴から簡便に計算する過渡温度計算
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手法を開発してきた 。本評価手法は一定の評価を得て使用されているが、より精緻な解析の
ために日射と風の影響を考慮できる計算手法の開発が要望されている。
目
的
既開発の配電用変圧器の過渡温度計算プログラムに気象条件(日射・風)を反映する機能
を実装する。さらに実柱上変圧器を用いた屋外温度上昇試験による検証を行う。
主な成果
1.気象条件を考慮した過渡温度計算プログラムの開発
熱抵抗Rと熱容量Cを組み合わせた三段ないし四段のRCはしご形熱等価回路で変圧器内部
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を模擬していた従来手法に加え、外タンク部への電流源で日射を表現し 、表面放散熱抵抗の
風速による逐次補正で風の影響を考慮することとしてプログラムを新たに構築した。柱上変
圧器用の熱等価回路を実行画面と共に図1に示す。
2.実柱上変圧器による温度上昇試験
(1)風の考慮条件定量化
20kVA柱上変圧器(直径40cm)を簡易風洞内に設置して温度上昇試験を行い、表面放散熱抵抗
に及ぼす風速の影響を確認した。その結果を図2に示す。図2中の実験式はロードヒーティン
グの設計で平板形状に対して使用されるものであるが、今回この式にほぼそった値が得られ
ており、柱上変圧器のような円筒形状でもこの程度の胴径であれば同じ式が利用できること
を確認した。
(2)気象条件を考慮した過渡温度上昇計算の適用結果
(1)と同じ変圧器に対して日射・風のあたる環境下で温度上昇試験を行い、過渡温度計算プ
ログラムの計算結果と比較した。一例を図3に示す。両者はよく一致している。検討の結果、
通常は日射による温度上昇よりも風による温度低下の方が支配的であるとの知見を得た(一
例を図4に示す)。
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電力中央研究所研究報告書W99033,W00031,W03001
ここでは簡便性を考慮し、常に45度方向からの日照を仮定して、変圧器投影面積部×全天日射量で変圧器への
日射量を考え、さらにタンク表面での反射率を10%として侵入熱を算出することとした。
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今後の展開
より大容量の変圧器(配変用変圧器クラス) への適用拡大を検討する。また従来の絶縁紙の寿
命評価に加え、ゴムパッキン等他の部材の熱劣化検討に活用していく。
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図1
柱上変圧器用プログラムの実行画面
図2
図 3 屋外サイクル負荷試験による変圧器内部
表面放散熱抵抗の風速依存特性
図 4 日射・風による温度変化(計算値)
の温度変化と計算結果
の例
研究報告
H04015
キーワード:過負荷、寿命、過渡温度、計算、気象条件
担当者
高橋
連 絡 先
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紹大
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C
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04−040