電力中央研究所報告 原子力発電 飽和した Ca 型ベントナイト混合土のガス移行 特性評価 キーワード:低レベル放射性廃棄物処分,浅地中ピット処分, 報告書番号:N13011 Ca 型ベントナイト混合土,ガス移行試験,数値シミュレーション 背 景 低レベル放射性廃棄物処分のうち,ピット処分施設においては,核種移行抑制の観点 から,廃棄体を収納した鉄筋コンクリート製の埋設設備の周囲に透水性の低い締固めた ベントナイト混合土(以下,混合土と略称する)を設置することが検討されている(図 1) . 一方,廃棄体からはアルミの腐食などにより水素ガスが発生するが,混合土の透水性が 低いため,速やかに排出されない可能性がある.そのため,混合土のガス移行特性なら びにガス移行による影響を検討する必要がある. 目 的 ガス移行試験(以下,試験と略称する)により混合土のガス移行特性ならびに試験前 後の飽和透水係数の変化を把握するとともに原位置におけるガス移行特性を評価する. 主な成果 1. 試験によるガス移行特性ならびに試験前後の飽和透水係数変化の把握 供試体の軸方向に土被り圧相当の応力を負荷することにより,原位置に近い初期応力 条件を再現することが可能な試験装置(図 2)を用いて Ca 型混合土に対する試験を実施 した.その結果,大破過*1 は,ベントナイト配合率が 30%ならびに 40%の場合に現れ, 大破過圧*1 は初期応力条件により変化すること,試験後に測定した飽和透水係数は,試 験前と同程度であることがわかった(図 3) . 2. 力学連成気液 2 相流モデルによる数値シミュレーション 当所が開発した力学連成気液 2 相流モデルによる数値解析により以下の知見を得た. 1)試験結果の数値シミュレーション 相対ガス浸透率*2 の値を調整することにより,大破過圧,ガス流量,軸方向応力の計 算結果を試験結果にほぼ一致させることができた(図 4).また,大破過圧と初期有効応 力の間には正の相関関係があることが分かった(図 5) . 2)大破過圧に及ぼす原位置の応力条件ならびに境界条件の影響の数値解析による検討 混合土の層厚を試験供試体と等しくし,応力条件ならびに境界条件を原位置と同様に した小寸法模型(図 6)を対象にガス移行解析を行い,大破過圧に及ぼす原位置の条件 の影響を調べた.その結果,小寸法模型の大破過圧は,試験との応力条件ならびに境界 条件の違いにより,試験における大破過圧より小さくなることがわかった(図 5). 以上により,原位置のガス移行特性の正確な評価には,材料特性の把握とともに原位 置における初期応力状態や境界条件を考慮することが必要であることが明らかとなった. *1 大破過,大破過圧:ガス加圧中に排気量が急激に増大する現象ならびにその時のガス圧. *2 相対ガス浸透率 :不飽和状態の透気係数を飽和度 0%の透気係数で除したもの ボルト 上板 ボルト リング内流出 リング外流出 ← → 供試体 間隙 水圧 計 ポーラスメタル 荷重計 排水・排気仕切り用リング ← 流入 間隙 水圧 計 (Φ60mmH20mm) Oリング 荷重計 反力枠 図 1 浅地中ピット処分施設埋設地の概略図 (日本原燃(株)ホームページより引用) 2 10 -10 1.0 ベントナイト配合率 乾燥密度 3 (%) (Mg/m ) 40 1.67 40 1.64 30 1.81 30 1.79 20 1.90 20 1.92 6 5 4 3 2 10 -11 6 5 5 6 78 10 -11 2 3 4 5 6 78 10 -10 2 3 ベントナイト配合率 乾燥密度 3 (%) (Mg/m ) 0.6 1.00 1.55 0.50 初期軸方向有効応力(ガス移行試験) または 初期鉛直方向有効応力(小寸法模型) 0.3 0.4 0.5 水平固定,鉛直ローラー, 非排水・非排気境界 有効大破過圧 (計算) (MPa) 0.4 0.2 0.8 1.0 有効大破過圧:大破過圧 から背圧を差し引いたもの 小寸法模型(ベントナイト配合 3 率30%, 乾燥密度1.79Mg/m ) 静止土圧係数 K0 0.1 0.6 有効鉛直土圧σ’v(z=-0.03m) 水圧 uw(z=-0.03m) ガス移行試験を対象とした計算 ベントナイト配合率 乾燥密度 3 (%) (Mg/m ) 40 1.67 40 1.64 40 1.64 30 1.81 30 1.79 30 1.79 0.0 0.0 0.4 図 4 実測結果と力学連成気液 2 相流モデル による計算結果の比較 1.0 0.2 0.2 有効大破過圧 (計算) (MPa) 図 3 ガス移行試験前後の飽和透水係数の比較 0.6 有効大破過圧:大破過圧 から背圧を差し引いたもの 0.2 0.0 0.0 4 5 1.67 1.64 1.81 1.79 0.4 ガス移行試験前の飽和透水係数 (m/s) 0.8 40 40 30 30 0.8 水平自由,鉛直自由,排水・排気境界 0.03m 0.02m 0.05m 埋戻し土 ベントナイト混合土 ジョイント要素(ガス圧>σvで開く) セメント硬化体 (剛性,透気性 は十分に大き いとした) 0.6 MAX [初期軸方向有効応力,初期半径方向有効応力] または MAX [初期鉛直有効応力,初期水平有効応力] 図 5 初期応力状態が大破過圧に及ぼす影響 ジョイント要素 (ガス圧>σhで開 く) 水平固定,鉛直固定,排水・排気境界 3 有効大破過圧 (実測) (MPa) ガス移行試験後の飽和透水係数 (m/s) 5 4 図 2 ガス移行試験装置 供試体の上板を上下することにより初期軸 方向土圧を変化させることができる. 有効水平 土圧σ’h 鉛直固定,水平ローラー,非排水・非排気境界 0.05m 0.02m 0.03m 図 6 解析対象とした小寸法模型断面 関連研究報告書 [1] N08065「飽和した高密度ベントナイトのガス移行解析手法の開発 -力学連成気液 2 相流によるモデル化と適用性の検討-」 (2009.6) 研究担当者 田中 幸久(地球工学研究所 問い合わせ先 電力中央研究所 地球工学研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] バックエンド研究センター) 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI 平成26年3月発行 13-008
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